19.《ネタバレ》 かなり昔のこと、幼少の頃だったが、何とはなしに深夜映画を観ていた。
薄暗い倉庫の様な場所で、不気味なマネキンに囲まれ、二人の男が格闘する映画だった。
その時に観た、不気味な映像が今でも忘れられないでいた。
そんな幼少期のもやもやを払拭すべく、何の映画だったのかを検索した。
そうしたら、かの有名なキューブリックの初期の頃の作品だったわけである。
そこで30を超えた私は、今になって本作をレンタルしてきたのであった・・・
スタンリー・キューブリックの作品を観るのは『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』に続いて3作品目。
本作は67分という短い尺の映画で、モノクロ作品である。
ただ、1955年の作品なので、モノクロとはいっても、とてもシャープで綺麗な映像である。
序盤はゆっくりとした展開で、やや退屈感はあった。
しかし途中からどんどんと緊迫感が増してくる。
これぞサスペンスの醍醐味という感じ。
後半では、ニューヨークの古いビル街での“追い駆けっこ”が繰り広げられる。
これが相当に面白い。
興奮する。
そして、そのロケーションが抜群に良い。
主人公がビルの非常階段を駆け上って必死に逃走するシーンがあるのだが、この非常階段が独特で面白い。
シーソーの様な造りになっていて、二階部分に上った人間がつっかえ棒の様なものを外すと、その階段が平行になってしまい、下からは昇れなくなるというものだった。
これが巧みに、逃走シーンの中に織り込まれていて、妙に興奮する。
その階段を昇った後、今度はビルの屋上に出るのだが、ここでの演出もなかなか憎いくらいに上手い。
景色も遠めにブリッジ(ニューヨークの有名な橋)がさり気なく映っていたりもする。
余談だが、この屋上でのシーンは、許可なく撮影したという。
そして何と言っても、本作の見所はラストシーン。
ラストバトル!
既に書いたが、マネキン倉庫での格闘シーンだ。
不気味なマネキン達に囲まれての壮絶な死闘。
マネキンの手が上からぶら下がっていたりする。
マネキンを投げつけたり、マネキンで殴ったり、マネキンで防御したり・・・
これは迫力もあるし、不気味だし、そして何より興奮する。
67分という軽いテイストのサスペンス・アクション映画だが、十分に楽しめる内容である。