9.《ネタバレ》 「コメディ」と「アクション」を融合させた新しいタイプの映画だとアメリカ公開時から期待しており、きっと期待通りに楽しませてくれるはずと思っていたが、思い描いた作品ではなかったというのが正直なところだ。
肝心の“笑い”の部分が個人的に全くハマらなかった(楽しめなかった人は少数なので自分が例外と思われる)。
「飛行機内で大男をみたときのリアクション」「トイレ内の格闘」「デブ男を倒したあとの監視役の勘違い」辺りはよかったが、全体的にはあまり笑えなかった。
要するに、“飛行機のシーン”がピークであり、あれ以上おいしいシーンを作れなかったのが問題ではないか。
ビル・マーレーの出演シーンでサムいと思ったのは、自分だけだろうか。
ただ、基本的にはコメディというほど“笑い”には執着していないのではないかとも思われる。
冒頭にスマートが何枚もの鉄の扉を開けるシーンがあったと思う。
たくさんの書類を手に持っており、いくらでも笑いのネタが詰まっているはずなのに、何の笑いを取ろうともしていない(何かありそうで結局何もないという高度なテクニックではまさかあるまい)。あのシーンを見て、「ちょっと様子が変だ」と思っていたが、その危惧はどうやら当たったようだ。
コメディとアクションのバランスを欠いており、あまりにも真面目に取り組みすぎてしまったように思われる。
「コメディ」を見ようと思っていたのに、全く予想外のものを見させられたら拍子抜けしても仕方がない。
いい意味での裏切りが功を奏する場合もあるが、自分にはいい裏切りにはならなかった。
本作のように「コメディとしても中途半端」「アクションとしても中途半端」「スパイモノとしても中途半端」「ラブストーリーとしても中途半端」という中途半端な映画は個人的には好きではない(逆に、いろいろな要素を堪能できるので、その点を好む人もいるだろう)のも楽しめなかった理由のひとつ。
また、主人公の設定が、エージェント合格レベルの能力を持ち合わせているという時点で“笑い”を取るというつもりがないのではないか。
エージェント試験に何度も落ちている奴が、急場しのぎで即席エージェントに仕立て上げられ、素人ならではの手法で事件を解決するというのがコメディの“王道”と思う。
失敗は多いが、普通の優秀なエージェントが活躍する映画ならば、スティーヴ・カレルが演じる必要はあるのか。