206.《ネタバレ》 人が狂う誰のせいでもない理由のせいにできない狂気は、
「戦争のはらわた」のほうがずっと優れている。
しかしペキンパー監督お得意のスロー映像の多用で、
娯楽と化してしまったのも事実。
後味の悪さやメッセージ性は「カジュアリティーズ」のほうがあった。
しかしデ・パルマ監督のあまりに直接的な描き方は後味の悪さしか残らなかった。
「プライベートライアン」これは売れるための作品で、
さすがに戦争の残虐性のあと人情ドラマは違和感があったが、
最終的にはこれで成功したし見る分には救いがあった。
「フルメタル・ジャケット」私はこの系統では一番の評価をしている。
ラストが戦争そのものの的を得ているから。
「プライベートライアン」の前半ほどのリアルな残虐性は必要はない。
「戦争のはらわた」のようなややこしい回想録もいらない。
わかりやすくストレートにベトナムの密林の中で何が起こったかを、
サスペンス仕立てでアクションもカメラ酔いしない丁寧さ切れのよさで、
十分恐怖やリアル感を出せている。
そして登場人物の本当にわかりやすい設定。
オリバー・ストーン自らの経験から自身が脚本を書いたのも説得力があり、
ざっと見ていくだけで登場人物の性格や生い立ちがよくわかる。
一番特筆すべきはテンポがよい作品ということだろう。
前半に生々しい戦場で民家を犠牲にするシーンで悲惨な現実を見せ、
兵士らがこの状況でだんだんと人格がむしばまれてゆく様子がわかる。
中半では間違っていなかった主役と犠牲になる兵士のサスペンスドラマ。
この ウィレム・デフォーめあて(最後の誘惑の演技で気になった)でこの作品を借りたのだ。
それまで手持ちカメラ中心の報道映像のようなリアルさだったのが、
ここで彼のために用意されたかのように、
スローモーションで丁寧に大切に演出される画面は、
後半の主役であるチャーリー・シーンの上官への復讐劇を予想させる。
見事な緩急ある演出である。
ただ・・この映画のラストに後味の悪さは残らなかった。
正義ではない。しかし間違いでもない。
でもそうなればいいと思いながら後味の悪さも期待した。
「二十日鼠と人間」のラストのような後味を求めたのだが・・