26.《ネタバレ》 この映画を観た人は皆ネバーランドに連れていってもらったんじゃないかな。
そう思えるほど素晴らしくかつ観終わった後充実した気分にさせてくれる映画を見させてもらった。
「想像力」と「信じる力」があれば誰でもネバーランドに行ける。
人生を楽しむことの素晴らしさや自分が失いかけていた純粋さのようなものを取り戻せたような気もした。
しかし単純にそれだけを描いたわけではない。
信じる力だけでは越えられない現実もちゃんと描かれていた。
どんなに祈っても病気という現実は変えられないし、どんなに願っても妻とのどんどん離れていく距離は縮まることはなかった。
結婚した当初は、お互い二人で夢見た世界は同じだったはずなのに、すれ違いによって一緒の世界が見れなくなっていく二人の関係は切なくて悲しい。
また、なんといってもデップの演技は光っていた。
子ども達との現実世界でのやり取りや、子ども達と遊ぶイマジネーションの中での世界は微笑ましい。
特にピーターを見つめる眼が優しかった。
ピーターと自分を同一視しているのだろうか、ピーター脚本による演劇の舞台をピーターが一人でボロボロにする姿をじっと椅子に座り見つめる姿にはバリがあの時何を思っていたのだろうかと色々と考えざるを得なかった。
そして、父の死で心を閉ざし、再び母の死で完全に心を閉ざしかねなかったピーターの「母さんが見えるよ…」と発したラストのセリフを導き出した彼の演技もまた素晴らしかった。
この映画に文句をつけるのなら、まずはダスティンホフマンの存在。
チョイ役に出演するなとは言わないが、ある程度重要なキャラクターなのではと思っていたのに
全く出番がない。今回彼が出演する意味はなかったのではないか。
少なくともバリに何らかの影響(子ども達を招待するという着想は与えていたが)を与えるキャラクターであって欲しかった。
そして中盤の多少の弛みは感じられた。
バリと妻、シルヴィアとその母、バリとシルヴィアの母、バリと子ども達、シルヴィアと子ども達といくらでも盛り上げることが出来る関係があるにもかかわらず、中盤は少し脚本や演出が押さえすぎられている気が感じられた。