8.映画史を遡るしかない我々には元ネタを発見するという楽しみがある。脚本の元ネタは当然だが、数々の構図が後年の作品にそのまま使われていることに驚く。これはつまり模倣することでしか水準を満たすことのできない、カリスマ的なまでの完成度を本作品が有しているという証明だろう。 それにしてもこのシュレックという俳優はその容姿といい、影絵に生かされる長い指といい、まるでこの作品のために生まれたかのような俳優ではないか。 この作品においての影絵とはグロテスク描写を排するための手段であり、美しさであり、光と影の戦いの象徴でもある。船の上部をぐるりと回りこむ際の影はとりわけ忘れ難く、この作品の力強い存在を見せつけられる。 【stroheim】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-09-24 12:24:37) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 深夜でも昼間のように明るいという発想は一瞬面喰らうが、奇怪な白昼夢と受け取ればイマジネーションが喚起されてオモシロイ。この当時のヨーロッパ、何がオソロシイといえばペストやコレラなどの疫病の蔓延だったに違いなく、その眼に見えない恐怖を兼ね合わせることにより吸血鬼の悪夢的イメージを増幅させている。この作品を見た当時の観客(とくに女性)は背筋が凍り付くほど怖かった違いない。物語はといえば、恋人の無償の愛こそが悪鬼を滅ぼすという溜飲の下がる古典的スタイル。しかし本作で特筆すべきは、吸血鬼ノスフェラトゥの一度見たら忘れられないその何とも形容のし難い姿かたちに尽きるでしょう。尖った耳に枯れ枝のような細長い指、フロックコートに身を包んだ吸血鬼が棺からスゥーっと起き上がる様はゾッとするほどの不気味さである。その一方、「大事な血が」といって来客の切り傷の血をチューとすすったり、自分の寝床である棺を抱えていそいそと引っ越し先に向かったりするなどちょっとユーモラスな一面も垣間見える。怪奇映画の古典に登場するキャラクターとしてはある意味カリガリ博士を超えるインパクトを放っており、コワいが味のあるお気に入りの一本です。 【光りやまねこ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2006-09-04 00:32:36) (良:2票) |
★6.《ネタバレ》 サイレント映画で、夜のシーンがある作品は他にもありますが、如何せん本作にはその闇を表現しなければならない場面が多すぎた。モノクロなのでしょうがないが、暗闇を表現しきれておらず、夜であることをセリフで説明しているところがチョット痛い。 しかし、CGや特殊メイクなどで味付けが出来ない当時、それでも伯爵があれだけの存在感を出せるのは見事としか言えないと思う。 また、ストーリー展開も悪くはないし、伯爵が人を襲うシーンの直接的な描写を避けた演出はクラシック映画の独特のいい味が出ていて良かったと思います。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 6点(2005-09-15 22:30:45) |
5.選択肢がなくて「DVD鑑賞」となっていますが、本作は版権切れのため、ネット上のアーカイブからビデオファイルをダウンロードして見ました(とか書いてたら、いつの間にか「パソコンテレビ」なるアイテムが追加されておりました。管理人さん thx!)。うーん、「世紀の傑作!」みたいなイメージがあったんだけど、実際はそうでもないなー。絵としては素晴らしいかもしれませんが、物語構成はザツだと思います。これでは原作者の遺族が怒るのは仕方ないかな、と。まず全体構成のバランスは(舞台版の映画化で、後発であるが)ベラ・ルゴシ版『魔人ドラキュラ』の方が巧い。そして、盛り上げ方や恐怖感では(同時代の)カール・ドライヤー版『ヴァンパイア』の方が上(マックス・シュレックの演技を除く)。ついでに言うと、本作は比較しなきゃなんない相手がやたら多い映画で、上記2名作の他に、ヘルツォークによるリメイク版『ノスフェラトゥ』、そして本作の製作自身をネタにした『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』。関連作がこれほど多いのも、世界中でいつの時代にも愛されてきた証拠だろう。その理由の5割は、原作者ブラム・ストーカーの力によるものだとしても…。 【エスねこ】さん [インターネット(字幕)] 5点(2005-09-04 03:26:31) |
4.今を去ること約80年前に、既に吸血鬼映画、いや恐怖映画の決定版的作品が登場していたという事実に先ず驚かされる。冒頭のこけおどしの音響を使わずに白い文字で映し出させるタイトルにはこれからの出来事を予想させるような恐怖感を煽る効果があるし、いきなり手や顔が飛び出してくるような演出ではなく暗闇の中、白い顔、ギョロリとした眼、長く伸びた爪を持った怪物が淡々と歩み寄るという心理的恐怖を増幅させる演出で、見る者を恐怖の世界へと引きずり込むその演出の素晴らしさ。今の映画に登場する、恐怖の帝王としての威厳を捨て、宙を飛びよくわからん格好をして神に背く事もやめた似非吸血鬼と違い、真に恐怖を植え付け、闇を支配する邪悪の王としての吸血鬼を描いた正に正統派。恐怖映画とはかくあるべきというお手本を見せられた作品であった。 |
3. 原作はアイルランド出身の作家ブラム・ストーカーが書いた余りにも有名な怪奇小説「吸血鬼ドラキュラ」だが、ストーカー夫人の許可が下りなかったため、斯くの如きタイトルとなった。ストーリーも可成りアレンジが入り、後年ユニバーサルやハマー・プロで映画化されたドラキュラ映画とは明らかに一線を画している。何より圧倒的なのはフリードリヒ・ウィルヘルム・ムルナウ監督のモノクローム映像というモノを知り尽くした光と影の演出であろう。ここで念頭に置かなければならないのは本作の制作年度が今を去ること81年も前、という驚くべき事実である。今日の視点で「ショボい」と一刀両断するのはフェアではなかろう。寧ろ、ヴァンパイア映画なぞ皆無だったこの時点でこの高いオリジナリティ&クオリティを発表した力量と歴史的意義を評価せねばなるまい。スキンヘッドに異様に長く伸びたツメが印象的なオルロック伯爵ことノスフェラトゥを演じたマックス・シュレックは個人的にはクリストファー・リーやルゴシを凌ぐインパクトを覚えたものだ。1978年にウェルナー・ヘルツォークが本作をリメイクしたが、クラウス・キンスキーまでスキンヘッドになっていたのには笑ってしまった。ま、アレも悪くはないが矢張りオリジナルには及ばないな。ココは素直にムルナウに敬意を表して満点、と言いたいトコロだけど1924年の「最後の人」(エミール・ヤニングス最高!)がムルナウのベストと思う身としては如何なものか、というコトで…9点! 【へちょちょ】さん 9点(2003-07-14 02:56:51) (良:1票) |
2.いやあ、ノスフェラトゥにコメント寄せてる人いるんですね。ぼくの前に勤めていた職場(=ミュージアム)でノスフェラトゥかけたんですよ。懐かしいねえ。誰もが見られる映画じゃないけど、映画史の1ページを記した作品であることは間違いないでしょ。 |
1.「超自然」の薄気味悪さがジワジワっと迫ってくる、いやーな雰囲気がよく出てると思います。シュレックがフワ-っと起き上がってくるとこなんかね。説明よりもイメージの世界。 【鱗歌】さん 8点(2003-05-01 22:30:09) |