2.三宅邦子はキートンに似ているという発見はあったが、それはさておき。一つ一つのカットはたしかに美しく、日本美の写真集といった趣はある。ただそれがリズムになってくれないのよね。そこが崑との違い。でも前半はけっこう良かった。権三がヒョロッと結婚の約束をしてしまったあたりから、逃げていく朝にかけてのあたり。あっという間に自ら悲劇に飛び込んでいってしまう、その勢いのよさに、一種の爽快感すらある。つまり泰平の世で、槍よりも茶の時代、おさゐの娘との婚約を決めちゃうのは、権三にとっては一勝負でもあったということ。泰平の世に対して、人々が何かイライラチリチリしてる感じ、ってのがずっと底にある。おさゐの縁側での長いモノローグなど、リアリズム離れするとこはいい。