★5.《ネタバレ》 初めて見た時は「日本映画初のカラー映画」という知識だけで見て映像がものすごくキレイで印象に残った反面、ストーリーにイマイチのれなかった覚えがある作品だが、あらためて見直してみるとけっこう楽しかった。平穏な田舎の町に都会でストリッパーをやっている娘が帰ってくるという内容だが、全体的にはほのぼの人情喜劇という感じで安心して見ていられる無難な作りなのがいかにも松竹喜劇的でいい。高峰秀子といえばどちらかといえば過酷な運命に翻弄される芯の強い役柄が多い女優だが、この映画ではあっけらかんとしたカルメンを明るく演じているのも、「二十四の瞳」や「浮雲」などの彼女の主演作を何本か見たあとである今になって本作を見ると、かなり新鮮に感じる部分が多い。とくに高原で見せるストリップのシーンはこういうシーンを演じるという印象が皆無な女優だけにかなり衝撃的だった。脇役ではそんな娘に対する複雑な感情を抱く父親を演じる坂本武がいい。校長役の笠智衆もいい味を出している。戦争で盲目となった佐野周二は思わず「二十四の瞳」の岡田磯吉(田村高廣)を思い出さずにはいられないが、こんなところにもさりげなく木下恵介監督の戦争に対する怒りが込められているのだろう。さきほども書いたように全体的にほのぼのしていて放牧的な雰囲気にも癒される楽しい映画ではあるが、この佐野周二が運動会でオルガンを弾くシーンで笑われたと思い、演奏を中断してしまうシーンは本作で唯一、重く感じたシーンだった。本作は日本初のカラー映画であることもそうなのだが、成瀬巳喜男監督と並んで木下監督とも名コンビと言われる高峰秀子が初めて木下監督の映画に出演したという意味でも記念碑的といえる作品だろう。(2013年1月14日更新) 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2005-08-10 19:56:10) |
4.木下&高峰コンビの出発点となった記念碑的作品。水彩画のような天然色画面の中、妙な掛け声を上げ、広大な浅間山麓を伸び伸びと駆け回るノンキなストリッパーニ人組にただ見惚れるばかり。難を言えば、戦争で失明した佐野周二のエピソードが重すぎる点。彼が校庭で奏でるオルガンの暗~い音色が、この明るく楽しい作品に重い影を伸ばしているような気がします。「異人たちとの夏」で風間杜夫がこの映画を観ているシーンが有りましたね。大林監督自身が好きなのかな?それとも脚本市川森一の指定? 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(吹替)] 8点(2005-07-17 15:00:41) |
3.幾つかの点で、歴史的資料として朽ちることのない価値を持つ作品だと思います。、、、、、まず、廃線になって久しい草軽鉄道が人々の生活の中にとけ込んでいた姿を見ることができることは、鉄道ファンならずとも、好奇心をそそられることでしょう。今となっては、軽井沢から草津まで、鉄道が通っていたということはちょっと想像しにくいからです。、、、、、、第二に、軽井沢周辺、そしてそこからの浅間山の景観です。三笠から北軽井沢は、今は落葉松などが鬱蒼とし、浅間山の勇姿も木立の隙間からのぞかれる程度ですが、この映画を見ると、その周辺は開けた感じですし、浅間も存在感を示しています。有島武郎や堀辰雄が、その終焉の際に見た光景は、この映画に見る景色に近かったのだろうと思うと、想像力が刺激されます。、、、、、、、第三に、戦後すぐの雰囲気が生き生きと描写されている点です。小学校が地方の文化的、公的中心をなしていたこと、文化という言葉が流行語であったこと、オルガンが貴重なものであったことなどなどが、へえっ~という感じで伝わります、、、、、、。そして第四に、この映画が、最初のカラー映画であったこと。、、、、、、もちろん、それもこれも、高峰秀子、笠智衆、佐野周二、佐田啓二などが、昔っぽくても、しっかりとした演技をしているからこそです。 【王の七つの森】さん 7点(2004-07-15 16:48:17) |
2.映画がカラーで世界を描けるというのは、今となっては当然、当たり前なのですが、それって素晴らしい事なんじゃない?というのを実感させるような、最近の映画はカラーである必然すら存在しない気がしてしまうような、色が鮮烈な印象に残る映画でした。当時のフィルム、プリントは現在とは方式自体が違うので着色感が強いのも原因ではあるのですが(逆にあのタッチを今のフィルムで再現するのは不可能でしょうねぇ)。物語の方は、田舎の色の中に都会の色が入り込んで騒動を起こすというコメディですが「幼い頃、牛に蹴られてパーになっちゃったリリイ・カルメン」こと高峰秀子がとても魅力的で、逆に、翻弄される田舎の人々の保守的な思考は、ちょっと今の時代にはツラいかなぁ、なんて(これを見たのは今から20年前の松竹系の劇場でしたけど)。もっとも田舎を持たない私には、ちょっと憧れの世界でもあります、故郷に帰る、って。 【あにやん🌈】さん [映画館(邦画)] 7点(2004-02-04 11:22:53) |
1.松竹に綿々と続く楽しい人情喜劇。高峰秀子のストリッパーというのは驚くが、彼女や友人(小林トシ子)は引け目に思ってるどころかいささか得意なのだから、あくまでもあっけらかんと明るく展開する。なかなか豪華な出演者たちや美しい信州のロケシーンなど見所も多いが、特筆すべきはこれが日本最初の総天然色作品だということで、戦後6年でこれだけのカラー作品は驚きだったようだ。笠さん扮する校長先生がしばしば言う、「日本は文化じゃけん」という意味不明な言葉もなにやらおかしい。寅さんシリーズのように後味のいい楽しい作品。 【キリコ】さん 8点(2004-01-18 23:19:26) |