1.《ネタバレ》 何と言うか、とてつもなく地味な映画です。ですけどその人間描写はリアルでぐいぐいと引き込まれてしまうところがあります。 ロバート・ミッチャムが演じるエディ・コイルという犯罪組織の末端にうごめく中年男が主人公です。こいつは若造には見栄を張ってでかいこと言うけど、実際には仲間の悪事を当局に売っている情けない男なんです。でも彼は妻子をこよなく愛しゴミ出しまでしてあげる様な人間なので、観ていて切なくなってくるしとても憎めないキャラです。ロバート・ミッチャムはタフガイ役が多かった役者ですが、意外と彼は物静かで弱さが表面に出るようなキャラを演じさせたら上手いんです。『ライアンの娘』なんかも良かったですよね。実はタイトルの『友人たち』というのがまた痛烈な皮肉になっていて、類は友を呼ぶじゃないけど仲間たちもろくでもない連中ばかり、中でもいちばん親しそうなバーテンはライアンが垂れこんでいるのと同じ捜査官に彼のことをチクっている始末です。 冒頭からライアンが銃を調達してやった仲間たちが繰り返す銀行強盗が平行して描かれますが、これがけっこう緊迫したシーンの連続で引き込まれます。同時にライアンたち小物の悪党の生態を見せられるのですけど、この緩急をつけた撮り方が実に巧みです。この頃はピーター・イエーツの技量が円熟期を迎えていたのですが、彼は俳優から演技を引き出すのがほんと上手です。 けっきょくエディ・コイルは自分が犯した凡ミスで組織に疑われてしまい“友人”のバーテンダーに命を取られてしまうんですが、この死にざまもドラマチックな演出はまるでなく「えっ、これが殺しなの?」と言う感じなんです。でもね、このエディ・コイルの生きざま・死にざまを観て身につまされる人は多いんじゃないかと思いますよ。カタルシスは皆無ですが、そんだけリアルな映画だったということです。