2.《ネタバレ》 これ監督名伏せて部分だけ見せられたら、増村保造と思ったかもしれない。乾いたタッチ・早口のテンポ、といった崑の特徴と思うもののうち、いくらかは大映に移籍後、この社のトーンに影響されて発展したものもあるのではないか。でも笑いの取りかたのしゃれてるところは崑ならでは。若尾文子の代理で結婚を断わりに行った京マチ子が、菅原謙二にホレてしまうのを無表情で演じ続けるあたり。菅原のとこの仏頂面の女事務員倉田マユミの使い方。菅原・船越英二・川口浩の三人が飲み屋で隣り合わせるおかしみ(船越はひたすらついてない役で笑わせる)、などなど。小津的ホームドラマではあるが、昭和30年代半ば、車社会へ向かう日本の、働く女性の面も具体的に提示されている。おせっかいな母をやらせると三好栄子の右に出るものはなく、新人田宮二郎は廊下で立ち話をしていた。