2.《ネタバレ》 【注!かなりネタバレしています】
ドン・チードル演じる敬虔なムスリムが刑務所でテロ組織にスカウトされ、そのまま爆弾テロの中心人物に。「これはテロリストの実情に迫るドラマ作品か?」と思っていたのですが、物語は中盤で大きく方向転換して『ディパーテッド』になります。この”一粒で二度おいしい”構成は悪くないのですが、脚本と演出がこの物語に追いついていません。。。
ラストを前に、主人公は徹底的に追い込まれます。彼が潜入捜査官であることを知る唯一の人物である上司を射殺され、「テロ計画の障害になる」と判断されたことで彼の恋人はテロ組織に命を狙われ、さらには米国をターゲットにした大規模な爆弾テロが実行されようとしている。まさに八方塞がりの状態なのですが、脚本・演出のマズさからこの絶望的なシチュエーションが観客にはイマイチ伝わってきません。すべての描写が軽すぎるため、観客は素通りしてしまうのです。ここぞというポイントはより克明に描くべきでした。。。
もっと酷いのがガイ・ピアース演じるFBI捜査官の扱いで、彼は最後まで何の活躍も見せず、いてもいなくても大差のない存在となっています。ラストでいよいよ彼の見せ場が来るかと思いきや、ドン・チードルが拳銃1丁ですべての問題を片付けて終了。ドン・チードルがプロデューサーを兼ねた作品だけあっておいしいところはすべて主人公がいただいているようですが、ラストはFBIにも花を持たせた方が面白かったと思います。。。
その他、主人公との友情を育むテロ組織メンバーなど面白くなりそうな要素は多く含まれているのですが、これらの要素は無秩序に並べられているだけで、すべてを有機的に結び付けるという作業は放棄されています。緻密に構成していればかなり面白かったであろう映画だけに、この雑な仕事を残念に思います。