11.「これだよ、これが映画なんだよ!」と、観た後叫びたくなるような、久々に映画らしい、重ーいボディ・ブローを食らったような作品でした。骨太でセンチメンタル、まるで古き良きアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせる作風。生真面目な警察官の兄を演じるデヴィッド・モース、凛とした美しさを湛えたその妻ヴァレリア・ゴリノ、とてもキュートでイカれた元ヒッピーのパトリシア・アークェット、そして危うげでセクシーなフェロモンムンムンのヴィゴ・モーテンセン!「ロード・オブ・ザ・リング」でアラゴルンにヤラれちゃった人は、こっちを観とかないと後悔しますぜ。 【ぐるぐる】さん 9点(2004-05-06 18:43:53) |
10.《ネタバレ》 白い静寂の画面を唐突に横切る逃走車とパトカーにまず驚いた。かつての悪童ショーン・ペン初監督にして脚本も担当。とにかく丁寧に作られている。映像もそうだが、人物描写が特に丁寧。丁寧すぎるくらいである。ちょっとした脇役にも手を抜かない。どういった町で主人公達がまわりからどう思われているかなどを解からせる重要な役割を担っている為の丁寧さなのだが、変な伏線を期待させるデメリットにもなっている。社会から逸脱した弟と警察官という社会の象徴である兄の物語である。兄は弟に幸せになって欲しい。弟だって幸せになりたい。しかし弟にとっての世間は冷たい。世間自体はそんなもんである。でも世間と接したことがない弟にしてみれば許せないのである。この破滅型の弟に少しでも共感出来る部分があればいいのだが、無ければこの映画は面白くないだろう。ラスト、兄は弟を捕まえない。救えないと察したのだろうか。会話無く別れる。なんともやるせない。 【R&A】さん 7点(2004-02-13 15:27:15) (良:1票) |
9.当時無名に近かった主役2人の人選といい、ショーン・ペンのセンスのよさがにじみ出ている。重いトーンで全編が綴られているために、少々胃にもたれるのが難点だが、監督処女作でこれだけのレヴェルのものを見せられると何とも言うべき言葉が見つからない。 【恭人】さん 7点(2003-11-21 17:31:32) |
【虎尾】さん 6点(2003-10-15 00:59:36) |
7.弟の彼女の出産シーン、リアルで驚きました。あの道路での最後のシーンは非常にせつないですね。見事に二人の気持ちがそのまま表れているようで・・・。 【もみじプリン】さん 7点(2003-05-30 11:55:49) |
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6.《ネタバレ》 痛い。観ていて、ひたすら痛い映画。あまり内容が整理されていなくて、役者の演技で持ちこたえているようなところがある作品だが、兄弟の葛藤物語として良くできている。この兄弟の容姿も性格も立場も極端に違う姿は、あまりにも神話的で寓意的である。喜びも悲しみも内包して、一見無表情で、ひっそりと物静かに幸せを探すかのような兄。じゃれたり甘えたりはしゃいだりしながら、どこか斜に構えて冷笑し、ふいにゾッとするような禍々しさを見せる抑制力の無い弟。この二人の対照的な存在が、あまりにもあざやかで、印象深い。ベトナムから帰ってきて、兄の家までは来たけれども「ママとパパはいい」と会わずに帰るフランク。何度か鑑賞していると、その時点で悲しくなってくる。実の親にたった一目でも会うのがイヤだと言ってしまうほどの絶望。そこにあるフランクのナイーブさ。そういうフランクが妻の出産に立ち会うことが出来ずに逃げ出したくなるのは、分かるような気がする。分かるような気もするが、私は女なので、フランクの自己世界に入れてもらえないドロシーとも気分が同調するので、痛い。イタイ。ラストなどは、ほとんどせりふがないのに、二人の苦しみと絶望が伝わってくる。この辺の演出にはただただ感嘆するのみだ。映像も、禍々しさと不条理に満ちながら、それでもいつも兄のほうへ視点を持っていくので、心にストンとおさまる。締めくくる兄の言葉には、現実を受け止めて生きる男の、万金に値する重さがある。人生はすばらしい。 【ルクレツィアの娘】さん 8点(2003-05-20 21:40:42) (良:2票) |
5.もう、何も言うことはありません。ただ、ショーン・ペンは本物の映画作家であると。ジョン・カサヴェティスのインプロヴィゼ-ション的アプローチとも違う人間への肉薄の仕方は、ほんと素晴らしいです。以後の監督作品も、どれをとっても逸品だし。だのに、なぜ世間は『デッドマン・ウォーキング』みたいな、所詮はウエルメイドなメロドラマばかりを称揚するんだろう… 【やましんの巻】さん 10点(2003-05-20 12:51:12) (良:2票) |
4.ほんとショーンペンがこんなに熱い男だと思っていなかった。当時、91年は「カンヌで賞賛された映画」として上映されていた。ただ、良かったのはカンヌでノンタイトルだったということ。そもそもカンヌでは熱い映画は賞を取らない。 こういう熱い映画が見たい人は、賞なんか無くてもきっと運良くこの作品を見つけると思うし。 あらすじは少し難しい。 紙も無く、文字も共通のものが無く「口伝」で意志を伝える疾風の使者。インディアンランナー。その伝説は、現代に置ける「精神に闇を抱え、かつ不器用で、本能が常に言葉を超えた人生の不満を見つけてしまう」兄弟の弟、ウ゛ィゴモーテンセンに置き換えられる。本当の「メッセージ」は、インディアンランナーの伝説と同様に普通の人々には素早く捕まえる事ができない、とういう共通点。弟の本質を見抜いている彼等の父は、妻の死によってなんとか離れて行った弟に彼を捕まえるためのメッセージを送ろうと考える。 しかしながら、兄弟の関係は父の望みとはかけ離れさらに溝が生まれる。その後も兄は必死に「弟」というメッセージを捕まえようとするが…という話。 今思うとこの映画に出ている若手役者は、最近の映画界の主軸の人ばかり。役者畑である監督が、人選も渾身の一発でキメている。悪いけど、わがままを言わせてもらえばこの映画が分からない人は教養と道徳の無い人と決めつけたい。 【セクシー】さん 10点(2002-11-06 22:35:42) (良:1票) |
3.冒頭での兄の射殺シーンが生かされて無いなぁ。あと弟のベトナム帰りって言うのも。デニスホッパーの(良い意味での)アクの強さももっと出して欲しかった。テーマは定番の問題を抱えた家族の話なんやろうけど、親父の自殺は無理やりやったと思う。 |
★2.ショーン・ペン。演技を見るだけで只者ではないのは分かるが、処女監督作のこの映画を観ていると更にリスペクトの念が増す。で、リスペクトの気持ちでLDを購入したのだが、いっぺんも再生していない。重すぎて(笑)。 【3Mouth】さん 8点(2002-05-14 19:07:54) |
1.正義漢の兄と落ちこぼれの弟のお話。兄弟は、話の展開にしたがって徐々に心が離れていくようにみえる。理解しあえるようでいて、それはどんどん遠くに離れてしまうのである。そのことの理由は語られない。最終的に警察官の兄が犯罪者となった弟を追跡するシーンにまで至り、父親は兄弟の確執とは関係のないところで意味もなく自殺する。図式はありふれているし、話としても結構単純だ。しかしそのモチーフは僕にとって切実に思えた。兄は弟を追いながらそのことの意味を理解できない。弟は兄に追われながらその理由を失っている。自分の心さえ掴めない寂莫感にお互いが自覚的ではあるけれど、最後に兄が弟を見逃すシーンに言葉はなく、ただ「アイ・シャル・ビー・リリースト」(byザ・バンド)が流れるのみ。「いつかきっと僕は解放されるだろう」 あー、なんてリアリティのないフレーズだろうか。そのことの空虚さが心を締め付ける。「インディアンランナー」はたぶん時代遅れな映画だ。すべてに自覚的でありすぎる分、それはもう時代遅れなのだ。僕らはその時代遅れの気分でしか、もう心を震わすことができないかもしれない。それはとても切ないことだけど…。 <ちなみに冒頭で、狼の力を盗んで鹿狩りをするインディアンの逸話が出てくる。弟の中で幻影のように現れるインディアンとは、自分自身に潜む凶々しさとその神々しさが一体となったスピリチュアル・イメージであり、その「らしさ」に理由がない絶対的な存在としての強迫観念でもあるのだ。> 【onomichi】さん 10点(2002-01-17 02:36:29) (良:2票) |