3.チリ・クーデターやその後の軍部独裁政権をテーマにした映画は少なくないが、その中でも屈指の社会派ドラマである。横行する醜い国家警察権力に対して、見ざる・聞かざるの環境で育った主人公イレーネが、レジスタンス活動家の写真家と恋に落ち、ジャーナリストとしての使命に目覚める。彼女の目を通して描かれる軍部の拷問や虐殺は、陰険そのものだ。
この映画の原題「Of Love and Shadows」のLoveは、恋人同士の愛だけではなく、人間愛、家族愛、祖国愛といった大きな愛を指している。そしてShadowsは闇すなわち独裁政権の闇なのだ。これがまたどういういきさつで「愛の奴隷」という誤解を生むような邦題になったのだろうか。大いに不満。