★6.《ネタバレ》 眠狂四郎シリーズ最終作となる第12作で、雷蔵にとっても遺作の一つ前の出演作となる。とはいえシリーズを半分ほどしか見ていない目から見ても最終作っぽい雰囲気はなく、これで終わるとは思えないほど普通な印象で、おそらく大映はこの後もシリーズ続行の意思だったことがうかがえる(実際この後も東映から借りてきた松方弘樹を主演に2本作っている。)のだが、狂四郎の出番が少なく、ストーリーの中心である世継ぎ問題に狂四郎がほとんど絡まないなどやはり既に病魔に侵され、いったん退院後に一時復帰していた雷蔵の体調は思わしくなかったことが察しできる脚本になっているのが分かるし、ニセ狂四郎というありがちな感じのする設定もこれが影響しているのではと勘ぐってしまう。隠れ切支丹も絡んでいるあたりはこのシリーズらしいところだが、全体的に散漫で大味な脚本になってしまったことは否めず、それでいてストーリー的にはけっこう暗めなのでなにか見ていて気が滅入ってしまうのが事実で、出来としては少しイマイチに感じる。でも、狂四郎の前で仮面の集団が舞うシーンはなかなかインパクトがある(見ているときは下の方と同じく夢の中の描写だと思っていたし。)し、狂四郎の最後のセリフがこの後雷蔵が亡くなってしまうことを思えばとても意味深に聞こえてしまい、なんだか切ない。シリーズを全て見たというわけではないのだが、もし雷蔵が長生きしていたらこのシリーズは勝新の座頭市のように雷蔵のライフワークになっていたかもしれないし、それに個人的にもやっぱ座頭市との共演は見てみたかったなあ。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 6点(2023-07-08 18:45:15) |
5.《ネタバレ》 とりあえず大奥っぽいところで、お世継ぎを誰が産むか争奪戦が行われている。ここでは、当時26歳の松尾嘉代が何とも麗しい。ただし、喋ってしまうと、声や節回しは後の嘉代さんそのものなのですけど(笑)。で、このお世継ぎ話に、狂四郎が見事に絡んでいません。そのうちどこかで筋がクロスして、と予想していたら、何と最後の方までそのまんまでした。そこで強引に隠れキリシタンがどうのこうのというのを入れ込んでいますが、無理矢理つなげるために入れたのが丸わかりで、過去作での宗教絡みエピソードほどのインパクトはありません。江原真二郎の顔をぎりぎりまで隠しているのもわざとなんでしょうけど、あまり効果はないですね。大体、偽狂四郎という手法自体、過去作にもありましたし。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2023-04-30 00:08:55) |
4.《ネタバレ》 ついに狂四郎シリーズも最終回、死期が迫った雷蔵本人は自覚していたかもしれないが、大映はまさか本作でシリーズが終わるとは予想してなかったんじゃないかな。もちろん大団円として撮ってるわけじゃなく、今まで通りの通常運転のストーリー展開。でも雷蔵は体調はかなり悪く、立ち回りなんかはスタンド・インを使う場面もあったそうです。そういえばストーリー自体もかなり暗い滅びの物語に徹していました。奇しくも雷蔵最後のセリフが「貴様を救う神があるか、俺も確かめに行きたいものだ」というところが、結果的には意味深ですね。 大奥内での身ごもった側室と大奥総取締役との将軍後継者を巡っての争いがストーリーの基本。そこに邪魔な幕閣を消すために総取締役が操るニセ狂四郎や隠れキリシタンが絡むという大風呂敷を広げた脚本ですが、ニセ狂四郎が正体がバレた後でも本物を狙って襲う動機がイマイチ不明だし、将軍の跡継ぎ問題はけっきょくどうなっちゃったの?etc.けっこう粗が目立つ脚本なんですよね。今回のハニートラップはシリーズ中で随一のシュールな仕掛け、自分はてっきりこれは狂四郎の見ている夢なんだろうと観ているときは思いました。 こうして、私の“眠狂四郎マラソン”が一年かけて無事終了いたしましたが、全作を観てこのシリーズの感想は以下の通りです。●自分にとってシリーズ最大の謎は、若山富三郎が演じた陳孫です。初期の二作に狂四郎の好敵手として登場していずれの対決も決着つかず、シリーズを盛り上げるキャラになるかと思いきやその後はまったく登場せずで終わり。スタッフとしてはそろそろ再登場させようかと思っていたら、雷蔵の突然の死で機会を失したという感じだったのかも。●けっきょく、円月殺法って何だったんでしょうか?ただ剣を一回りさせて頂点で光を反射して眼潰しして斬りかかるって感じしかないです。殺陣が得意じゃなかった雷蔵なので迫力を出し切れなかったのかもしれません。●とはいえ約五年も続いたこのシリーズ、雷蔵=狂四郎がその後の時代劇に多大な影響を与えていることは疑いありません。徹底的に虚無的なそれまでの時代劇になかったスタイルは、70年代には木枯し紋次郎で華を咲かせたと私は思います。でも座頭市&眠狂四郎はやっぱ観たかったなあ… 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-01 23:06:24) (良:1票) |
3.雷蔵晩年ということもあってか、殺陣が少ない、いやそもそも狂四郎の出番自体が少なく、なんとも物足りないのであります。それを埋め合わせるため、完全にエログロに走っちゃってます。これは、好感が持てますね、うひょうひょ。モーリス・ベジャールも真っ青のヘンテコ舞踏集団の舞など、ただでも短い映画なのに間を持たせようと一生懸命、このサイケ調のノリは、狂四郎版『ゴジラ対ヘドラ』とでも言えましょうか。雷蔵の代わりに映画を盛り上げようと一生懸命奔走するニセ狂四郎、バレバレの仮面姿が不気味だが、これがまたホンモノ狂四郎よりもしっかりとエロく、いやこちらの方が余程狂四郎らしい。しかし結局、本作の結論は、「狂四郎はふたりは要らない」という、非常にまっとうなものでした。確かにこんなヒトが二人もいたら、大変ですね。でもそのせいで、雷蔵が他界したら、シリーズおしまい。寂しいですね。寂しいと言えば、最終作が「円月vs円月」という、シリーズ別作品の蒸し返しだったのも、寂しいなあ。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-12-18 22:01:23) (良:1票) |
2.第12作。シリーズ最終作はお正月公開ってのもあってか常連の久保菜穂子、藤村志保が出演、他江原真二郎etcなかなか豪華キャスト。偽狂四郎の登場に大奥の世継争い、隠れキリシタンなど内容も盛沢山。あの変な仮面の舞はどうかと思うが、鏡のシーンやキスシーンなんか今までになくて印象的。雷蔵の死によってこれで最終作になったけど、映画が斜陽化する中で眠狂四郎がどうなったか興味わく。「座頭市と眠狂四郎」とか錦之助との共演も見たかったなぁ・・・。 【バカ王子】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-10-06 16:06:21) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 シリーズ第12作目にして最終作。大奥の権力争いと隠れ切支丹が絡む話しで、切支丹の男が狂四郎になりすまし辻斬りを繰り返す。印象深いのは遂にニセ狂四郎を斬ったか!と思いきやそれは鏡に映る己の姿だったという場面。これは悲しい。但しこの時代にありがちだが意味不明のサイケデリックでエロっぽいシーンは正直言っていかがなものかと思う。ちょっと勘弁して欲しいのだが、原作者の柴錬的には三隅研二が撮った「無頼剣」の如く格調高い時代劇よりこっちの方がお好みかもしれない。ラスト、狂四郎に斬られた切支丹のニセ狂四郎は「神よ!我らの罪を許したまえ。願わくば御許に・・」と祈りの言葉を唱える。すると狂四郎が言い放つ。「貴様を救う神があるか。俺も確かめに行きたいものだ。」ぎゃー!かっこいいーーーーーーーーーっ!!これを言いたいが為だけに登録したようなもんです。ハイ。しかし雷蔵は本当に次の158本目の映画「博徒一代・血祭り不動」を最期に神がいるのかどうか、確かめに行ってしまうのだ。37歳の早すぎる死。そして私はいつの間にか彼の歳を追い越してしまった。 【黒猫クロマティ】さん 8点(2004-03-02 16:43:59) (良:4票) |