17.《ネタバレ》 これは……ちょっと雑な作りの映画であるように思えます。
例えば主人公は「あえて銃を撃たないタフガイ」という設定であり、劇中でも「銃は持っていくな」という歌詞の曲が流れるくらいの徹底振りなんですが、そんな彼が「とうとう自らのルールを破って、銃を撃つシーン」のカタルシスが弱いんですよね。
そもそも「過去に悲劇的な事件があって銃を撃てなくなっていたが、友を助ける為にトラウマを克服して引き金をひいた」とか、そういう展開な訳でもなく「銃を使うと大変な事になるから」という、一種の「強過ぎる自分を縛る為の枷」みたいな認識で銃を撃たずにいただけであり、窮地に陥ったら「やっぱり銃を撃たないと無理そうだから撃つ事にする」と考え方を変えただけというんだから、観ていて拍子抜けです。
じゃあ、いざ銃を使ったら無敵の存在になるのかなと思っていたら、最初こそ恰好良く撃ちまくっていて良い感じだったのに、敵の中ボス格である鞭使い達が出てきたら、途端に苦戦して銃を奪われ、結局は肉弾戦になっちゃうという始末。
アクション自体は主演のザ・ロックの熱演もあってクオリティが高かっただけに、この辺りの脚本の雑さが、凄く気になっちゃいました。
ラストに関しても「コンラボスによる幻覚」のギャグで終わらせたかったんだろうけど(どうせトラビスを逃がすなら、わざわざ連れて帰らなきゃ良かったのに……)って思えちゃうしで、最後までスッキリしないんですよね。
多分「主人公は義理堅い男なので、一度請け負った仕事は果たす事にした」→「まさか息子のトラビスに害は加えまいと思っていたのだが、そうではないと気付いて逃がす事にした」って流れなんでしょうけど、それならもっとハッキリ「このままだとトラビスは殺されてしまう」くらいの危機感を抱かせる演出にして欲しかったところです。
そんな具合に不満点も多いんですが……どうにも嫌いになれない愛嬌も備わっているんですよね、この映画って。
ザ・ロックと、ショーン・ウィリアム・スコットが共演しているというだけでも、二人を好きな自分としては嬉しくなっちゃうし、ちゃんと彼らを魅力的に撮ろうという意気込みは伝わってくる。
冒頭で顔見せしたシュワルツェネッガーに、主人公から指輪を奪った同僚という強烈なインパクトを残す二人が、それっきり出番無しで終わったりもするんですが「とりあえずスターをカメオ出演させておいた」「良い味出してる小人の俳優がいたので、とりあえず出しておいた」という茶目っ気が感じられて、憎めなかったです。
「エルドラド」が「ヘルドラド」に書き換えられている看板や、敵のボスが「歯の妖精」について部下に説明する件なんかも印象深いですね。
願わくば、もうちょっと主役二人の掛け合いを魅力的に描いてくれていたら「嫌いじゃない映画」から「好きな映画」に変わっていた気がする……
そんな、勿体無い一品でした。