22.佐分利信演じる主人公は結婚を肯定している。夫婦愛も信じている。親子愛も信じている。 しかし自分の子供が結婚するまでの有り方を用意していなかった。 認められない現実とは裏腹に物事はどんどん進んでいく。 自分の口から発せられる言葉と腹の底との葛藤。 娘の幸せには自分の成長も必要であるということをしぶしぶ認めていく。 小津監督はそれらを美しくテンポよく個性的な登場人物を使ってすばらしいローアングルの風景におさめている。 【ぺんぎんうさぎ】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-04-18 23:43:07) (良:1票) |
21.《ネタバレ》 “メタボ”佐分利信。 星野仙一バリ、田中角栄バリのカミナリ親父ぶりを十二分に発揮。 最初は悪役に回り、最後は従順な一面を見せて、父親としての理解を示す。 まあ、小津作品を見慣れた人ならすぐに予想できる内容です。 しかしながら、内容が読めるとか読めないとか、そんなことは小津作品を観るに当たっては、さして重要なことではありません。 小津ならではの様式美に支えられた画面の中で、ゆっくりと進行する人情劇に気持ち良く身を委ねれば良いのです。 それにしても、会話のシーンがとても個性的というか、ぎこちないというか。 もちろん、小津監督は狙って演出しているのですが、これは何度観ても、なかなか慣れることができません。 というか、いつから小津監督の撮る作品は、こんな感じになったのでしょうか。 完成された小津様式といったところなんでしょうが、画面がセリフごとに忙しなく入れ替わる、あの撮り方は一体、どんな意図があるんでしょうか。 まあ、それはそれとして、小津監督の後期カラー作品は、色鮮やかでとにかく綺麗です。 あんなカラー映像を撮れる監督は、世界広しと言えど、小津監督しかいないでしょう。 本作は、遺作である『秋刀魚の味』と似たテイストの作品ですが、個人的には、テンポ良く、小気味良く進んでいく『秋刀魚の味』の方が好きですね。 本作はさすがにゆったり過ぎたような気もします。 でも久我美子を、あんなチョイ役に使うだなんて、なんて贅沢な作品なんでしょう・・・ 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-04-11 22:18:39) |
20.《ネタバレ》 冒頭から結婚披露宴での佐分利信の普通のスピーチと遠慮がちに起こる笑い声、もうこの時代のムードやテンポ、色彩と空気、そして人と会話、相槌、挨拶、空返事。どこをどう切り離して繋ぎ合わせても素晴らしすぎる、僕が追い求め、夢に描くシーンばかり。この極上のスープに詰まった味わいは、映画の出来さえも冷静に判断できないほど、自分にはたまらない妙味。娘が嫁いだ広島行きを、背中押されて決めたにも関わらず、"いや、まだはっきり決めた訳じゃないんだけどね" この台詞のおかしみ、"何笑ってんだ、何がおかしい?" はは、そりゃあ胸が熱くなるほどおかしいです。この台詞を言う側と聞く側が言葉の奥に互いが読み取る感情に、夫婦の年輪を感じる。 そういった味わいが随所に溢れでている、まさに気持ちさえ浄化されるほどの極上のスープです。 【よし坊】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-06-11 06:35:59) (良:1票)(笑:1票) |
19.夕べ授業で見ました。私はアメリカの映画学部専攻なのですが、アメリカ人だらけの教室で、英語字幕付きの小津映画を見るとは何とも新鮮な気分になりました。最初は英語字幕を読みながら、ほーほーこうやって訳すのか、なんて考えながら見てましたが、途中からもう字幕なんて読まず、久々に聞く日本語の独特の柔らかさや響きに耳を傾けて見始めました。こういった京弁というのは本当に心地の良いものです。さて、ストーリーは本当にどうってことのないファミリードラマなんです。娘を嫁にやりたくない頑固親父と彼を取り巻く周りの人たちの話。別に派手なことが起こる訳でもないし、どんでん返しの結末が待っている訳でもない。本当に日常的な題材。しかし、どうしてこんなにも温かい気持ちになるのでしょうか。アメリカにいるから日本の和の文化に久々に触れて心がポカポカしたというのも一理あるかもしれない。でも、そんなことよりやはりこの映画には愛がびっしり詰まっているからだと思うんです。私が一番心打たれた人物はお母さんです。授業後のディスカッションであるアメリカ人の学生が“母親はいつもニコニコ笑っていて瞬きもせず表情は同じでつまらない”と言っていましたが、私はそこがいいんじゃないかと突っ込みたくなりました。母はいつも娘想いで、それでいて頑固な夫を立てて、凛と母と妻の二足のわらじを履いている。あなたが幸せなら私はそれで嬉しいわ、という嘘偽りない言葉と笑み。この映画でこの母の存在は、父や娘に比べると割と地味でありながらもとても大きなものだと思います。頑固親父が“お前はどう思っているんだ、言え言え!”と無理強いした時にこそ出た本音。その時こそは笑顔は消え、一対一の人間として同等に話をしていました。その時の母の目の強さ。いつもは夫の一歩後ろでものを言う彼女が発した強い言葉には思わずよく言った!と拍手を送りたくなりましたよ。この母の存在が私はとても好きですねー。もう半世紀近く前に作られた映画なのにものすごく楽しませていただきました。こうやってアメリカで良い日本映画に出会うとは思いませんでしたよ。私の映画学部先生たちは小津監督の大ファン。これから私ももっと古い日本映画を開拓していきたいです。 【未歩】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-11-30 15:35:00) (良:1票) |
18.《ネタバレ》 「親の心、子知らず」「親はなくとも子は育つ」そんな映画。自分の意思とは別のところで大人となり巣立ってゆく娘への複雑な想いを、情感とユーモアを交えて描いてゆきます。佐分利信が頑固親父でありながら、気が付けば周囲の女性達に振り回されっ放しなのが可笑しくもあり、哀しくもあり。祇園の母娘なんぞ、耳に心地良い関西弁で最高ですなぁ。さて、小津作品で毎回反復される「画面奥に切り取られた空間を横移動する人」「椅子のある空間、ない空間」が今回も当然の事ながら登場するのですが、も、もしかしてそれって結構深い意味があるのでは?なんて今になって気付き始めたり。「画面奥に~」は家に対する外側、つまり社会の象徴、「椅子」は畳の床続きの状態が、人と共有される事で家族を象徴する空間なのに対して、一人で腰掛ける状態である事で個人を象徴してるとか? うう~ん。漫然と映画を見ていないで、もっとアタマ使って見ないとあきまへんなぁ。それはともかくとして、この映画は時代と共に変わりゆく意識を描いておりますが、今は逆にこの頃の意識に立ち返る必要も出てきているんじゃない?という世の中でして、個人主義も行き過ぎると大切なものまで失いかねないのではないかなぁ、と同窓会の面々の表情を見ながら思うのでありました。 【あにやん🌈】さん [DVD(邦画)] 8点(2006-07-11 01:17:15) |
17.《ネタバレ》 小津映画はこれで3作目だったのですが、やはり退屈感は否めませんでした。この作品では”頑固親父”という散々見てきたテーマだったのでコレといって感動することもなかったです。ただ、相変わらずの静止画や音楽の美しさには感服でした。映画というより、絵画や写真を見ているような気持ちになりました。 【maemae】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-05-02 23:26:47) |
★16.《ネタバレ》 小津安二郎監督初のカラー映画。冒頭から映し出される東京駅の駅舎や、赤いやかんなど、映像的には小津監督が初めてのカラー映画を色にこだわって楽しんで撮っているのが感じられる。でも、それに酔うことなく小津監督らしい作品になっているのが良い。娘の結婚という小津作品ではお馴染みのテーマでつい父親役は笠智衆と思ってしまうが、この映画では長女(有馬稲子)の結婚に反対する頑固親父を佐分利信が演じていて、こういうキャラだと笠智衆よりも佐分利信のほうがしっくりくるし、実際、すごくハマっている。それに、この主人公・平山を見ているだけで面白く、それが本作全体の面白さにもつながっていて、つい最後まで引き込まれて見てしまった。友人(笠智衆)の娘(久我美子)に「結婚は自由であるべきだ。」と言っておきながらいざ自分の娘のこととなると「不賛成だね。」と言い出すこの父親の堂々とした姿はハタから見ると笑えるのだが、同時に素直になれないもどかしさもどこかにあるのではと思えて、そこらへんの心理描写も巧みで見事。「人生は矛盾だらけなんだ」と開き直る彼の姿からはそういった葛藤の跡も垣間見える。山本富士子と浪花千栄子の京都の親子コンビが強烈に印象に残るのだが、彼女たちの京言葉が美しい。部下の近藤(高橋貞二)が平山と一緒に酒を飲んだ翌日の夜、同じ店で一人で飲んでいるところに平山が現れるコントのようなおかしさも良かったが、やはり本作は平山の妻を演じる田中絹代に尽きるのではないだろうか。控えめでありながらも旅行先で戦時中に防空壕に家族一緒だった時が幸せだった話をするシーンや、夫の矛盾を指摘するシーンの力強さがすごく、存在感と説得力をものすごく感じることができた。クライマックスとなる長女の結婚式のシーンを描かないのも小津監督らしいが、ラスト、京都の親子の計らいで長女の嫁ぎ先である広島に向かうことになった平山の列車内の様子で終わるというのが、心地良い余韻を残していて、見終わった後、なんともいえない満足感に包まれた。昔に見た時はあまりピンとこなかった映画だったのだが、今見ると素直に名作だと思える。(2024年2月12日更新) 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2006-04-21 01:26:08) |
15.日本では、この映画で描かれているように、真剣な話は「ま、ちょっと座れ」からはじまっていた。その文化が消えてしまったのが『解夏』である(←別れ話を立ってする恋人たちが描かれている)。時代はめぐる。本作は小津作品のなかでも京都が出てくる数少ない作品だが、祇園の細い路地のシーンは、狭い空間をうまく写す小津のカメラにぴったりの素材だと思う。もっと京都を撮てちてくれれば…。 |
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13.「ただいま」「おかえりやす」京都の言葉、つまり京言葉っていうやつです。これが本当に何とも良いなあ!そう思わせてくれます。小津作品全てに共通して言えることの一つに言葉の大切さ、家族の有り難さをしみじみと描くその雰囲気、いかにも日本的で観ていて何だか安心出来るのです。小津監督独自の人間の撮り方、これはカメラマンの力も大きいと思います。良い映画というのはそういうものだと小津監督の作品を観ることで、観れば観るほど思う今日この頃です。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-08-14 21:25:27) |
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12.わたしにとって、やっぱり、小津は、笠智衆と原節子です。二人がでてくれば、そこに家族愛があると素直に頷ける。そして結婚などでそれが崩れてゆくとき、得もいわれない感慨に浸ることが出来る。あの人を食ったような、やや軽薄なメロディも、笠智衆のバックに流れるのなら、違和感もない。そして全体として、神話的な空間が拡がってゆく。、、、、、、この作品の、佐分利信はどうなんでしょう。小津の作品にあっては、どうも存在感、生命感が強すぎるのではないかと。或いはあまりに偉そうというか、、、、、。小津作品のマンネリ・テーマにちょっとしたアクセントを加えるという趣はあるのかもしれませんが、なんか浮いているという印象をぬぐい切れません。それに娘である有馬稲子のことを可愛がって、愛しているという雰囲気がいまいち伝わって来ないというか。娘を嫁にやった哀しさも伝わってこないし。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-07-31 10:45:42) |
11.いいですねー、京ことば。主人公一家と京都の親戚母娘の会話の両極端なテンポがもたらす絶妙なリズム。両者ともに、より際立っていました。静かなる紳士ぜんとした男が唐突にわいた娘の結婚話しにイライラし、物分かりの良い妻にも意見され、「おい!うるさい!ラジオ消せ!」と怒鳴るシーン。怒鳴られたことによる困惑のなかで、夫の心情を察して微かな笑みを浮かべる妻。ウチだったらギロッてにらまれて1週間は口を聞いてもらえないことまちがいないだろう、、ということで、苦々しくも羨ましい、でもやっぱりいいなぁと思えるシーンでした。小津の他の作品のように、同じ部屋でも色々な方向から撮っているんですが、赤いヤカンに代表される小物たちの存在が混乱を避ける目印となり、またその可愛らしい自己主張が心を和ませます。誰もいない廊下の片隅にある赤い座布団の敷いた籐の椅子が、場面の切り替え時に度々映し出されますが、静かな余韻に浸るいい間(ま)を作り出すとともに、最後の最後に妻がその椅子に座る画の伏線にもなっているのには驚きました。小津の映画はこういう驚きに溢れています。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-06-23 18:20:29) (良:1票) |
10.《ネタバレ》 今まで観てきた小津作品は、全てがお気に入りの作品なので、この『彼岸花』も以前から漠然とした期待があり、とても観たい作品の一つでした。さらに小津作品で初のカラー作品という事で、期待は膨らみました。冒頭はいつも通りの小津作品の穏やさで僕を和ませ、白黒作品となんら変わりのない静けさに安心して画面に食い入る事ができました。ストーリーは派手に言って見れば結婚に至るまでの考え方の“新旧対決”という風に感じました。やはり、まだまだ子供で最近の考えの強い僕の感情は当然のように娘さんに移入しました。その為、中盤では父親のわからず屋で頑固な態度と意見にとても腹が立ち、画面に向かって唾を吐きまくっていましたが、ラストでのあの電車に揺られ、緩やかな表情を浮かべる父親の姿を見たとき、何とも言えない爽やかな気分になりました。それはどことなく春の爽やかな風のような温もりに満ちていてすごく気持ちが良かったです。やはり小津作品は素晴らしい、と心から感じさせてくれる作品でした。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-01-15 00:48:03) (良:1票) |
9.《ネタバレ》 場面転換で流れる極上の音楽、α波がギンギンに出てきてとても心地良い。有馬稲子の芯が強くしかし淑やかで美しい演技、父親と恋人の間で揺れる娘を見事に演じきる。山本富士子(超美人)の味わいがあってどこか艶っぽいポンポン出てくる関西弁も耳に届く度に嬉しくなる、こんな経験は初めてです。なんてたってラストがいい!ハリウッド映画だったら父親と駅で再会して思い切り抱き合うなんて終わり方かもしれませんが(ハグの方が正しいか?)小津監督はそんな下世話な事はせず淡々と電車にのる父親の姿で終わる。これだけで充分父親の寂しさもその反面にある嬉しさも伝わってきます。血がドバーッと出たり、クモ男が高層ビルの間を駆け回るわけでもない。だけど俺にとっては、この映画だって超一流のエンターテイメントムービーだ!! 【一番星☆桃太郎】さん [DVD(字幕)] 10点(2004-11-02 23:40:05) |
8.どうしても達者な関西弁を自由自在に操る浪花千栄子や、大輪の花の如き美貌の山本富士子に視線が行きがちになってしまうが、ここでは敢えて田中絹代の控えめながらも力強い演技を僕は声を大にして褒め称えたい。佐分利信と芦ノ湖のベンチに座り、戦争中防空壕の中で家族が一緒だった事を回想するシーン、ゴタゴタが一件落着して電話口で「良かった、ほんとに良かった」と娘の幸せを心から祝福するシーン等はその中でも特に絶品といえる。長年役者を続けてきた人だけが出せる、たおやかな気品とでもいったらいいか。最近こういう女優さんいないよなあ・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(字幕)] 10点(2004-09-26 15:19:24) (良:1票) |
7.“親バカ”とよく言うけれど、その意味でバカでない親なんて多分いないんだよね。有馬稲子がキレイ。情感豊かに、哀愁たっぷりに物語を紡ぎつつも、ベトベトしない小津のストーリーテリングはさすがという他は無い。僕はこれが日本映画の最高傑作のうちの1本であると信じて疑わない。 |
6.小津初カラー作品だけど、よかった。構図とか小道具とか絶妙でした。「色があって、色がないかのごとく色がないようにして、どこかにある」とても美しいと思った。出演者では浪花千栄子が一番印象に残る。京都弁で喋りまくるのが面白い。 【バカ王子】さん 9点(2004-03-31 21:02:18) (良:1票) |
5.嫁入り前の娘と父親の姿をユーモラスに描いた作品です。私は最近初めて観たのですが、今観ても普通に面白い映画でした。なんの知識もなく観ても、さすがは「小津監督」素晴らしいセンスですね。余談ですが、友人(日本人)がフランスでこの映画を字幕で放映しているのを観たそうです。最初、日本語が上手く聞き取れなくてフランス語の字幕を見てしまったとのこと。昭和30年代の日常会話ってこんな感じだったんでしょうか?今とまるで違うのは確かですね。もしかして、今の中学生にみせようと思ったら現代語訳の字幕が必要なのかな…?? 【へっぽこ】さん 8点(2004-03-18 20:16:16) |
4.頑固親父、父娘の関係をとりなそうとする優しい母、自分の結婚観を押し通す子供、戦後の新しい時代にはどこの家庭でも繰り広げられる光景なんでしょう。コミカルさとシリアスさがどちらも実にリアルであり、ズシズシと心に響きます。両親の気持ちが痛いほど解かるんですよ、解かるけどウーン、痛い。父親が広島へ行くと聞いた後の母親の表情といったら、もうマジ泣けたッス。 【亜流派 十五郎】さん 10点(2004-02-25 15:33:59) (良:1票) |
3.山本富士子さんらのテンポの速い関西弁が印象的です。 【its】さん 7点(2004-01-07 00:44:36) |