10.《ネタバレ》 以前何かの映画のレビューでいわゆる“良い映画”の定義に<もう一度観たくなるような映画>と書いたんですが、『ピエロの赤い鼻』を鑑賞後感じたのは、<悲しすぎてもう一度観るのはつらすぎる。でも最高の映画だった>でした。
オレも最初のほうは主役の2人に対して「なんて自分勝手ではた迷惑なやつらか」とか思ってたんですが、だからこそその過ちを悔いて生きる“今”とそんな二人に“今”につながる希望を与えてくれたピエロのドイツ兵が光る、そんな作品だと感じました。
英語でピエロというと”clown”。いわゆる「道化」という意味で日本語と同様、よく人を馬鹿にする意味や卑語として使われます。が、この映画におけるピエロはそのように蔑まされた笑いをとるために存在していませんし、人々もそのような笑いを求めていません。この映画のピエロは事情を知る人には笑うどころかかなりシリアスで泣けてしまうようなピエロなんですが、観る人に笑顔と元気そして感動を与える事のできるピエロなんてもう最高のピエロですよね!
「ピエロ」というものを題材にしながらこの映画は全くと言っていいほど笑える場面は存在しません。しかしピエロという本来は「感動」とは遠い位置にあるものをここまで圧倒的なまでにヒューマニズムに富んだキャラクターにしてしまう監督はすごい。聞けば原作はほんとうにペラッペラな数十枚程度のものなんだそうで、それがここまでの映画になるとは・・・。もう脱帽です。
縦穴に入れられた4人と遊び(?)終えたドイツ兵ピエロが帰ろうとしたときに「おい!銃、銃!」と言ってドイツ兵に銃を返すシーンは何かすごく心に残りました。いやだってあり得ないでしょう。本当ならそれを使って脅迫なり何なりしようと思うもんなのに快く返すなんて。そのドイツ兵の人柄と言ってしまえばそれまでですが、あの時代、間違いなくあのピエロは4人にとっての希望の光だったのでしょう。人ひとり助ける事すら困難な世の中に、4人もの男の人生を救ったこの男はやはり素晴らしいと思います。
最高の映画でした。言うこと無しです。