1.《ネタバレ》 タイトルの"Blitz"はドイツ語で"電撃戦"のことを指す。
1940年秋のナチスドイツによるロンドン大空襲を背景に、
黒人の血を引く少年が疎開を拒み、白人の母親の元に帰ろうとするシンプルなストーリーだが、
「戦争はやめよう、人種差別はやめよう」というメッセージの先にあるものがまるでなく、
内容が水のように薄かった。
母役のシアーシャ・ローナンをはじめ、俳優初挑戦の祖父役のポール・ウェラーの好演は言うに及ばず、
潤沢な資金を使った空襲シーンのCGの本気度、格調高い美術セットといった技術面のクオリティは高い。
だからこそ惜しい映画なのだと。
幾度の空襲に耐え抜いたイギリス国民の神話に対して異論を述べたかったのは分かる。
透明人間に近いマイノリティに光を当てたことは、黒人監督であるマックイーン監督ならではだろう。
だが、イデオロギーが強すぎて、物語と登場人物が"多様性社会"と上手く溶け合っていない。
別に祖父を死なせる必要はなかったし、最後に母子が再会しても何の感慨もなく、ただ終わっただけである。
とは言え、ディケンズの児童文学を彷彿とさせる雰囲気があり、ハードな描写が少なめのため、
児童からお年寄りまで家族で一緒に見るには丁度良いかもしれない。