7.《ネタバレ》 有名な事件のようですが、本作で初めてこの事件のことを知りました。
保守的で宗教色が濃いアメリカ南部の州アーカンソーの小さな田舎町で起こった、少年が被害者となった殺人事件。
悪魔崇拝者とされた10代の若者が容疑者とされる。異端と見なされると徹底的に偏見の目で見られ排除されてしまう。
捜査も裁判も町の人々も社会全体で結論ありきの空気が出来上がっていく恐ろしさ。
そんな空気が作られていく事件から捜査を経て中盤以降の多くの時間を占める裁判の過程が
抑揚も無く淡々としていますが、じっくりと描かれていきます。
主演コリン・ファースが演じる私立探偵。この裁判の時間帯は1人の傍聴者でしかなく、
これは仕方がないところもありますが、彼が機能していない時間帯が多くなってしまっているのは残念。
南部の閉鎖的な小さな町にあって、イギリス人俳優ファースの存在は違和感がありますが、
その彼の存在は、この状況で1人事件に正面から向き合う、孤立した探偵の姿と巧く重なり合います。
ラストの字幕で語られる、事実上真犯人を名指した事件のその後の顛末に何とも言えない恐ろしさを感じる告発映画です。