1.《ネタバレ》 製作国は今でいう北マケドニアとコソボである。撮影は全てマケドニアだったそうだが、言語はマケドニア語のほかアルバニア語(コソボの主要言語)が使われているとのことで、終盤の男連中(コソボの役者)が話していたのがアルバニア語だったのかも知れない。なお景観が印象的な湖はマケドニア・アルバニア・ギリシャの国境にあるプレスパ湖だったらしい。
内容的にはミステリー調の物語で、最初は見ず知らずだった女性2人が、原題の「9月の3日間」を通じて互いに理解し共感し合い、最後に何事かをなす展開になる。初めのうちは人物像もわからず突き放した気分で見ていたが、その後次第に愛着もわいて来て、最後はそれぞれ納得のいくよう決着してもらいたいと願いながら見ていた。
ちなみにヘイトと言われるかも知れないが、個人的には普段から白人女性の外見をあまり魅力的に感じないことが多いので、この映画でも主要人物2人とも可愛くないのが出て来たなと思っていた。しかし後になるとそれぞれ外見的にも人物的にも格段に魅力が増し、特に「売春婦」と言われた人物が終盤いきなり清楚系に化けたのは意外だった。
ほか社会的なテーマに関して、まず元大臣が建設したホテルの件は、地元貢献なのか汚職による蓄財か、あるいは単に現地の歴史的習慣なのかも知れないがよくわからない。また女性への性的虐待に関する問題意識が根底にあったようで、主要人物の境遇もそうだが、特に引っかかったのが「この国自体が売春宿みたいなもの」という発言だった。
劇中では、警察官が反社会的勢力と結託して「売春宿」を作ろうとし、これを「質のいいやつ」にするために、「放浪してる女」ではなくロシア人を使うつもりだと言っていた。ここでロシア人が上物扱いというのもどうかと思ったが、下に見られた「放浪してる女」という字幕のところで、原語の台詞ではЦиганки(ロマまたはアッシュカリー?の女性)とかМолдавки(近年ヨーロッパで最貧国扱いされているモルドバ共和国の女性)と具体的に特定していたらしいのはかなり侮辱的に聞こえた。これが現地の実態なのだとすれば結構厳しい告発になっている。
ちなみにネット上にあったモルドバ人女性の人身売買の記事(マケドニア語、2004.10.17)によれば、売られる先は主にロシア・トルコ・バルカン半島だそうで、マケドニアでも警察官が仲介した事例があったとされていた。この映画も適当な作り話ではなかったらしい。