22.「山本五十六という人を、世間は持ち上げすぎではないかなあ?」と常々思っているんだけど、そのイメージを変えさせる話ではなかったなあ。 だって生粋の軍人さんですよ?政治家としては無力という意味で。 だから「太平洋戦争の早期講和」なんて絵空事が簡単に言える。 相手の主力基地(ハワイ真珠湾)と主力艦隊を叩いたら、相手の国力が疲弊しない限り、日本はそれ以上の報復を受けなきゃ講和なんてできっこない。 日露戦争の時とは相手の状況が違うってことはわかってると思うんだけど、わかってて「早期講和」っていう政治的超難問を「自分には関係ないこと」として発言するのは、どんなもんかと思いますよ。 で、この映画、「太平洋戦争70年目の真実」なんてサブタイトルにあるけど、別段目新しい真実は特になし。これまで知られているエピソードをまとめただけ。 あ、部下(南雲中将)が無能という話がちょっと面白かったけど、自分には「そういう問題じゃないだろ」としか思えなかったなあ。 当時のアメリカは「空母なんて、沈んだらまた作ればいいじゃん」くらいの感覚だったはずだし。 ただ、戦闘シーンや食事シーンが上手で、退屈せずに最後までは見られた。 【まかだ】さん [インターネット(字幕)] 6点(2012-08-18 08:11:15) |
21. 山本五十六の物語は、昔からよく物語の中で語られてきた。非戦論者で、開戦に強く反対した人で、早期講和以外に太平洋戦争の望ましい終結はない、と主張した人格者だと。 隣の国が、いたずらにナショナリズムを煽って、日本にちょっかいを出し始めてきて、かなり苛ついている今、こういう人の話をもう一度映画で観るのは、意味の有ることかもしれない。クールダウンである。 旧海軍の司令長官の物語が、そういう役割を担い得るというのは、ある意味面白い事で、それだけ傑出した人物だったのかもな、なんて思う。 欲を言うと、そういう人物であったけれども、また同時に、確かに軍人でもあったわけで、そこのトコロの整合、戦う軍人としての側面の同居具合なんかが、ちょっと見てみたかった。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-08-15 06:58:54) |
20.長期間の戦争は軍隊だけではできない。世論の後押しが必要であり、それを煽るのはマスコミ。現代にも通じる図式。山本五十六の動向よりそちらの印象が強かった。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-08-12 22:54:40) |
19.う~ん、何だろう..映画として、まったく、面白くない..退屈..主役は何なのか、何を伝えたかったのか..全てが、中途半端!..山本五十六を、前面に押し出している訳でもなく、史実を深く掘り下げている訳でもなく、特筆するエピソードがある訳でもなく..中盤から終盤にかけての展開は、飛び飛びのダイジェスト.. 山本五十六の 薄~い表面だけを サラっとなぞるだけの この映画..期待が大きかっただけに、ガッカリ..残念... 【コナンが一番】さん [DVD(邦画)] 4点(2012-07-27 13:01:43) |
18.《ネタバレ》 過去に何度も映画化ドラマ化されてきた。 彼を研究した本も数知れず。 今更山本五十六をわざわざ映画の主人公に据えるのか? 内容は今まで知られてきたいわゆる通説から逸脱しない凡庸な造り。 しかも細部での間違いが多い。 「真実」などと銘打つのなら考証をしっかりしてリアリティをもっと増す努力をしてほしかった。 例えば上官の部屋に入るとき、「失礼します」などと言って入ってくる。 軍隊では性、官位を名乗り「入ります」だと思ったが。 食事のシーンも山本長官がみんなとどんぶり飯を食っている。 全般でどうか知らぬが少なくとも艦隊司令部の士官は良い食事だった。 和食でも塗り物の立派な食器を使ったし洋食はフルコース。 もちろんナイフフォークですべて給仕付きで粛々と食事をした。 親しみを抱かせるための演出なのかどうか知らないけど(単に無知なだけかもしれない)、題名に「真実」などと入れた映画にしてはあまりにもお粗末。 他にも冒頭海軍省かどこかの門前で陸軍歩兵の分隊が銃を構えて威嚇するシーンがある。 陸軍と海軍の対立を表したつもりか何か知らぬがあんなくだらない演出を入れるべきではない。 真珠湾作戦で第二次攻撃をするべきだったか、ミッドウェイ作戦で島攻略が主眼か米太平洋艦隊撃滅が目的だったのか。 両作戦の司令だった南雲中将の判断というのが歴史の中で問われてきたが、この映画では両方とも永野軍令部総長が南雲に入れ知恵をしたことになっている。こんな話は聞いたことがない。 ミッドウェイ戦では敵機襲来までの時間が何分前などとわかっているがあり得ない。 全てがこんな調子、演技にしても別に感銘を受けるようなものはなく、とにかくなんで今山本五十六の映画を作ったのだろうと思うのみ。 三国同盟に反対していたこと、真珠湾攻撃の(作戦としての)成功、最前線での悲劇的な戦死と日本人の琴線に触れまくりの対象、海軍善玉イメージがあるので戦後70年を通じて英雄視されているが、そろそろそういうステレオタイプの見方は改めるべきだろう。 別にことさら悪く描く必要などはないが、もっと客観的に事実を踏まえて赤裸々に描いてほしかった。 昔ならいざ知らず今はもっといろいろな事情が明らかになってきている。 そういう意味で残念だし、特に題名に「太平洋戦争70年目の真実」を付けたうえでこの程度の映画しか作れないという日本映画界に失望する。 【称えよ鉄兜】さん [ビデオ(邦画)] 3点(2012-03-27 06:43:16) |
17.《ネタバレ》 山本五十六という人物像に焦点をあてつつ、リーダーシップ、組織論や意思決定、あとはマスコミ批判等々を織り込んで、ステレオタイプではあるが、まあそれなりに上手くまとまっているという印象。戦争には詳しくないが、大まかなアラスジはもう周知の事実なので、細かな台詞が史実としてどうなのかな?とやや疑問もあるが。印象に残ったのは、新聞記者とのやりとりで「世論がどうであろうとこの国を守る」というような台詞かな。マスコミが作るものかどうかはわからないが、世論はムードに流されるし、間違える。今の政治家は選挙が怖くて、世論を気にしすぎ。当落に関係なく、空気に流されず、信念を持って行動して欲しいと思った。 |
16.《ネタバレ》 特に新しい視点も感じられず、何というか「普通」の大戦映画に収まってしまった作品という感じです。山本五十六に役所広司というキャストはやはり違和感がありました(役所さんの演技に文句はありませんが、はまっていない感じ)。反戦的主張(本来の山本の意図はそうでなかったと思いますが)や、大所高所的視点で話しているように見えて、結局時代に流されていくのみで、彼なりのリーダーシップもカリスマ性も、全く前面に出ておらず、相も変わらずの南雲愚将論に基づくストーリーで山本を引き立たせているようにも見えます。また、やたらと食べるシーンが多く、冗長に感じました。戦闘機のシーンは最近の映画らしく多少迫力はありましたが、そのほかは海軍と山本の歩みをだらだらと見せる説明的な映画でもありました。原作者の投影である新聞記者(玉木宏)もあまりキャラクターが立っておらず、もったいない感じ。 【蛇蟇斎狐狸窟】さん [映画館(邦画)] 5点(2012-01-26 23:02:38) |
15.とても良い映画でした。あくまで人間、山本五十六にフォーカスを当てた作品で、戦争の惨状を無理に描いたり、泣かせよう魅せようとしていないのがよかったです。現代っ子には耳が痛くなる言葉の数々、堪えました。これがほんの数十年前の出来事だとは本当に信じられませんね。 【Kの紅茶】さん [映画館(邦画)] 6点(2012-01-22 18:16:50) |
14.今年初めての映画鑑賞を終えて映画館を出た。映画館の屋上の駐車場から沈み始めたばかりの夕日が見え、その輝きの思わぬ美しさにしばし見入った。 様々な価値観はあろうが、僕自身のこの人生が、同じようにこの国に生きた数多くの生命の上に成り立っていることは疑いの無いことで、こうやって美しい夕日が見られるのも、彼らの生命のおかげだと思った。 伝記映画として、戦争映画として、この映画に目新しいドラマ性は殆どない。 逆に言うと、世間一般の知識が乏しい山本五十六という人物の人間性を真正面からきちんと描いている映画だと言えると思う。 実在の人物や歴史を描いた数多の映画と同様に、今作が総てにおいて真実を描いているとは思わない。 しかし、たとえ一側面であったとしても、山本五十六の人間ドラマは充分に感じることができたし、それに伴う歴史の無情さや愚かさも深く感じることができた。 太平洋戦争勃発時の司令長官として、戦中戦後に渡り山本五十六に対する世間の風評は大いに揺れ動いたように思う。時には過剰すぎる程に神格化され、時には諸悪の源として蔑まれていたことだろう。 実際にこの人物がどういった人間だったのかは、タイムマシンでもない限り知る由もない。が、少なくともこの映画を観た限りでは、そういった世間の盲目的で安定しない風評に反するかのように、自分の目で世情を見据え揺るぎない信念を持ち続けた人間だったのだなと素直に感じた。 混沌とする世界の中で、一国の重圧と期待と悲しみを一身に背負い生き抜いた一人の人間の姿を見ることができた。 同時に、戦争とそれに伴う悲しみは、“誰か”のせいで生まれるのではなく、その国全体の“愚かさ”によって生まれるのだとういことを思った。 役所広司の演技にも目新しさは決してないが、安定しており、何よりも“説得力”が備わっていた。 主演俳優の演技に呼応するように、作品全体に安定した説得力のある良い映画だったと思う。 「歴史」を描いている以上、あらゆる価値観から賛否は渦巻くのだろうけれど、少なくとも今現在この国で生きている自分は、より責任を持って今この時を生きていかなければならない。 そして、今この国に生きる人々の多くは、太平洋戦争から70年を経た今だからこそもっとこの戦争の事実を知らなければならない。 そういったことを何よりも強く感じた。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-01-08 22:51:01) (良:2票) |
13.《ネタバレ》 正直に良作だと感じました。五十六の人物像、対米戦への思い、そして辛苦と覚悟。文章で五十六に関する資料、小説などは読んでいましたが、上手く映像で肉付けされています。CGは生々しさを敢えて出さず、お涙頂戴に偏らず淡々とした表現に納めていたのが好印象です。連合艦隊司令長官の背負っていた大きなものが初めて分かりました。日本では軍人を肯定する映画はタブーになりがちかと思いますが、やっと納得できる作品に出会えました。減点要因。存在しない将官を登場させています。 【プライベートTT】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-01-06 22:17:28) |
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12.《ネタバレ》 歴史をたどるというより、危急存亡の時にいかなる合理的判断が必要なのか、意に沿わぬ時にいかなる態度で望むべきかのお手本映画です。これは戦記映画ではありません。 広く、大きな視点で言うなら、原発などいらないし、それがかなわぬともあせらず、鷹揚にかまえる。 そう、原発村はまさに陸軍中央の発想です。個々の指揮官は中央にお伺いを立てながら、全力で職務に臨み、裏目となる結果となる。 マスコミはスポンサーにお伺いを立てながら右往左往。 焼け野原の風景はまさに・・・!! 宣伝は実に安直に某ヒット映画の二番煎でありますが、中身は「今」の現状で描かれています。 だから戦闘の悲惨さや、空襲の悲惨さという具体的な描写は極力省かれ、山本五十六という「個」のディティールと大局で描かれているのだと思います。 結局。この映画から感じるのは「我慢」で「我慢」でしかこの先乗り切るしかない世の中だと思います。 この監督特有の浪花節的な思想を感じます。 【どっぐす】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-01-05 01:58:53) |
11.《ネタバレ》 山本五十六の人物を描いた映画としては以前に大河内伝次郎主演の「太平洋の鷲」がありましたが、この映画もそれに近いものです。半藤氏監修とあるのでかなり真実に近いものでしょう。護衛戦闘機が6機いながら多数の高速戦闘機の前にはどうしようもなかった事実は吉村氏だったかの小説によって明らかにされていますが情報と暗号が漏れているのでは仕方なかったでしょう。海軍にとっては石油の備蓄や航空機燃料などの肝心の部分が米国依存だったので陸軍とは対米関係で温度差があったのは当然で、国民に多大な負担を強いて揃えた艦隊も最後は国内の軍港でスクラップになってしまいました。銃後の国民が事実を知らされなかったことには報道関係者の責任も決して少なくないのですが、これは記者への召集令状の話(これは陸軍の専権事項)や敗戦によりガラリと模様替えした編集室の壁などで皮肉っぽく表現されています。この映画では長岡藩の家老だった河合継之助(戊辰戦争で長岡藩を指揮し、一度は城を奪還するが戦死)とその長岡藩の藩士の子供で没落した家から海軍を目指した山本を対比させていますが、それに零戦パイロットまで絡めるのは少し行き過ぎの感があります。山本が日露戦争で指を負傷したのは良く知られていますが、お汁粉屋の娘にとっては当時はそんなに驚くようなこととは思えません。現代の感覚と戦争が日常化しておりまた工場や農林漁業でも負傷者が決して少なくない時代の感覚の落差は決して小さくありません。 【たいほう】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-01-01 00:56:41) |
10.《ネタバレ》 太平洋戦争を扱った映画を観るたびに、常に不満がありました。「戦争責任の総括」と言ったら大袈裟ですが、なぜ戦局の末期に「特攻」や「玉砕」という大日本帝国軍だけに固有のアクションが存在したのか。それを、兵士の哀しさとして扱った映画はあっても、根本に戻って描いている映画は実は無い。本作には「特攻」や「玉砕」の描写はありませんが、間接的にはその問いに回答していると思いました。軍隊の意思決定機関と前線の感覚が乖離しているのはよく聞く話ですが、本作は軍の中枢にいる連合艦隊司令長官が戦争反対派だったという内容。大本営の思惑と山本五十六の感覚は正反対に違っていました。彼が開戦すべきではないと唱えたのは勝てると思えないから。彼にとっての真珠湾攻撃は戦争に勝つためでは無く、早期講和に持ち込むための作戦でした。戦闘の最前線にいる指揮官が「勝利」を目指していないという態度が奇異にも映ります。それは明治維新以降、外国との戦争を無敗で歩んでいた日本の風潮やマスコミの論調にも逆らう姿勢でした。しかし、精神論に依らず国力と戦局をプレーンに見据えることは、最も指揮官に求められる資質だったはずです。「講和」を目指す山本五十六の精神に「特攻」「玉砕」「本土決戦」という言葉はありません。良くない例えかも知れないが、山本五十六は良識を持ったギャンブラーで、大本営は勝つまで博打を止めない質の悪いギャンブラーだった。負債を回収する為に釣り上げたレートが「特攻」や「玉砕」です。かなり話が横道に逸れましたが、本作は戦時にあるべき資質を山本五十六の良識と人柄で婉曲した作品です。ただし、少数の良識と人柄だけでは戦争は止められないし、戦闘は良識と人柄でやるものでもありません。この過去の現実が様々な悔しさを覚えさせてくれます。山本五十六が若手新聞記者に「目と耳と、心で物事を見ろ」と言ったことは映画なりの脚色だと思いますが、良い言葉でした。300万人に及んだ戦没者の9割が山本五十六の死後の戦死であることをナレーションが告げます。果たして、彼が存命だったならその数を減らすことはできたのだろうか? 最初の不満に話に戻りますが、私は大本営の「質の悪いギャンブラーぶり」を徹底的に描いた映画が観たいです。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-12-31 18:21:47) (良:3票) |
9. 気のせいでしょうか、色調がシーン毎にバラバラだった印象があります。 【海牛大夫】さん [映画館(邦画)] 5点(2011-12-30 13:25:42) |
8.《ネタバレ》 故郷を愛し反戦を主張するも、国を守るため戦争を終わらせようと自ら海軍の指揮を取った山本五十六。まさに責任感の固まりのような漢を役所広司が熱演。脇役に数々のドラマ・映画で活躍する名優たちを起用し、その固定イメージと重なってツッコミ所満載でした。海軍カドクラ氏の力説ぶりに映画館で思わず大爆笑するところでした。 【獅子-平常心】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-12-30 00:35:41) |
7.《ネタバレ》 [2018-05-12文章修正、主旨は同じ] 原作を読まないで行ったが、平和平和と連呼する映画ではなかったので安心した。テーマとしては受け入れやすい内容で、単なる過去の解釈ではなく、現代に向けたメッセージとして受け取れる。いまだに固定観念にとらわれたり広告宣伝に左右されがちなところもある中で、特に若い世代や無党派層に向けた映画のつもりかも知れない。序盤でいきなり新聞社の主幹が皮肉を言われる場面は痛快だった。 ただし評判のいい山口少将(や小沢治三郎中将)などを持ち上げておいて、南雲中将などを悪役にしているのはわかりやすいとしても、都合の悪い点はみな悪者のせいにしてしまっているようで本当なのかという気にはなる。原作がそうなっているのかも知れないが、史実としては割り引いて見ておくのが無難かも知れない。これを見て山本五十六を英雄のように崇めるのでは、それこそ映画のテーマに反するように思う。 映像面は、特にこだわりのない一般人としては満足がいくものになっている。昭和のミニチュア特撮を見慣れた人間としては、いわゆる特撮補正をかけなくとも本当らしく見える艦艇が出るだけで感動する。 またテーマにもかかわる若い新聞記者とのやり取りや、前線の視察を言い出したあたりの泣かせどころもあり、娯楽映画としては合格と思われる。ただ少し不満だったのはエンディングの歌であって(ピアノの音も不要)、オーケストラだけのしんみりした曲でよかったと思うが、まあ全体としてはわざわざ見に行く価値はあったものと思う。 なおNHKの「坂の上の雲」とキャストが一部かぶっており、最終回を見たばかりだったので変な気がした。 [2018-05-12追記] 久しぶりに見た。没後75年になったが、今でも大義を振りかざして我を張るとか、綺麗事の観念論に酔って現実を見ない人間が多数いる限り、日本は何度でも負けるという気がした。 【かっぱ堰】さん [映画館(邦画)] 6点(2011-12-26 22:48:24) (良:1票) |
★6.《ネタバレ》 山本五十六は別に平和主義というものではないだろう。あたりまえに勝てない戦争をしたくなかっただけだ。ただ、それはあの時代を考えると確かに貴重な人間であり、評価に値するとは思う。さて、山本の立場を表すため、新聞社を中心に世論というかそのときの空気を形成する軍とマスコミのミスリードが描かれている。今東日本大震災を経て、人々に知らすべき福島の原発事故の詳細を大本営発表のような政府・東電の情報をたいした検証もせず垂れ流す現在の大手メディアへの皮肉に見えてしまった。笑い事ではないのだが。 |
5.硬直した静の画面が多くならざるを得ない題材に対し、作り手は食事のアクションを以って画面に動感を呼び込もうとする。 鰯、西瓜、汁粉、水饅頭、カレイの煮つけ、干柿、干芋、茶漬け、ウイスキー。 それらを美味そうに食べる役所広司の表情が一種の人柄描写としても機能している。 あるいは、艦橋や作戦室との対比として演出されただろう新聞社のセットの活気と雑然感もいい。 短期間での度重なる首相交代、大本営発表に迎合するマスメディア、景気浮揚の為なら必要悪も歓迎する庶民、ラストの瓦礫の街のイメージなどは2011年の現代時評となっている。 しかしドラマは概して役者の表情演技に偏重しすぎであり、特に香川照之のエキセントリックな芝居などは噴飯ものだ。これにOKを出す監督とは何なのか。 そして山本=悲運の平和主義者的スタンスも、私人としての「人間性」に重点を置くスタイルも、過去の映画・ドラマで既出であり「70年目の真実」と呼ぶべき新鮮味は何も無い。 ヒトラーの著書を引き合いに、「大元をたどれ」という割には日中戦争無視も相変わらずであり、昭和戦争史としても山本の人物史としても肝心部分が不備だ。 新たな視点というなら、せめて海軍航空隊による上海その他への無差別爆撃くらいは言及したらどうなのか。 「(勝てない対米)開戦に反対」し、(勝てると誤算した)対中国戦争には積極的に加担する。 その両面を描かなければ山本の「合理的思考」なるものや人間性は正確には伝わらない。 山本=反戦・平和主義といった誤解を相も変わらず助長させていくこととなる。 清濁・正邪・賢愚を出来る限り多面的に取捨していかななければ、「人間描写」とはいえまい。愛人関係まで描いたテレビドラマ版よりも劣るとは、それでも映画か。 真珠湾の宣戦布告・ミッドウェイの換装問題に対する弁明的脚本も実にせこく嫌らしい。 【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 4点(2011-12-25 19:07:21) |
4.《ネタバレ》 史実そのものがもう十分劇的な展開の太平洋戦争、真珠湾攻撃と山本五十六の葛藤、それを主軸に「静」を置いて描いた五十六像にまず好感を持った。 部下を失っては悔しさに泣き、真珠湾攻撃の通達が遅れたことに激怒し、というシーンさえ極力抑えて、「やらねばならぬ」という状況に押し流されるリーダーの無念を裏から描く。それはとりもなおさず、現実を見ずに〝こうあるべきだ、あってほしい″という姿を追い求めた挙句、理想の残骸に誰一人責任を取ろうとしない国民一人一人の罪を背負わされたリーダーの姿でもある。 理性的に見て勝てるわけもない戦に、勝機はないと言いたてることが許されなかった空気と時代。それは今の日本に置き換えて考える価値のあるテーマではないかと思う。 近代史に疎い向きにもわかるよう最小限の説明を新聞記者にかぶせたのは苦肉の策としてまああり。「どれだけ史実に忠実か」という点よりも、あくまで映画としてドラマとして山本五十六という「流れの中で最善の策を探し続けた」男の在り方を、ひとつのかたちとしてクリエイトして観客に見せたその切り口は、寡黙にして誠実という印象を受けた。 今の日本において、改めて見直してみたい映画だと思う。 役所広司の五十六のテイストそのものがこの映画の魅力ともいえる、名演。でもラストの歌はいただけない。 【あにさきすR】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-12-25 03:30:12) (良:1票) |
3.う~ん。ちょっと期待しすぎたかなあ。 空戦シーンには臨場感があって、このクオリティで「大空のサムライ」をリメイクして欲しいと思うくらいだったけれど、肝心の内容が。。。 一言でいうと、歴史の教科書をそのまま映画化した感じ。 登場人物のキャラクターはステレオタイプで個性がないし、ストーリーラインも歴史上あった(とされる)出来事を順々に出していくだけ。しかもそれをセリフとナレーションで説明してしまっている。 CGや衣装などは安っぽくなく、凝っているのは分かるけど、なぜかカメラがほとんど動かないので、結局ただ退屈な場面の連続にしか見えない。 エンターテイメント的に面白いものを作ろうという意志がまるで感じられないのだ。 確かに山本五十六という人はある程度評価の定まっている人物あり、歴史上起こるイベントはむやみに動かすべきではないと思うけれど、だからと言ってそれを盾にドラマ部分をすっ飛ばして良いのかという話だ。 あまり詳しくない人にも分かりやすいように配慮したつもりかも知れないけれど、それならなおさら教科書をまるまる渡すような真似をしたらダメでしょう。 個人的には、海軍部内の強硬派との対立とか、陸軍の東條や辻政信とやり合うとか、息詰まる駆け引きを描いて欲しかったなあ。 【applesoda】さん [映画館(邦画)] 3点(2011-12-25 01:32:40) |