6.《ネタバレ》 間違えてメイキングビデオの方を再生してしまったかと、思わず確認してしまいましたね。
そのくらい型破りというか、メタフィクションな作りでした。
扱っているテーマがテーマなせいか「物凄く凝って作られたマニア向けAV」という印象もあったりする本作。
さながら「走る」という行為に性的昂奮を覚える人達の為に作られたかのようでしたね。
主演の二人を追いかける際に、ドアを開けるカメラマンの手が映り込む演出や、クライマックスにおける農薬散布のような「血しぶき」表現など、少々やりすぎではないかと思える部分も幾つか。
画面が「手ブレ」の状態になってしまう事が多いのも、それが苦手な自分としてはキツかったです。
けれど、それ以上に力強いメッセージ性には、大いに背中を押されるものがありました。
実に分かりやすくて恥ずかしい表現となってしまいますが「観た後に自分も走り出したくなる映画」だなぁ、と。
途中、二人が勢い余って家屋の窓を突き破ってしまう件などは「あれ? もしかしてコレって脚本通りじゃなくて、アクシデント?」と思わせるような迫力があり、好きな場面。
一方で「コーヒーカップが云々」「花瓶が云々」というメッセージに関しては、それ単独ならば詩的で良い言葉だと思うのですが、ちょっとオシャレ過ぎて、映画のメインであるはずの二人には似合っていないようにも感じてしまいましたね。
そのミスマッチ感こそが良い、と捉える事も出来そうですが、自分としてはもっと飾らずに突き抜けて欲しかったです。
とはいえ、考え付いた「良い要素」を、何でもかんでも詰め込んでしまうのが監督さんの魅力なのでしょうから、そこは譲れない部分なのかも知れません。
女性にとって走る事は現実、男性にとって走る事はロマン。
終盤にて、そんな両者の違いを描いておきながら、二人が別れるでもなく、ちゃんと結ばれる事で終わる形だったのは、とても好みでした。
この二人、当初は女性側が男性側に片想いしていて、必死にアプローチして追いかける展開だったのに、終盤にて関係性が逆転する辺りなんかも興味深い。
「愛のむきだし」や「地獄でなぜ悪い」など、好きな品々が多い園子温監督作品。
観賞後は、また一つ、好きと呼べそうな映画が増えてくれて、嬉しかったです。