2.《ネタバレ》 ワンカットに複数のアクションを組み込む複雑な長回しは、現実時間への同調と演技・運動の持続による生々しさを獲得する一方で、撮り方次第で作り手の作為や計算を逆に露呈させかねない諸刃の剣でもある。
この作品でいえば、移動を交えた長回しのカット尻に、生卵投げや即興の似顔切り絵の大道芸といった難易度の高いパフォーマンスを配置している辺りに図らずして「段取り」の周到さを感じさせてしまう。
とはいえ、ここでは如何にも低予算的な作風と趣きゆえに、その意欲性と情熱と力強さが勝っていて好ましい。
ボクシングシーンの荒々しいファイトの長回しも勿論素晴らしいが、圧巻は何と言っても主人公(スコリモフスキ本人)の乗る列車をバイクが並走して追う驚嘆のショット。
彼が意を決して列車を飛び降りるまでの葛藤と煩悶が、俯瞰気味の絶妙なキャメラ位置と持続的なショットの時間によって生きてくる。