2.映画のなかで色んなものがぐるぐる蠢いていて、それをそのまんまの状態でカメラに収めている。節度はないがハッタリが利いている。しかもこの監督独特のユルさが潤滑油みたいになっている。海洋を舞台とする壮大なスケールの内容ながら、「タイタニック」みたいな見世物根性がここには全く無くて、かえってそれらは隠してある。だから思い出すのはタイル張りのサウナルームであったり盗んだエスプレッソマシーンだったり、妙に高性能なレーダーだったり彼らのユニフォームだったりする。細部へのこだわりじゃなくて細部へのいたわりというか、結局それが登場人物のキャラクターにも関連してきて、ビル・マーレイ達にこれ以上ないというほどの魅力的な人物像を与える。ウィレム・デフォーの小物っぷりなんて、もはや泣けるんだこれが。だからはっきり言えばメチャクチャな展開だけど、画面が面白いからストーリーなんてどうでもよくなるし、気がつけばサメへの復讐だって最後まで忘れ去られる。それを破綻ととるか否か。まあ、どっちにしても最後のサメと遭遇するシーンを見てしまえば、些細な事は全て吹っ飛び「ライフ・アクアティック」はどこを切っても映画だとしか言いようがなくなる事間違いなし。