6.《ネタバレ》 燃えたぎる「復讐心」を描いた映画は多々あるけれど、この映画ほどその行為に“歯止め”がないストーリー展開は見たことがない。
本来「善人」であるはずの復讐者の領域を完全に越えてしまっているので、感情移入出来るレベルではなく、正直主人公の人物描写に拒否感を覚える人も多いだろうと思う。
ただ僕は、そういう一線を越えてしまっている部分こそ、この映画の素晴らしいオリジナリティーだと思った。
「司法制度の脆さ」という明確なテーマ性を土台に敷き、妻娘を失った男の問答無用に残虐な復讐行為を、強烈なショッキング性と娯楽性に富んだサスペンスで彩った秀作だと思う。
もはや「完全」すぎて何でもありになってくる復讐行為の数々は、時に非現実的で強引とも思えなくはないが、資産力のあるエンジニアというそもそものキャラクター設定と、演じるジェラード・バトラーの有無を言わせない熱たぎる存在感によって、諸々の難癖を蹴散らし、まかり通している。
競演するジェイミー・フォックスも、自身の価値観の中で揺れ動く敏腕検事を好演していた。
良い意味でも悪い意味でも思い切りの良い映画なので、好き嫌いははっきりと分かれるのかもしれないが、描きたい映画世界を、真正面から堂々と映し出していることが、もっとも評価すべきことだと思う。
自身の罪を受け入れ、ナパームの業火に包まれる復讐者の最期の様が印象的だった。
そして、ジェラード・バトラーは今もっとも炎を背負う様が似合う俳優だということを思い知った。