3.《ネタバレ》 かつてここまで陰鬱な気分になる映画があっただろうか。
宗教映画でも見てるのかというくらい受難につぐ受難。
見てる間、頭の中をひたすら「絶望」という言葉がよぎりつづける
ブラピ主演の「レベナント」を見たときはずいぶん絶望的かつ暗い映画だなあと思ったが、あの映画の悲惨さが子供の遊びに思えるくらい、半端なく絶望的で暗い。
見てる間、ただただ、気持ちが暗くなること請け合い。
気持ちが昂りすぎて、なんとか抑えたい時に見るといいかもしれない(笑)
パイロットの女性は、いつまで経っても快方に向かう様子もなく、意思の疎通すらほぼできない。
それが何とももどかしく、いつかは元気になるだろうと期待しつつ見るが、弱っていく一方。
もう死んでるんじゃないの?と思えるような状態でも延々と献身的に運び続ける主人公の姿は感動的というより、ただただ悲惨という感じ。もう見ているのが辛い。
クレパスに落ちて足が挟まってもがき苦しむシーンは本当に直視できなかった。この映画を作ったやつはサドか、と言いたくなるくらいに痛々しい。
作中、早くどこかからヘリの音でも聞こえてきてくれとひたすら願いつづけてた。
そうでないなら、もう主人公が全てを諦めてあるがままに死んでいく方がまだ救いがあるとすら思っていた。
それでも最後の最後でなんとか救いがあって本当によかった。
ここまで「助かってよかった」と主人公の無事を喜べた映画はいつぶりくらいか。
こうやって、主人公に苦しみも喜びも同化できたのだから、素晴らしい映画といえる。
しかし、2時間くらい延々と悲惨な姿を魅せられて、救いのシーンはラスト数秒だけというのもすごいなあ。
またこの映画のすごいところは、そもそも、主人公にしろ、瀕死の女性にしろ、素性は一切不明。主人公があの状況に至ったいきさつも飛行機事故なんだろう程度のことしか分からない。
主人公の名前だけは、エンドクレジットで「ああ、名前は服に書いてあったんだな」と分かった。
場所がどこかも分からない。北の極地というのだから北極圏なのか?とタイトルから推測するしかない。ここまで情報のない映画もこれまた見たことがない。
本当に必要なものだけを残して削りに削った作りだからこそ、純粋に主人公の苦難を描くことができたのかもしれない。