1.《ネタバレ》 この映画の主題である「赤狩り」は、エリアカザン監督のアカデミー賞名誉賞受賞の際にも問題(「赤狩り時代」に仲間を売ったとされ、表彰時にブーイングが浴びせられた)になったが、今なおハリウッドに影を落とす問題である。この映画を通して、その歴史の一端を学ぶことができる点では評価できるかもしれない。
しかし、確かに歴史的に非常に価値ある映像はみせてもらったとは思うが、どうにも物足りなさも覚えた。
この映画では「赤狩り」の首謀者であるマッカーシー上院議員を糾弾するという趣旨は全くないため、比較的客観的・中立的な立場から描かれていると思われる。
そのためか、いまいちエド・マローの内面やその葛藤、苦悩をうかがいしることができなかった。
また、この映画を通して、「表現の自由」とは、「報道の自由」とは、「思想の自由」とは、「国家による思想の弾圧に対するメディアの在り方や我々自身の対応」とは、など色々と考えられるテーマが散りばめられていると思うが、あまりそれらを考える手がかりにはならなかったと思う。
一言でいいあらわせば、映画をみたというより、歴史の勉強をしたというのが正直な感想であった。