2.《ネタバレ》 帰り道に寄った深夜のコンビニで、リキュールとバターピーナッツをレジに持っていき300円を財布から出しながら、「これだと“3分”くらいかな」とか思った。
「時は金なり(Time is money)」そのままの設定と言ってしまえば確かにそう。単純で浅はかな印象も受けなくもなかったが、SF映画として面白いアイデアだとは思った。
実際、設定を生かして映画的に面白い場面は幾つもあった。文字通り生命をかけて「時間」を奪い合うシーンの緊迫感や、すべての人物が25歳の肉体という設定を生かした人物描写には、何に手間をかけている訳ではないにも関わらずオリジナリティが生まれていたと思う。
しかし、この映画の唯一の面白さは、その「基本設定」だけと言って間違いない。残念ながら。
あとは、その面白い設定をことごとく「陳腐」に貶める脚本のお粗末さが目に余る。
“一日”の寿命を稼ぐために日がな働き続ける主人公が、母親の死をきっかけに、非人道的な社会体制に殴り込みをかけるというお話なわけだが、その行動原理自体に説得力が無さ過ぎる。
そして、主人公の行動自体もあまりに場当たり的で、すぐに頓挫し行ったり来たりを繰り返すので、非常にテンポの悪さを感じてしまった。
物語上、主人公らに対して「悪」となるものの存在もとても中途半端。
大富豪として巨万の富みならぬ「時間」を保有するヒロインの父親も、執拗に主人公らを追う時間管理局の捜査官も、非人道的だろうが何だろうが、定められた社会ルールの中で自分がすべきことに人生をかけている真っ当な人間にしか見えない。
結局のところ、映画の中で最も利己的な行動をしているのは他ならぬ主人公たちで、逃避行劇に酔った男女が、何らかの事由があって敷いている特異な社会体制を好き勝手に荒らしまくっているようにしか見えなくなる。
他にもきりがないくらいに突っ込みどころは満載。予告編が伝える内容と本編があまりに乖離してしまっているという「駄作」っぷりも久々に味わった。
脚本の作り込みをもう少し真面目にしてくれたなら、幾分マシな映画にもなっていたと思う。
「ガタカ」を撮ったアンドリュー・ニコル監督の最新SFとして期待高だっただけに、想定外に低レベルに落ち込んでいく映画世界を目の当たりにして、苦笑するしかなかった。
唯一の救いは、ヒロイン役のアマンダ・セイフリードちゃんが可愛らしかったことくらいだ……。