1.《ネタバレ》 (物語の核心に触れていますので、未見の方はご注意ください) 夢を題材とした作品ゆえ解釈の幅は広いと思いますが、その1例を。鑑賞の参考になれば幸いです。冒頭とラストで提示される「バス転落事故」。その唯一の生存者が杵島雄介という少年。本作の出来事は、彼が事故の際、昏睡状態の中でみた夢と考えるのが自然でしょう。そうナビゲートされていると感じます。これを前提として、鍵となるエピソードを振り返ってみましょう。まず「マット事故死事件」。この事件の被害者も雄介だという。でも、ここで彼が死んでしまうと「バス転落事故」との整合性が取れません。「学校放火事件」。放火の犯人は麻美だとクラスメイトは言っています。冒頭で刑事から尋問されていた、ネジの外れた女の子です。でも真相は多分違う。終盤、気のふれた様子の雄介の母(弁護士)の服は煤だらけでした。彼女が放火犯と示唆されています。犯行の動機は、虐められて死んだ息子の復讐?でも、「バス転落事故」が真ならば、「マット事故死事件」は存在せず、放火の動機も発生しません。ここでも矛盾が。こうも不都合が多いということは、前提に問題があるということ。夢の主は杵島雄介ではなく、「バス転落事故」も起きていない。「マット事故死事件」と「学校放火事件」は現実にあった事と推察します。終盤、“雄介=雄介の母”を匂わせる描写がありました。夢の主は雄介の母。タイトルが“複数形”なのは、母親と息子、2人の想いという意味もありそうです。「バス転落事故」は、放火の罪の重さから逃れるために彼女が作り出した架空の設定。『私が殺したんじゃない。事故でみんな死んだのだ』。以上です。自分は“勝手に想像する映画”が好きなので結構楽しめましたが、そうでないとツマラナイかもしれません。あらゆる面で安普請ですし、キャラクターの描き別けが弱いのも気になります。一般ウケは厳しいでしょう。