16.《ネタバレ》 面白い設定の割には、あまり面白さを感じさせない不思議な作品。
騒々しさだけは伝わってくるが、基本的にはあまり中身がないためと思われる。
コーエン兄弟の上手さやブラックさは随所に感じられるが、その上手さが活かされる題材ではなかったか。
ラストの展開はさすがに面白いが、それ以外には特別なトラブルもなく、スムーズに物事が運びすぎているので、緊迫感もなく、やや飽きてくる。
また、トラブルに対しても、訳の分からないインテリチックな面を押し出しているので、素直には笑えないものとなっている。
さらに、宗教的な思想が本作の下地にあるために、素直に面白くないのだと思う。
基本的には「犯罪はいけません」「教会にいきましょう」「寄付をしましょう」「告白をしましょう」ということを伝えたい作品。
「あなた達の行動は、きちんと神(≒額縁のおじさん)は見ていますよ」「犯罪者にはバチが当たる」ということを描きたかったようだ。
メッセージ自体は、もちろん悪いものではなく、誰しもが肝に銘じなくてはいけないが、メッセージの伝え方が適していたかどうかは疑問なところがある。
トム・ハンクスは健闘していたが、その健闘は空回りしていたかもしれない。
肩のチカラを抜いて、もうちょっと適当でバカっぽくてもよかったかもしれない。
一見すると完璧なインテリ学者だが、常識も教養もないという中身のないインテリを演じなくてはいけないのに、張り切りすぎて本物のインテリを演じてしまった感がある。
5人のチームに関しても、黒人清掃人と胃腸が悪い者との不協和音が描かれているが、微妙な関係性が描かれてはいない。
仲間でもない急造チームが“大金”を手にするのだから、それぞれの腹の中はもっと汚くて黒いものとなっているはずだ。
コメディなので仕方はないが、それぞれのキャラクターが生きてはおらず、デフォルメされた“駒”のような存在になってしまっているのも魅力を欠いた点だろうか。