40.《ネタバレ》 すごく『男の子』で、すごく『母』だなと思った。息子がそれはそれは一生懸命についている嘘。それが嘘と判った上で『素晴らしいわ』と言える母。これは本当に愛しあっている家族だからこそ出来る技でしょう。人間も動物だから、本能としての肉親愛は備わっているけれど、そこから一歩踏み出した家族愛は、結構むずかしい。相手の幸福を想う事。感情に押し流されない事。自分よりも相手の心地良さを優先する事。これって、簡単なようでいてとてもむずかしい。この母子は、それが出来るからこんなにもあたたかい。あたたかいから、かなり毒舌なユーモアも、嫌味なく見られる。ベルリンの壁崩壊のニュースを観た時、わたしはまだ子どもだったけれど、ブラウン管を通して伝わってくる人間のパワーを凄いなと感じた。この映画も、もっと規模は小さいけれど、ひたひたと余韻を残して、あの時と同じように人間のパワーは凄いと感じさせてくれる。 【ともとも】さん 8点(2004-11-04 23:05:23) (良:3票) |
★39.堅物のおばちゃんにあそこまで徹底できる息子の愛が素晴らしい。頑固なまでに優しい。俺なら投げ出して真実を言うだろう。あと、ルナ・パパにも出ていたララ役のチュルパンにはまりそう。 【モチキチ】さん 9点(2004-10-31 22:47:37) |
38.「素晴らしいわ」が全てを物語っている。社会主義は資本主義に敗北した。しかし目の前に映しだされているのは、社会主義がついに到達した理想の世界。そして傍らには、自分のためにそんな世界を創造してくれた息子。母親の言葉は、全てに対しての賛辞だろう。この映画には、西側諸国が唾棄してきた社会主義という理念が根っこに持っていた純朴さ、にスポットが当たっている。一夜にして資本主義なだれ込んで来た東ドイツ。果してそれは本当に幸せな事だったのだろうか?アメリカは、日本は本当に豊かな国だろうか?「西側的退廃文化」は’90年代から確実に社会的病理を生み出し始めた。現在、旧東ドイツ地域の失業率は20%以上とも言われる。「今こそ我々は手を取り合い、次なる世界へと飛躍するのです。」S・イェーンの言葉は、資本主義の水にどっぷり浸りきり、他を顧みることのなくなった自分達に向けられたメッセージなのだろう。 【C-14219】さん 9点(2004-10-27 23:01:05) (良:1票) |
37.《ネタバレ》 すごくよかった。全般に渡って現れる宇宙、宇宙飛行士、ロケット・・・。それらはすべて理想を追い求めた社会主義という思想・体制のメタファーになってる。宇宙のことを聞かれた元宇宙飛行士が言う。「すごく美しかった。でもそれはひどく遠かった」。社会主義という遠すぎる理想。それは多くの困難を生み出したけどそこから学ぶ事もある。この映画はひとつの側面でその社会主義への優しいレクイエムのようだ。映画監督志望の友人など西側の人たちはちょっと違ったトーンで描かれている。でも決して悪ではなく主人公の大切なパートナーで理解者だ。その二人の関係は新しい世界の象徴のようにも見えた。主人公の母親への愛も深く、優しい。ララも不完全なかわいさがあった。社会の変化を家族愛を通して描いたとてもいい映画だと思う。「素晴らしいわ」と僕も言いたい。 【ベンジー★】さん 10点(2004-10-24 05:08:09) (良:3票) |
36.《ネタバレ》 最期の「素晴らしいわ」にはやられた。ビデオの内容にではなく、ビデオを製作する過程に対して贈られた一言。 『ベルリンの壁崩壊』なんて、ドイツから何時間も時差のある私たちには一つのニュースとしてしか伝えられてこなかったけれど、この作品を通して東側の戸惑いなど当事者の様子が少しは分かった気がする。今までに見たドイツ映画に違わず、国民性そのままに生真面目に作られたこのドイツ製コメディは、ハリウッドのアホ臭いコメディ映画では絶対に醸し出す事の出来ない物悲しい余韻を、観客の心に残してくれた良作だったように思う。 【wood】さん 8点(2004-10-23 23:00:17) (良:1票) |
35.《ネタバレ》 レーニン像の釣り下げシーン(フェリーニのオマージュ)は圧巻であり、社会主義崩壊を象徴するシーンとして見事だった。 ふと思ったが、反対に資本主義が崩壊したら、レーニン像の代わりに何が釣り下げられるのだろうか。 それは、政治家の銅像などではなく、おそらく、ケンタッキーの「カーネルサンダース像」だろう(笑)。 なにしろ資本主義経済を最も象徴する像なのだから・・。 【STYX21】さん 6点(2004-10-23 13:14:35) (良:1票) |
34.ちっちゃい頃から、逆に母を守ってきたアレックス。最後母は、母である事を実感しつつ亡くなった。それ良い。 【ヒロヒロ】さん 8点(2004-10-23 02:25:27) |
33.コメディなんだろうが、その笑いにはどこかしら「西側」の人間から見た東側の滑稽さが笑いの種としてあるように思う。しかし、この映画は「東側」の理不尽さを描いた映画ではない。私たち西側の人間からしてみれば「東側」には人権も何もない不自由な生活を強いられていたと思わせられていた節がある。それは総体的にみれば正解なのだろうが、この映画では、その人権無視の東側の庶民はその体制の中でさえ、牧歌的ですらある安穏な生活が行われていたという私が見落としてしまうような事が描かれていた。そのような生活を無条件に信じていた人たちにとって東西ドイツの統一がどれだけ多くの犠牲の上でおこなわれたのであろう。これのテーマに正面から取り組めば重いだけのたんなる「ドキュメンタリー」となっていたであろうが、コメディを含める事により、「西側」向けの娯楽を絡めなければ政治的な話を聞いてくれない私のような者にもそれを意識させる事が出来る。東西ドイツ統一直後に旧東ドイツを旅行しながら西ドイツ地区ではあまり見かけなかった壊れた建物や農機具を見て東西ドイツの統合はどのような影響を残すのだろうと考えた私の一つの答えを見たような気がした。 【クルイベル】さん 8点(2004-10-21 10:16:12) |
32.「レーニン」と言っておきながら、実はドイツ映画。宣伝やパッケージなどからちょっと気取ったおしゃれ映画なのかと思いきや、東西ドイツの統合をダシにした家族ドラマでした。はっきり言ってお話は幼稚だし、無理に感動させようとか面白くしようという意図が見え見えな映画でした。別に東西ドイツ統合を使わなくても十分描けたテーマで、奇をてらったいやらしさがありました。父親の存在がまるでピンぼけだったり、中途半端な資本主義の皮肉が入っていたりと、うっとうしいです。”家族の団結”、”母親の秘められた父親への愛情”といった話も、打ち上げに失敗したロケットみたいにどこへやら。主人公の感情の描き方も実に浅い。「実は母親と一緒に自分の世界に閉じこもりたかったんだ」みたいな描写がもう少しあってもいいんじゃないか。ララもかわいくない。大体、遺灰をそんな風にしちゃっていいのか!?もう訳がわかりません・・・と言いつつ、ドイツ映画ってこんなクサい話を実に不思議な暖かみをもって描くことが多い気がします。どこかほんわかとした温もりがあって、割と好きです。この映画もストーリーはボロボロなのに、あまり個性のない俳優さんがぽわっと演じていて、つい見ちゃいました。 【おしりはばとび】さん 4点(2004-10-18 23:41:59) |
31.《ネタバレ》 前半はコメディ仕立てだけど、私は何故か途中から涙腺をやられた。国家の再統一という「国家的事件」と大黒柱の母親の闘病という「家族的事件」の2つの軸を重ね合わせ、時代にほんろうされた家族が再生する姿が描けていると思う。母親とララが後半、アレックスのいない病室で喧嘩していたように、ラストでは母親は嘘を知らされていたはず。しかし、死期を迎えた母親に見せた最後の嘘のニュースは、少年の頃のアレックスのヒーローだった元宇宙飛行士が臨時の国家元首に扮して、統一された新ドイツの姿を語る姿。それは西ドイツがいつか失って、東ドイツがたどり着くことに失敗したような現実にはない理想の国の姿。アレックスに優しい視線を向けながら母親が語る「すばらしいわ」の言葉は、国家再統一という歴史の荒波の中で、人々が失ってはならないものに気付いたアレックスの成長に向けられたもののように思える。新しい国の誕生を祝う花火を見ながら、万感の思いを胸に母親は静かに旅立っていく。父親の所在をめぐる嘘を告白し、アレックスたち家族の優しい嘘を受け入れた母親はすべてに安心しきったような穏やかな表情だ。おかしくて笑い、しかし、同時に涙が出る、そんな不思議な映画だった。余談ですが、ララ役の女優さん、可憐でかわいいですねえ。 【しまうま】さん 9点(2004-10-11 03:19:35) (良:1票) |
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30.一つの国家が、紛争あるいは統合などといった歴史的なターニングポイントを迎えたとき、国民は如何にそれに向き合い、どのような行動をとって生きていくのだろうか。本作は東西ドイツの統合が、とりわけ旧東ドイツにとっていかに驚天動地の出来事であったかという事を、ひとつの家族を通して描いたものだが、遠い国の出来事と無関心ではいられないほど、当時の彼らの心情が痛いほど伝わってくる秀作である。物語の発端は、主人公アレックスがある日デモに巻き込まれ、間違って補導されてしまい、その事がショックで母親が倒れてしまう。長期に渡る昏睡状態の後、奇跡的に回復するが、その最中に東西ドイツの統合という歴史的変革が生じてしまう。自国に誇りを持って生きてきた母親にこの事を知られまいとするアレックスが、あれこれと捏造を重ね大芝居を打つ姿を、映画は終始コミカルなドタバタ調で描き綴っていく。咄嗟の判断でその場を切り抜けたり、皆で寄ってタカって嘘を演出するというのは、洋の東西を問わずコメディの常套的手法だが、アイデアが少々お堅いのはお国柄だろうか。けれども、いかにも嘘っぽいそれらを彼らが大真面目にやるからこそ、余計面白いとも言えるのだが。アレックスたちの涙ぐましい努力と徹底した行動力というのは、あたかも旧東ドイツを象徴しているかのようだが、果たして彼らのとった行動にどれほどの意味があったのだろうか。虚構のシナリオが大袈裟になればなるほど嘘っぽさも増していくという皮肉とその虚しさ。すっかり新しい社会環境に慣れきった彼らに比べると、母親のブランクが余りにも大きいという事なのだが、人間とは本来社会の変化の真っ只中にいると、その変化に知らず知らずのうちに順応していくものでもあると、映画は語りかけてくる。ところで、息子の嘘つまりはドイツの変化に気づかぬ振りをしてこの世を去った母親の愛情を、アレックスは果たして汲み取ったのだろうか。急激な社会の変化に翻弄されても、現実に背を向けることなく生きていく為の一歩を踏み出すこと、そして家族の大切さを彼女に教えられたような気がする。 【ドラえもん】さん 8点(2004-09-28 00:33:33) |
29.ショックを与えないためにうそをつくというところにどうしても共感できない。 【HK】さん 6点(2004-09-20 03:20:52) |
28.お母さんじゃなくてもレーニンがヘリで運ばれてるのを見たらびっくりしますよ。 友人(笑える)とお母さん、孫、家族愛と、厳しいけどやさしい映画でした。音楽は『アメリ』と同じ方だそうで、なかなかいい感じでした。 【rexrex】さん 7点(2004-06-12 13:14:15) |
27.ララが可愛かったが、喫煙はいただけない。主人公がイグナショフに似ていた気がしたが、気のせいだったかな。 【マックロウ】さん 7点(2004-06-09 11:41:46) |
26.主人公の嘘をいかに見せるかという映画なんだが、心苦しい。確かに笑えるのだが、なんとなく悲しい笑い。おそらく私には理解できないほど細かい部分まで作りこんであるのだろうが、実際にそこに生きていなかった身にはわからない。ただただ心苦しい雰囲気としか理解できず、自身が心苦しくなってくる。映画の主題以上に、色々なことを知らなくては…と考えさせられる良作でした。 【王様】さん 9点(2004-06-06 02:05:27) |
25.良作。満足いく出来です。本作、タイトルからしてアンチ社会主義的映画かと思って観ましたが、単純にそういう認識に立った映画ではないですね。むしろ「(旧東ドイツに対し)こんなのが本当に社会主義か?」という感じで疑問を提示する面が強かったように思えます。終盤はこの性格が特に強調されていますが、これを描いていく方法として、偶然が重なりに重なって、登場人物のアレックスの「創造」し、お母さんに与えられる世界が思いもよらず展開していく点が特に面白かったです。 |
24.《ネタバレ》 なんともハートフルな映画ですねぇー。全編アレックスの嘘なんですけど、私はこの手の嘘って好きです。自分以外の為の全身全霊の嘘って素敵じゃないですか。「嘘も方便」って奴ですね。その全身全霊の嘘に快く協力する街の人々も素敵です。特にロバート・カーライルになんとなく似てたアレックスの友人が良いっすねー。自分の趣味全開で(笑)(監督はキューブリックファンなんでしょうかねー。アレックスって名前もあれからとか?)で、キーパーソンとなる、アレックスの彼女のララ。この映画ってずっとアレックスの視野で展開するんで、母上は事実を知らないままって感じなんですけど、確実にララは伝えてますね。まぁー彼女自身母へ演技を続けているのが茶番って感じてた節もありますし。で、それをあえてしりつつも、息子の愛の篭った嘘をずっと付かれ続けている振りをしている最後のシーンもジーンときますよ。テレビじゃなく、アレックスをじっと優しく見続けるシーンが何か救われた気がします。重いテーマになりそうなところを実に軽快にテンポよく撮った監督なかなかなもんですね。あとこのタイトルにもなったレーニンが吊るされてるシーン凄いっすね。あれを見た母はどう感じ取ったんでしょうか。。 |
23.《ネタバレ》 社会主義が崩壊し資本主義に圧倒されていく流れの中では、社会主義に対する風当たりが厳しくなるのは仕方が無い。しかし、社会主義の全てが間違っているわけではないし、その中でそこそこ幸せに生活していた人達がいたわけです。そういった人達にとって変革は必ずしも良いものではなかった。仕事は失うし、かつての労働者の英雄はタクシー運転手になってるし…社会の中でしか人は生きられないが、社会は個人の思いとは関係なく回転し、流れていくようで哀しかったです。けど、映画全体はコメディということもあって、それほど湿っぽくありません。また、西でも東でも禁止されている散骨をするシーンは、西だ、東だ、資本主義だ、社会主義だ、そんなことより大事なことがあると訴えているようで、救われました。 【ペリエ】さん 7点(2004-05-09 14:22:33) |
22.《ネタバレ》 登場する全ての人物が、みな温かさに溢れている。母を苦しませまいと必死の芝居を続ける主人公、それに自分の夢を重ねて手伝う友人、一生懸命に芝居を続ける近隣の人々。そして何よりも、母の愛。母は主人公からではなくララから壁の崩壊を知らされ、にもかかわらず映画は終始母を騙そうと演技を続ける息子の視点のまま、観ている観客は巻き込まれて主人公と一緒に芝居をし、淡々と最後まで進んでゆく。「素晴らしいわ」テレビの演説ではなく、一生懸命に自分に芝居をしている本人の姿を理解して微笑んだ母。彼の芝居は母への無上の愛のかたちであったことを、間違いなく母は理解していた。芝居であることを知っていたのを隠したまま死んでしまうことで、息子への愛に最大の形で報いた母の姿。それを最後まで知らない息子の姿が胸を打つ。最大の親孝行、そして最大の母の愛。なんて温かで、ユーモアに溢れた映画だろうか。 |
21.《ネタバレ》 あの“素晴らしいわ”には泣けたなあ。東西冷戦も、社会主義の崩壊も、ドイツ統一も、ましてや人の一生も、宇宙から見ればすべてちっぽけなこと。でもそんなちっぽけな人生にもこんな“素晴らしい”ものはあったんだよね。おもしろうてちょっと切ないよい映画。 【馬飼庄蔵】さん 8点(2004-05-03 15:09:46) (良:1票) |