3.《ネタバレ》 本作は、世界初のドッペルゲンガー映画ということになるのでしょうか。金貨10万枚で自分の分身を悪魔に売り渡してしまった貧乏大学生の悲劇です。100年以上前のサイレント映画だと侮ってはいけません、技術的に暗いシーンが撮れなかった頃ですけど、ドイツ映画のお家芸になる表現主義の萌芽は確実に見て取れます。同じ俳優が同映像にふたりともきちんと撮られているのは今では誰も感心する様な事ではないですけど、当時の人はさぞや驚かされたことでしょうね。分身が勝手に行動し始めて主人公を苦しめるわけなんですが、悪魔や分身の目的がなんだか判らないと言うのもなんか不条理で気味が悪いです。難点と言うことになると、主人公のパウル・ヴェゲナーがあまりにごつくていかついところと、伯爵令嬢の容姿があまりに…なことでしょうね。セリフが無いサイレント時代ですから、見た目は大事ですよね(笑)。 このお話しは1930年代までほぼ10年ごとに三回も映像化されたそうで、その頃のドイツ人はドッペルゲンガーが大好きだったみたいです。逆に第二次大戦後はまったくリメイクされなくなったのはどうしてなんでしょうか。ワイマール共和国時代の不安定だったドイツ人の精神状態が反映されていたのかもしれません。