7.のっぺりとした表情の変化の無い演技、独特なMの使い方、極端に少ない台詞、奥行きの無い狭い構図。どこを切り抜いてもやはり奇抜で斬新、そして唯一無二であることは観ればわかる。その演出が齎すのは、それとは対照的な場合が訪れた時に飛躍的な感動を感じることができる。例えば、刑務所内で主人公が笑う。カリウスマキ監督の演出ではないような笑い方。この瞬間、思考がフル回転する。なぜこいつは笑った?そんなに会話が楽しいのか?そっちの世界はそんなに住みやすいのか?あれだけ仲間のいないお前がなぜそんなに溶け込んでいるんだ?その演出が後に繋がってくることは無かったが、なぜかそこにグッと引き込まれた。感情は台詞やナレーションで言うのはすごく簡単で、それを安易にしてしまうと押し付けがましく、受ける側は考えなくなり、思考を止め、感情移入しなくなる。この作品にそういった説明になるような感情の描写は台詞だろうが、表情だろうが、そんなもん一切無い。あるのはほんの少し、微かに垣間見える動きである。「全て終わった…というのは嘘」という台詞が示すように、この台詞は感情の説明ではない。ではなんなのか。この主人公の人生である。そう感じ、考える事がこの台詞からは出来る。それが台詞というものなのだと改めて考えさせてくれる。このアキ・カリウスマキという監督は一見、めちゃくちゃなことをやっているのだが、彼は映画の基本をしっかり踏まえて、全ての演出を行っている。それが本当に素晴らしい。だからこの作品は素晴らしい! 【ボビー】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-12-02 01:49:53) |
6.《ネタバレ》 ヘタレがどん底まで堕ちる話だ。しかし主人公は何度つまづいても、前に進んで行く手がかりを掴んでいる。それは端から見たら呆れるような幻想だけれど。思えば「浮き雲」も「過去のない男」も、主人公たちは黙々と前だけを見て生きていた。身のうちから喜怒哀楽を見せることもなく、ただ黙々と。前二作のうっとりと微笑みたくなるラストと違って、今回監督は余韻をこちらに預ける方法に出た。それでも、「希望は自分の内側からみつける」その矢印が見えた私には、何か明るいものを感じずにはいられない。はたして彼は本当に負け犬なのだろうか。自分の心の秤が試されている気がした。 【のはら】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-10-09 23:25:41) (良:2票) |
★5.主人公が二枚目過ぎる意見に賛成! で、見ながら、ボロボロワンコみたいでかわいーとか、邪念が入りました(笑)。 【ジマイマ】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-09-27 20:04:44) |
4.《ネタバレ》 観終わった後、元近鉄の鈴木啓示の座右の銘である「草魂」(雑草のように踏まれても踏まれても立ち上がる魂)という言葉が思い浮かびました。人生どんなに辛くても、孤独でも挫けちゃいけないと励まされましたね(ちょっと単純かも知れませんが)。 しかし、主人公はもうちょっと三枚目タイプの方が良かったかもしれませんね・・・・(個人的意見ですが)。 ラストは、単純に希望が見えたとは言い切れない感じでちょっと北野武の「キッズ・リターン」と似たような印象を受けました。 【TM】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-08-28 19:25:52) |
3.三部作の前二作に比べて印象が薄いんです。カウリスマキも年とったんだなあ、と思ったのが素直な気持ちでした。心を動かされるところが他の作品に比べて少なかった。主人公に感情移入しにくいのが原因か。カウリスマキのファンが、まるで歌舞伎とか能のような、様式美を楽しむ映画みたいに思えました。 【まれみ】さん [映画館(字幕)] 6点(2007-08-09 21:47:20) |
2.《ネタバレ》 「浮き雲」「過去のない男」に続く敗者三部作完結編らしいですが、どうも前二作とは趣が違います。物語自体なりテーマなりは似ているのですが、本作は前のような温かさはなく冷たい感じがするのです。冷たいと言ってもあくまでカウリスマキですから物語ほどは冷酷ではないのですけど。例えば裁判で刑が言い渡される極めて深刻で悲惨な場面など、全く重々しくなく淡々とサラッと流しています。他にも暗いシーンが決して暗くは撮られていないのです。でもやはり冷たい印象の方が圧倒的に強い。これまでの二作品による期待からいくと、ラストの手を握るシーンはもっと温かく力強くあって欲しいと思うのですが、私の心には響いてこなかったのです。それこそ「浮き雲」の夫婦が空を見上げる姿のような小さくとも確かな〝あかり〟を感じさせて欲しかったのですが。しかもさらに妙なのは主人公が幸せそうなのは刑務所にいる時で、壁際で務所仲間と話しているシーンが最も血が通っていると言えます。さらにさらにこのシーンときたらカウリスマキ作品の住人らしからず、なんとなんと皆で楽しそうに談話しているのです。何故なんだ?と頭を悩ませましたが、もちろんカウリスマキらしいユーモアのあるシーンや面白いセリフもありますし、コップの底でナイフを研ぐシーンなど身震いするほど凄いので、あれもこれも全部確信犯なんでしょうけどね。それでも結局どうも本作に乗れなかったのですが、一番のポイントはカウリスマキ作品らしからぬ男前が主人公であることだったのかもしれません。うんとイイ男ではないのですがマフィアの情婦の方があまり見場がかんばしくないので、何だかしっくりこないのです。これが情婦が美人で主人公はいつも通りの冴えない感じだったら全然違う印象になっていたんでしょうけどね。 【ミスター・グレイ】さん [映画館(字幕)] 6点(2007-07-20 18:01:40) |
1.過剰に期待してました。言葉を使わないからこそ、映像だけでわかるように作られているアキ映画はいつも以上。しかし、それには俳優の演技力や映像美がいっそう追求される。今回は、俳優が物足りなかったです。もっと渋くて哀愁のある人がアキ映画には求められます。 【kaneko】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-07-15 22:18:42) |