217.《ネタバレ》 フレンチ・トーストのシーンがうまい!
このシーンの違いから親子関係が深まっているのが実によくわかる見事さ。
スピルバーグはたぶんこの作品を好きなんだと思います。
「宇宙戦争」の親子愛のシーンにこの作品がオマージュされていると思う。
トースト、ボストン、置き去りにされた子供とパパ・・
仕事が生きがいで子供の好き嫌いさえ知らない・・
この作品は変わった演出も揺さぶられるような音楽もありません。
淡々とした音楽とまるで実際の人の家庭を覗くようなリアルな静けさ、
そして盛り上がりも法廷劇もあるのですが、
それのなんと乾いたドキュメンタリーのような無機質さ。
しかもぬくもりがある・・
俳優の演技と脚本だけで包み込む映画なのではないでしょうか。
今回なぜか彼のなかにチャップリンを見ました。
足取りのおぼつかなさやコミカルな動きや無愛想な笑顔。
「キッド」を思い出したのは私だけでしょうか・・
子供が初めて自転車に乗ったシーンではおおはしゃぎだった道が、
母であり妻がそこに佇み駆け寄る子供の道にもなるのです。
その様子を見守る夫であり父のなんと哀愁のある寂しさ・・
お互いの意地だけでしか子供をつなぎとめようとしかできない二人。
一体この子はただの愛玩動物なのか。
それとも権利を奪い合うためだけのおもちゃなのか・・
話の内容から母親には共感はできかねたけれども、
こうなったのも夫であり結局はふたりの問題ではないのか・・
子役の演技がいいんですよ。
一見不細工に見える表情もだんだんかわいく見えてきて、
ああこの子役はたいした役者だと感心しました。
ホフマンの演技はほとんど素だそうです。
なぜならば彼の実生活とこの作品はあまりにも似ていて、
自分を演じるようで苦痛であったと。
そしてラストの演出はこの作品にある種の希望感さえ残してくれます。
意味不明と感じる人もいると思うけれど、
これはきちんとした別れと父と子の新しく変わりのないいつもの生活。
崩壊してゆくのならば離れて時々会えるほうがいい・・
アメリカではこういった形態の離婚家族が増えています。
片方の親は別れても会いに行けます。
時代や国が違い日本ではどうなのでしょうか。
家族の義務と一体感は続いてゆけるはずです。