9.《ネタバレ》 観る前は、文明が滅んだ後の世界で巻き起こるデンゼル・ワシントンによる激しいアクション作品、「北斗の拳」「マッドマックス」のような映画だと思っていたが、思ったよりも宗教色の高い作品に仕上がっている。
“一冊の本”という設定から鑑賞前からピンと来ないといけないのかもしれないが、オールドマンが“一冊の本”を求める理由を語るまで気付かなかった。
ストーリーを踏まえると、キリスト教を信仰している者には最適の作品ではないだろうか。
本作を観ることで、自己の宗教心を一層強めることができるとは思う。
自己の役割、自己の存在価値、自己の運命、神からの啓示を強く意識することができるだろう。
しかし、キリスト教信者ではない日本人が観ると、グッと来る度合いが異なることとなる。
世界観やストーリーや映像面など、よく出来た映画であり、評価はしたいところだが、さすがに受け止め方は難しい。
ワシントンとオールドマンの二人の存在感が際立っており、見事に対比されている点は面白い。
“一冊の本”を用いて、文明崩壊後の社会に“安定”を導こうとする気持ちは両者に相通じるところがあるが、一方は神になりたいと願い、他方は神のしもべ、聖地を目指す巡礼者のような存在になりたいと願っている点に根本的な違いがある。
その結果、一方は安定どころかより混沌とした世界を作り出し、他方は世界を再構築できるほどの影響力をもつことに寄与することができている。
たとえ殉死したとしても、自分の遺志を継いでくれるということも希望が持てる展開となっているようだ。
ワシントンに隠されたネタもかなり効いている。
神から自分に課せられたことには“意味”があるということだろうか。
歩いていて高速道路から落ちそうになったり、“音”が聞こえるかとしつこく言っているので、違和感はあったが、最後までさすがに気付かなかった。
ただ、オチが重要であり、このネタについてはあまり深く考えなくてもよいだろう。
どうやって銃撃に対応しているのかなどを考えても意味はない。
アクションにも多少見応えはあり、老夫婦の家を舞台とした銃撃戦はかなり見応えがある。
どうやって撮影しているのかと考えながら見ると、より面白みを感じるのではないか。
あのカメラワークを実行するにはかなり無理があると思うのだが、いったいどうなっているのだろうか。