2.ある日突然、一枚の通知書で“となり町”との開戦が知らされる。流れのままに、実態の見えてこない「戦争」に巻き込まれていく主人公。
映画のテイストとしては実に斬新なブラックジョークに包まれていて、良い意味でとても滑稽に仕上がっている。
が、それは同時にこの映画が物語るテーマの深さを表していると思う。
町単位の戦争という設定だから、その取り仕切りは当然、町議会であり最高責任者は町長、執行も普通の町役場の職員が担当する。だからストーリーとして“可笑しさ”が生まれる。
が、そこに、今この瞬間も世界各地で行われている現実の戦争と、違いがあるのだろうか。
国単位、世界規模で繰り広げられている戦争と、その本質に変わりはないのではないか。
むしろ、現実の戦争こそ、本当に笑えない滑稽さと愚かさに侵食されつくしていると思えてならない。
そしてそのことこそ、この原作が伝え描くことなのだろう。
映画の演出としては、少々チープだったり、過剰だったりする部分もあったが、問題作と言われた原作小説を巧く映像化したのではないかと思う。
透明感と無機質感を併せた表現力を見せた原田知世は、女優としてとても魅力的だった。
余談だが、この映画はほとんどのシーンが地元ロケ(愛媛県)で、随所に身近な場所でのシーンがあらわれて楽しかった。
あんなに近所のバッティングセンターでロケをしていたとは、観に行けば良かった……。