1.《ネタバレ》 小田急のロマンスカーと言えば昔は喫茶店なみのサービスがあって、サンドイッチとアイスティーを頂くのがウチの家族旅行での慣例となっておりました。微妙に鉄分を有していた私は箱根登山鉄道のスイッチバックにも心ときめかせていたものです。
灰色とオレンジの懐かしいボディカラーの箱根登山鉄道が登場するこの映画、壊れてしまった家族の楽しかった思い出を巡る物語に自分を重ねて胸が締め付けられる思い。家族って、壊れたり変容したりするもの。
大島優子ってこんなにジミなお嬢さんでしたっけ?っていうのが最初の印象。仕事はできるけれどつまらなそうに生きてる感じの役で、それがオッサンとの旅でどんどん魅力的になってゆく、そんな映画(つーか、オッサンが買ってくれた毛糸の帽子被った姿を妙にかわいく思ったのね。帽子フェチか?)。
オッサンとの体温やテンションの極端な差がおかしくて笑わせてくれますが、その対話によってそれぞれの事情が徐々に明らかになってゆく、それぞれの痛みがじわじわと溢れてくる、そして映画はその痛みを優しく抱きしめるのでした。
家族が再生するわけじゃない、幸せが訪れるわけでもない、何かが大きく変わるわけではないけれど、過去から現在そして未来へと続いてゆくそのひとときをそっと見つめる、それだけの映画、それだけの物語。