7.《ネタバレ》 冒頭の老人と子供の会話からして、既に何かに憑りつかれたかのような異様な緊張が画面を支配する。
古戦場で土に埋まったドイツ兵の武器を掘り出す子供たち。それを見守るかのように空を飛ぶ不気味な偵察機。重低音とエンジン音が重なり恐怖を煽る。
水を飲む音、シャッターを切る音、不協和音が混ざるラジオ、愉しげな人々の合唱、泣き声、笑い声、突如襲い掛かる空爆や銃撃音、天空で開く落下傘の音、地雷、蝿の羽音、雨の中のダンス・・・何もかも不気味に響く。
人々や動物の表情も怖い。牛が撃たれて死に絶えるまでの眼!
ナチスたちも中々姿を見せない。落下傘や林の奥を不気味に行進する様子が一瞬映り、しばらくは音のみでその存在を誇示し続ける。それが霧が晴れるようにワラワラと姿を現し、雷鳴のような声で人々を嘲笑い村人を殺しまくる。人々は狂ったように阿鼻叫喚に叫び、物語は異常なテンションでサスペンスフルに展開される。
虐殺を敢行する彼らにとって、不慣れな道で“うっかり”踏んでしまった卵と一緒かそれ以下の存在。飯を食い呼吸をするように人を殺すのだから。
皮膚の焼けただれた老人や一瞬映る積み上げられた死体なぞ序の口。女を集団で犯し尽くすなんてまだまだまだまだ。
村人を小屋に押し込めて・・・オーバーキルなんてもんじゃねえ。敵同士で同じように祭りを楽しみ、同じように記念写真を撮る。あれに背筋がゾッとしない人間がいるのか?
それを焼き付けやがった奴らをどうして擁護しなければならない?
貴様ら赤ん坊まで殺したではないか。自分も同じ目に遭ってもかまわんと思えなかったんだろうがよ。そんな奴らが今更命乞いなんかしてんじゃねえ。くたばれ。惨めに死んじまえ。てめえらなんぞ火葬する価値も無え、泥の中で死にやがれと、憎悪を吹き払うには憎悪しかなかった。そうやって己を駆り立てなければ自分を保てなかった。
じゃなきゃ家族の死を受け入れられず泥の中に体を埋めて死んでしまいたくだってなる。それこそ絶叫をあげ続けながら。
撃ち捨てられたヒトラーの顔面に鉛弾を撃ちこみまくる瞬間の強烈なモンタージュ!
どんどん時間は遡り、独裁者も無垢な赤子に戻る。スターリンですら無垢な赤ん坊でしかなかった。それが成長してああなった。そりゃ種族根絶やしとかも考えたくなるわ。
松明を持った男の選択が、彼らと“同じ”になる事を否定するせめてもの選択だったのだろう。