13.《ネタバレ》 原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。
「フィッシュストーリー」という一曲が世界を救うという流れだが、ほとんど直球がなくて、大部分が変化球というところは逆に面白い仕組み。
『それ関係ないやん』という突っ込みを観客に入れさせることを当然に念頭に置かれて製作されているだろうが、狙い通り突っ込みを入れたくなる流れとなっている。
マジメに直球を待っていると、意外な変化球に戸惑わされることになるだろう。
この世の中では何が起きても不思議ではないということをユニークな視点から感じさせる作品となっている。
また、70年代はパンクロックに情熱を燃やす青年たちを描き、80年代はオカルトチックな昭和テイストを感じさせ、00年代はアクション作品を描き、10年代はSFテイストを交えながら、終末をまさに迎えようとする3人の男たちによる独特な世界を描かれており、年代ごとに演出のテイストを変えていることは評価したいところ。
ただ、どういう趣旨かは分からないが、多部未華子が出演している大部分のシーンにはどこか違和感を覚えさせる。
いい意味でのアンバランスなバランス感覚に優れている作品だが、この部分が悪い意味で失敗しているように思われる(別に彼女のことは好きでも嫌いでもない)。
「正義のみかた」というキーワードから、特撮やアクションヒーローのようなテイストに振りすぎてしまったか。
もともとリアリティのある作品ではないが、胡散臭さが倍増したというイメージ。
こういうテイストが好きな人もいるとは思うので、正解・不正解という単純な割り切りはできないが、個人的な感覚では少し合わなかったという印象。
また、「シージャック発生○分前」というテロップを出すことに対しても違和感がある。
そんな種明かしをすることによって、どういう効果を期待しているのだろうか。
こういうことは、むしろ突然やった方が観客にインパクトを与えられるのではないか。
逆鱗による居酒屋での“フィッシュストーリー”の種明かしも、彗星の爆発のあとのオーラスに持ってきた方がいいかなという印象。
“フィッシュストーリー=ほら話”というオチをもってくると、今までのこと全て現実なのか虚構なのか、観客に対して“混乱”させる効果を生じさせることができるだろう。