21.《ネタバレ》 将校相手とはいえ、現在の私達が持っているイメージからすれば、考えられないこの映画の捕虜収容所。結構みんな好き勝手やっていて楽しそうだし、敵のドイツ軍は紳士的で親しみさえ感じます。実際、第一次大戦の空軍はそれまでの戦争が持っていた、紳士的なルールや騎士道精神を相当重んじていたそうです。そして、それらは数ヶ国の帝国、皇帝や貴族と一緒に消えていきました。第一次大戦は、楔の役割があった特権階級が滅び、世界が混乱に突入する不吉な戦争でもあったんです。そんな中、貴族や平民、ユダヤ人、フランス人たちが階級や人種を超えて、協力し合うのも、大詰め、2人だけを脱走させるために、全員で笛を吹いて協力するのも、すごいヒューマニズムだと思いました。ドイツ人の農婦エルザも、敵のフランス兵2人を無償で匿います。脱走アクションものでも、リアルな戦争ものでもないこの映画。エルザと出会ってからは追われている緊迫感すらありません。善人ばかりが出てくる、この映画のどこからどこまでが幻影なのか?観ているうちに解らなくなってしまったのが悲しいです。 それにしても、この映画での怪優シュトロハイム演じるラウフェンシュタインの存在感は凄いです。脊椎をやられて、のけぞりながらお酒を飲む姿がたまりません。部下に上着を脱がせるところなどもコミカルで楽しいです。地味ながらピエール・フレネーも好演だし、お茶目なカレットら脇役陣が素晴らしいです。ジャン・ギャバンは他の俳優たちに食われた感がありますが、ローゼンタールとのコンビが素晴らしく、映画に華を添えています。強いていえば、音楽の使い方にだけ、ちょっと不満が残りますが、そんなのは些末なこと、後年の映画にやたらパクられまくる、名作の古典映画です。最後に蛇足ですが、女装の男に目が釘付けになってしまう状況はなかなか怖いと思いました。かなり笑えましたけど。 【くなくな】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-03-06 08:17:02) (良:1票) |
20.この作品と米兵のイラク人捕虜に対する扱いと比較すると隔世の感があります。戦争は国家の争いであり、人間の個人的感情の争いとは違うわけですが、戦争になってしまえば「敵が憎い」という個人的感情が生じるのが自然であると思います。そういう感情を規律やルールでコントロールできるのか?また、国家の争いと個人的付き合いを別物として考えられるのか?没落貴族の哀愁を分かち合うという所長と兵士の友情?は理解できます。しかし、夫を戦争で失ったにもかかわらず、その敵国軍人をかくまって、結構安易に好きになってしまう女性の感情はちょっと理解しがたいです。(男の方が優しくしてくれる敵国女性に惹かれるはまあ自然な流れとは思いますが)優しさとか人間愛というよりも、単純に「ひとりの寂しさ」がもたらす行き過ぎた行動であって、あまり感動はできないです。人間なんて訳がわからないとは思いますが、そんな単純じゃないでしょうとも思うので。 【東京50km圏道路地図】さん [ビデオ(字幕)] 5点(2005-10-01 18:14:02) (良:1票) |
19.ジャン・ルノワール監督作品、初体験です。素晴らしい!何と言っても主演のジャン・ギャバンともう一人、エリッヒ・フォン・シュトロハイムという俳優の存在感の凄さもさることながら本当に物凄いヒュマニズム溢れる名作中の名作と言って良いぐらいの本当に素晴らしい映画です。第一次世界大戦下のドイツ軍、捕虜収容所における人間ドラマとして国と国、人と人との人間関係をジャン・ノルワール監督は人間的な視点で愛情たっぷりに描いていて観終わった当時に物凄い感動致しました。戦争映画ではあるものの中身は完全な人間ドラマ、アメリカ映画が得意とするヘリコプターが飛び交い銃撃戦などによるリアルな戦争映画ではなく常に視線は人間的で温かく本当に愛情に満ち溢れ、美しくもあり格調高く気品に満ち溢れていて素晴らしい!文句無しの満点です。また一人、素晴らしい監督の映画と出会った。この監督の他の映画も観たいと思う。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2005-09-12 22:11:26) (良:1票) |
18.戦争そのものを描かずに戦時下での男たちのドラマを描く。戦時においてあたりまえのタテの関係が捕虜収容所内では様々な階級の男たちがヨコで繋がっているというのが面白い。戦争であることを忘れてしまいそうなくらいの和やかで楽しい雰囲気。鱗歌さん同様、私もあの楽しげな演芸会を見ていたかった。しかしドゥオ-モン奪還の報が戦争という現実世界へ引き戻す。収容所所長との敵味方を越えた友情も戦争という現実が悲劇へと導く。「幻影」と「現実」は常に「現実」が勝つ。もしかしたらエルザにまた会いに戻るという誓いも「現実」に負けるかもしれない。それでも「幻影」を見つづけること、「幻影」を追い続けることが人として大切であると言っているように感じる。一人一人が思いつづけることが平和への道。「幻影は大いなるもの」と、とりました。 【R&A】さん 8点(2004-10-05 12:13:48) (良:1票) |
17.初めて観ました。ピエール・フレネーとエリッヒ・フォン・シュトロハイムの素晴らしさにジャン・ギャバンがかすんで見えました。生き方の美しさ、潔さ、強靭な精神に武士道に通じる騎士道を見せられて、思わず背筋が伸びてしまいました。国を愛するために人を愛する事を犠牲にさせる戦争の愚かさ、やり切れなさを痛感させられる作品です。 |
16.反戦を謳い、人間の本質を描き出した見事な作品です。「所詮、人間が作った物」の国境に救われるラストシーンは、人間が作る物への愚かさと尊さを描き出していてなんとも象徴的でした。幻影であるかもしれないが希望を紡ぎだす1コマ1コマ、1シーン1シーンは、どれも丁寧。どこまでも高貴になり得る人間、その姿そのものが幻影であったしても、幻影が実体になるその時を信じて営まれる人間の行い。その行いのなんとも愛しいことか。その行いこそに人間の本質があるのではないだろうか、と感じさせられました。そう感じることが“大いなる幻影”なのかもしれませんが・・・。とにかく素晴らしい作品です。 【彦馬】さん 10点(2004-05-14 13:23:21) (良:2票) |
15.《ネタバレ》 古い作品だと「この時代にこんな映画が作られていたんだ!」的な感動があって評価が難しいんですが、この作品はその点を抜いても素直に楽しめました。特に脱走前と脱走後の時間配分が絶妙。脱走後があまりに長く感じられるために「脱走しなきゃ良かったんじゃないかな」という気持ちにさせられてしまう。でも実際はここからが映画の本番で、脱走後のストーリーがこれほどまでに面白い映画ははじめて見た。名作と呼ぶにふさわしい映画だと思う。 【患部】さん 8点(2004-05-14 13:17:50) |
14.《ネタバレ》 『大いなる幻影』いかにも名作中の名作というイメージがあって、観るのを少々渋っていたのだけど凄く面白かった。捕虜という身分にも関わらず、勝手自由気ままな生活を送る将校たち。歌を歌いながら陽気な気分に浸り、時には女の格好をして舞台劇を演じることもあれば、まるで子供のようにはしゃいで雪遊びに没頭したりもする。これは本当に戦争なのだろうか?と思わせられる前半に、脱走してからの後半で「ああ、やっぱりこれは戦争なんだ・・・」と現実に引き戻される。戦争自体が人々を惑わす”大いなる幻影”なのだと、僕は思いました。 【かんたーた】さん 8点(2004-05-10 16:21:42) (良:1票) |
★13.戦争が単なる殺し合いでなく、敵を憎んでいるわけでもない。国家に対する忠誠はあるものの、戦闘を離れれば敵兵でも人間として尊重する、紳士である軍人達が輝いている。現代の伝えられる戦争とは異質の人間的な振る舞いに新鮮さを感じる。しかし、戦争が生み出す悲劇とわずかな希望に生きていく支えを見いだす人々は、どの時代でも同じである。「戦争が終わったらここに戻ってくる」幻影であるとわかっていても言葉にすることが、人間の悲しさであり、素晴らしさかもしれない。 【パセリセージ】さん 8点(2004-04-18 23:47:22) (良:1票) |
12.格調高い感じ。もうちょっと大人になってからまた見よっと。 【仮面の男】さん 6点(2004-02-27 18:53:47) |
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11.映画では、男女や友人同士といった人間社会の「感情」を描いたり、自然風景の美しさを描いたりすることはあるが、人間の生き方そのものを「美」として表現しているこの映画はなかなか稀有である。それが少しも浮き上がることなく、色あせた収容所の壁の中で、まさに窓際に咲く一輪の花のように、鮮やかに映えている点は素晴らしい。「貴族社会」というと、「世間知らず」「脱世」というようなイメージが先行してしまうが、そういうところゆえに生ずる美しさ、というものを感じることができた。歴史の授業では、貴族文化は権威を誇示するものという面を強調されて教わってきたが、そんな一面で捉えられるものではなく、世俗を超越した、気品あふれる「花」のような美的感性を無視することはできないと感じた。対照的にジャン・ギャバンの演技は実に世俗的で、この対比がまた人間模様をかもし出していて、実に楽しい。 【神谷玄次郎】さん 9点(2004-02-24 00:24:49) (良:4票) |
10.《ネタバレ》 こんな歴史的名作を、私ごときが今さらもっともらしくアレコレ誉めても、大変に嘘クサイし、第一、それは多分私の役目じゃない(ははは)。でもやっぱり、こりゃスゴイ映画だと思うので書いちゃう。やっぱり各シーンが生きてます。1ショットに、空間的時間的動きが収められる手腕、全く時代を感じさせません(ってか、その後ウン十年の映画の「進歩」って、何なんでしょね?)。しかしこれ見よがしの「映像美」大安売りには決して陥らず、おかげで最後はまさに「とっておきのラストシーン」が光っています。そういや後半の、エルザがランプ片手に歩くシーン、横からスポットライトを照射して撮影してるので、後ろの壁面への影の出来方が明らかにヘンなんですけどね。でもこれも一つの映画的効果、やはり「暗闇の中で灯を持つエルザ」というモチーフのための必然性すら感じてしまう(気のせいだろうけどな)。 ま、それはさておき、ストーリー的には、作品世界自体が「大いなる幻影」である---ってオイ↓【しったか偽善者】様のレビューをパクるなっての。いや私も全く同感、いざ書こうとしたら、ずでにお書きになってた! 現実にはありえないでしょ、と思える程に人間関係が和やかで、肯定的な描き方。が、これはイコール現状肯定、という訳ではなく、「でもコッチの方がよくないかい?」みたいな感じで、そっと平和と人間讃歌を謳い上げています。だからこそ「幻影」が効果的なのでしょう。、一見、幾つかのエピソードに分かれたストーリー、しかし主題は確かに掘り進められていく。演芸会の途中で、ドゥオーモン奪還の一方が入り、舞台は中断されてラ・マルセイエーズの合唱となる。私は正直、舞台の続きが見たかった。そんな愛国心丸出しの国歌で楽しい舞台が中断されたのが残念だったのだ。フランス人が私と同じ感想を持つとは思えんけど。ま、どっちみち、前半で描かれた大脱走計画は頓挫、盛り上がったエネルギーは不発に終わる。そして、所長とボアルディエとの国境を超えた友情・敬意、それは最終的に、脱出する二人とそれを匿うエルザとの関係に託され、花開く。彼らとて、帰国しても待ってるのは軍隊生活、しかし今や新しい希望出来たのだ。雪の山岳地帯に消えていく彼らと、それを「すでに国境を超えたから」と見逃すドイツ兵。二人は自分達が「見逃されている」事に気づいたかどうか・・・。溜息の出るラストシーンであります。 【鱗歌】さん 9点(2004-02-14 23:00:59) (良:2票) |
9.ようやく名画の呼び声高いこの作品を見ましたらなんと、「大脱走」「第17捕虜収容所」「アルカトラズからの脱出」などの捕虜・脱走ものを思わせる「おおもと」だったんですね。第1次大戦中のお話ですが、作られたのは37年という第二次大戦前のきな臭い時代。反戦のメッセージが強く伝わってきます。捕虜収容所での紳士的な扱いややり取りは信じられないようなのどかな感じだし、脱走した二人をかくまうドイツ婦人との描き方も甘い感じがする。それでもドイツ貴族のシュトロハイムのたたずまい、フランス貴族との友情の描き方、この時代に作られた意義、後の作品に与えた影響の数々など諸々の敬意を加えて9点。 【キリコ】さん 9点(2003-12-25 15:06:34) (良:1票) |
8.ヒューマニズムと戦争批判が主題であるのは当然ですが それが説教臭くなく 国とはなにか 戦争とはなにか 境界とはなにかを深く考えさせてくれる映画です。ラ・マルセイエーズを捕虜が高らかに歌ってる場面でとても気持ちが高揚してしまいフランス人の誇りを見た気がしました。第一次世界大戦のさなかこんな映画作ったルノワールの功績は大きいです。 【たましろ】さん 10点(2003-12-11 21:18:08) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 この映画は、作品世界自体が「大いなる幻影」であるという切なさが心に迫るってくるし、優しさがキャラクターに溢れていて(悪人がほとんど出てこない)、それぞれの人間関係に胸を打たれた。おそらく幻影であろう男女の再会を願ってやまない。反戦映画としても素晴らしいと思う。でも、こういう映画って評価しにくいなぁ・・褒めるしかないみたいな・・アラを探すこと自体映画そのものにツバ吐くことに思えるし・・。しかし、そういう権威としての地位を確立してるのも、その権威自体も作品の力だと思う。私は映画の完成度、歴史的意義、読んだ評論、時代背景など個人的感動とは無関係とも思える要素も、その映画の評価とは切り離せないと思ってるし、名作をありがたがる自己満足など非難してもしょうがないと思っているので、自分はそういういやらしい権威に媚びた意識が感想に影響したことをおおいに認めて10点。豪華キャストの名演技、パイオニア的映像テクニック。そういう解説本に書いてたことへの賛美も含めて10点。 【しったか偽善者】さん 10点(2003-12-05 19:14:50) (良:2票) |
6.戦場の紳士。ルノワールが撮ると戦争までも格調高くなる。 【STYX21】さん 7点(2003-11-13 20:02:30) |
5.ジャン・ギャバン版「大脱走」。でもこちらの方がはるかに先なんですよね。シュトロハイム演じるドイツ将校が見事。この風格が映画全体を引き締めています。 【FOX】さん 8点(2003-07-13 00:18:39) |
4. 印象派の画家として余りにも有名なピエール=オーギュスト・ルノワールを父に持つ天才映画監督ジャン・ルノワールの格調高い反戦映画の最高傑作の一つ。その後、雨後の筍状態となる”捕虜収容所からの脱走”映画の最も優秀な雛形であり、実例でもある。コレを観た後ではスタージェスの「大脱走」ですら色褪せる。実際、ジャン・ギャバン扮するマレシャルが営巣入りさせられ、ハーモニカを通して監視の老兵と心通わせるシーンは、マックィーンのヒルツの場面にパクったんじゃ?脚本はルノワール自身と名脚本家シャルル・スパークとの共同で書かれたが、決して晦渋・難解に陥ることなく壮大なテーマを過不足無く描ききって見事!!加えて父譲りのワンシーンも忽せにしない映像感覚は、無駄な場面や冗長なショットを一切排して正に圧巻。マレシャルが煽動して「ラ・マルセイエーズ」を大合唱する場面は「カサブランカ」でポール・ヘンリード扮するヴィクター・ラズロが煽動するシーンの元ネタと思われるが、高揚感では本作が断然上回っている。特に脱走目前でスイス国境ケーニヒスベルクの収容所へ舞台転換するプロットは、列車の窓から風景がシフトする効果も抜群で「ニクイ」の一語。そこで出会う新収容所長ラウフェンシュタインをサイレント時代の巨匠エリッヒ・フォン・シュトロハイムに演じさせているのも、コレ又「ニクイ」。ピエール・フレネー演じるド・ボアルディユとの滅びゆく貴族の運命を語り合う場面では、敢えて二人に辿々しい英語を使わせて意志の疎通を図らせており、実に上手い。ドイツ語を話せぬマレシャルと仏語を解せぬディタ・パルロ扮するエルザが徐々に愛し合う場面は国際間の交流のお手本ともいうべき美しさを放ち絶品。本作公開の2年後に第二次世界大戦が勃発した事実を思い合わせれば、マレシャルがドイツ人エルザとの再会を願うラストは確かに「大いなる幻影」なのかもしれないが、それでも願わずにいられなかったマレシャル=ルノワールの如くありたいか、ローゼンタールのようなシニカルで因果なペシミストでありたいか、の二択を迫られれば、私は躊躇無く前者を選ぶ。 【へちょちょ】さん 10点(2003-02-12 12:25:26) (良:1票) |
3.威厳の中に漂う悲哀、シュトルハイムの演技にしびれてしまう(JOJOに出てくる同名の将校はこれが元ネタ)。 【ひかりごけ】さん 8点(2002-10-20 21:45:53) |
2.映画史上の歴史的名作であることは間違いないと思います。やはり第一次世界大戦の頃のヨーロッパの背景を知らないと分かりにくいとは思いますが、愛国心と貴族的感情の間で揺れ動く将校たちと、若い兵卒の感情のからみは歴史の一面を鋭く描いていると思います。 【モリブンド】さん 10点(2002-10-06 00:34:14) (良:1票) |