51.《ネタバレ》 元CIAの父親が、人身売買組織にさらわれた愛娘を救出するために、死闘を繰り広げるというストーリー。
ストーリー設定にそれ以上の膨らみはなく、設定だけをみれば何ともチープな映画である。
リーアム・ニーソンが体を張って繰り広げるアクションシーンは、それなりにスタイリッシュに表現されているが、アクション映画として特筆するほどのものではない。
9割以上の要素は、はっきり言って「凡庸」に尽きる。
ただし、残りの1割の要素が、この映画のオリジナリティをある意味”強引”に高めている。
それは即ち、「娘を溺愛する父親の容赦なさ」だ。
娘をさらった悪党に対して、電話口できっぱり「処刑宣告」をしたかと思えば、カリフォルニアから海を越え数時間後には事件が発生したパリへ。
単身で悪の組織本体に乗り込み、暴れまわり、ほぼ壊滅状態に追い込む。
更には、古い友人らしいフランス当局の幹部の自宅に“お邪魔”し、実は悪と通じていたその友人の妻の腕を問答無用に撃ち抜き、情報提供を強制する始末。
とにかく娘の救出に対して「障害」となるものは、何であろうと蹴散らし、悪党は容赦なく残虐なまでに皆殺しにしていく。
映画の冒頭、主人公は別れた妻から、その神経質な性格に対して「異常だ」と苦言を呈される。
その時は主人公に対して同情が生まれたが、映画が展開していくにつれ、「ああ、確かにこの父親は異常だ」と納得させれるほどに、主人公の行動力は常軌を逸している。
主人公のその尋常でない怒りっぷりは、“唖然”を通り越し、感じたことのない爽快感に繋がっていく。
その尋常でなさが、絶体絶命の愛娘のピンチを非常識に救っていく。
決して物語としてクオリティの高い映画ではないが、この“容赦なさ”は評価に値する。劇中何度も「親父怖え~」と呟いてしまった。