8.総じて雰囲気はよく出来ていた。
いくつか列挙してゆく。
過去の失踪事件現場のドローンによる空撮、その距離感やサイズ、カメラの動き方は、そこにある不穏な空気感を漂わせていた。
微風に靡く草木も、そこが他とは異質な空間であったり、前触れであったり。
ガス爆発が起こる前の窓ガラス越しに見えた閃光やら、監禁部屋の質感や色合いなど細部に至るまで、他にも挙げたらキリがないけど
まさに黒沢清監督らしい画作りでありました。
そういう意味合いでは堪能させて貰いましたが、最初の文頭で申し上げたとおり
「雰囲気だけ」なんですよね。
西島秀俊や香川照之のコンビも勿論頑張ってる、香川に至っては、別にべた褒めするほどの怪演ぶりってわけでもないし、
正直もう1、2つ足りない。他者を惹きつけるカリスマ性なのか、或いは、洗脳させることに長けた能力の高さや、頭の回転の早さ、良さなど。
竹内結子が、今の生活に不満を抱いていたという描写も、何故あっさり隣人のいいなりになってしまったのかも、そのあたりの描写が淡白、というより無いに等しい。警察の元後輩の死に様はともかく、そのあとのアリバイ作りが妙に嘘っぽい感じや、とにかく出てくる警察官が皆アホなんですよね。
雰囲気はよく出来ているのに、肝心の登場人物に入り込めないんじゃ、いかに不気味に演じようと、円満に解決しようと、胸に響いてくるものが無いんですよね、残念。
監督のファンなら見て損はないと思いますが、過度の期待は禁物です。