13.《ネタバレ》 2008年の南オセチア紛争(ロシア・グルジア戦争)を扱っている。 2022年のウクライナ侵攻と似たところもあるようで、この映画には出ていないが、当時のグルジアがNATO加盟を目指していたということはあったらしい。ただロシアとグルジアの間に別民族の「オセット人」がいるのは事情が違っており、このオセット人とグルジア国家との間で、ソビエト連邦解体時から続いていた紛争の延長であることは台詞でも表現されていた。劇中ではオセット人がどこにいたのか明瞭でないが、少なくとも主人公が北オセチアの空港に着いてから乗ったバスで歌っていた乗客はみなそうだったのかも知れない。 ロシアが関係する紛争ではロシアが悪者扱いされるのが普通だが、だからといってこの紛争でグルジア国家が善ということにもならない。ロシア・南オセチア側だけでなく、グルジア側も民間人を攻撃していたことは国際人権擁護団体の報告にも出ており、それが劇中の無差別なロケット弾攻撃や、地下室の避難民に危険が迫った場面に反映されていたと思われる。ほか直接関係ないが、劇中出た「ベスラン」という地名が2004年の「ベスラン学校占拠事件」を思い出させたのは、周辺の難しい地域情勢の表現になっていたかも知れない。 映画としては戦争映画のようで戦闘場面は結構な迫力があるが、妙なファンタジー映像を売りにするのが軽薄な印象を出している。またドラマの面では、母の愛は何より強いことを表現するために、それ以外の美点が主人公に皆無になっていて全く共感できない。主人公の息子は、この戦争で真のヒーローとは何かを知り、将来は立派なロシア軍人として死ぬのだと思われる。 基本的にロシアの立場で作られているのは当然としても、見た結果としてロシアの味方をしたくなるわけでもない。このほかにグルジアの立場で作ったアメリカ映画もあったようだがわざわざ見る気にならない。 ちなみにクレムリンの場面では、大統領のほかに首相もいたように見える(似ている)。ここでこの戦争に関するロシアの立場が説明されていたようだが、それ自体の意味はわかるとしても、日本人の立場でロシアを擁護する義理は特にない。一方で、このままではロシアが侵略者として非難され、国際的に孤立して新冷戦に至ると警告するスタッフがいたのは悪くなかった。この男が黙らされたのはストーリー的に当然として、こういう異論をあえて劇中に入れた意図はわからなかったが、ここはかなり興味深かった。 【かっぱ堰】さん [インターネット(字幕)] 4点(2022-05-14 09:46:06) |
12.《ネタバレ》 ロシア映画とは知らず、なんとも微妙な時期に観てしまった。 ロシアが望まぬ戦争に巻き込まれるという設定は、まるで現在のウクライナ侵攻を写したような既視感さえある。 しかし、映画自体の出来栄えは見事というしかない。 戦地に一人取り残された少年は、父、そして父が亡くなった後は母を自分を守ってくれるロボットに見立てて、苦難を乗り越えていく。 戦闘が終わった後、ロボットの話を続ける母親に「ロボットの話はいいから、父さんの話を聞かせて」という少年の成長が微笑ましい。 若い母親も、激しい戦闘の中で人が人としてどうあるべきかということを学び、本当に愛すべきが誰なのかということに気づいていく。 亡くなった父親も、最後まで若い母親を守ろうとした兵士もかっこよかった。 臨場感たっぷりの戦闘シーンの中に、兵器をロボットに見立てたCGがうまくブレンドされていて、なかなかの見応え。 ロシア映画もなかなかやるな、と思うことが最近増えてきた気がする。 いや、いい映画。 |
11.《ネタバレ》 ロシア軍の全面協力による製作ということで、戦闘のリアリティが凄い。 軍の通信が妨害されて使えないのに携帯電話は使えるのが現在のウクライナの状況とそっくり。 兵力や装備で上回ってるはずのロシア軍が市街戦で苦戦を強いられるのもまるで予言のよう。 ジョージアを相手にこれだけ苦戦したのにウクライナに勝てると思ったプーチンはどうかしてるとしか思えない。 CGによるファンタジー演出とか、子供を助けに行く母親を主人公にしてる辺りが戦争映画らしくなくて斬新。 どうせロシア側の視点で描かれたプロパガンダでしょとか思ってたけど、ちょっと想像と違うとこもあって意外だった。 ジョージアの兵士がいい人だったり、戦争の犠牲になるのは民間人だということが描かれている良い作品でした。 【もとや】さん [インターネット(字幕)] 7点(2022-04-01 14:43:29) |
10.《ネタバレ》 ロシア製の堂々たる娯楽大作です。正直こんなに‟こなれた”映画を作ってくるとは驚きました。男優も女優も画面負けしない一流どころで、まあ冒頭のCGの出来はさておき人間が演じる部分には画の背景や質感に安っぽさがありません。とりわけ世界水準レベルなのが戦闘場面で、砲弾散らかるガレキだらけの現場のリアリティはもとより、狙撃兵からの攻撃がいつ来るのか静と動の描き分けが巧みで緊迫感を煽ります。ここらの演出の洗練ぶりは「ブラックホーク・ダウン」や「フルメタルジャケット」等の先達からきちんと学んでいるような感があります。 惜しむらくはいろんな娯楽要素を盛りすぎかなあ、ということ。CG仕立てのクリーチャーらが跋扈する様子はSFバトルのようで非現実気分になりますが、しかし人の命が軽い戦地の不条理や酷さは「ハート・ロッカー」レベルですし、箸休め的にちょっとしたロマンスまでぶっこんで節操がないまでのごった煮の様相を呈しています。作品を壊すほどにバランスが悪いわけではないですがね。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-08-09 23:41:21) |
9.《ネタバレ》 ジーンズ貸してくれたおばちゃんにブーイング。ヘルメット被るとかわいらしさが5割り増し。戦場で両手広げて必死で走る女のコ走りは健気で微笑ましいからあれ反則だ。クセーニアって名前もおもしろいからそれも反則だ。ピンクの上着の第一ボタンが丈夫すぎて それも反則だ。 もう三回見ました。軍事的見解はさておき既にお気に入り映画となっております。反則続きがもたらす気の利いたエンターテイメントな憎い出来。 【3737】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-01-22 23:43:51) |
8.冒頭でいきなりぬる~いCG全開、「この映画、大丈夫なの~?」とハラハラしてしまいますが、映画が進むに従い、ちゃんと物語でハラハラさせてくれます。幼いひとり息子を前の夫の実家に預けたママさんが、息子の滞在先付近で紛争が発生したと聞き、必死に息子のもとへ駆けつけようとするオハナシ。乗っているバスが何者かの攻撃を受ける場面や、逃げ込んだ建物が攻撃を受ける場面なんかで、崩壊の過程が結構緻密に描かれていて、こういう描写にやっぱり手に汗握るんですね。凄惨な描写は比較的抑制されていて、でもそれを補うように、登場する数々の戦車が戦場らしい雰囲気をちゃんと作り出していたり。残酷描写に走らず、逆に、少年の夢想を利用してファンタジーを絡めてきたのが、(どの程度、成功していると言えるかはともかく)味付けとしては非常にユニークで、物語のご都合主義的な部分、希望めいた部分も、イヤミを感じさせることなくソレっぽく収めてしまう。 何よりも、この主人公のママさんの奮闘ぶりが、いいんですね。最初は場違いなミニスカート姿だったのが、ヘルメットを被って戦場を切り抜け、最後はたった一人、チョコチョコと走っていく姿、何ともけなげで、いとおしくって。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-27 17:16:02) (良:1票) |
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7.ロボットのCGもよく出来てるし、バトルシーンも今まで見たどんな戦争映画よりもリアリティがあって、とても丁寧に作ってある。これをたったの1600万ドルで作っただと…?邦画負けてるよ~。邦画には邦画の良さはあるけど、そろそろこれくらいは手間暇かけてもいいんじゃない? 【にしきの】さん [CS・衛星(吹替)] 7点(2015-04-17 11:18:56) |
6.《ネタバレ》 CGが無駄でした。お母さんの彼氏の話も特に必要ありませんでした。もっとスッキリと作れたはずなので残念です。戦争には結局それぞれに正義があるんだなぁと改めて思いました。しかし、救出ものの映画にしては、ばんばん人が死にます。さすがロシア映画です。最後に運転してくれた相手の兵士がいて、映画としてもちょっと救われました。 【木村一号】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-11-24 22:17:11) |
5.《ネタバレ》 それはたった一度の過ちだった――。2008年、次第に悪化するロシアとの緊張から不穏な空気が漂う小国グルジア。ロシア軍兵士である夫と離婚し、シングルマザーとして最愛の一人息子と暮らすクセーニアは、彼氏である会社社長と結婚を巡る重大な局面を迎えていた。だが、息子チョーマは極度の空想壁により、いつも面倒ばかりを起こす問題児だった。「たった一日だけなら…」と、彼氏との婚前旅行のために、チョーマを元夫が赴任するグルジアのロシア軍駐屯地へと預けることにしたクセーニア。それが、親子の絆を断ち切るほどの過ちになるとも知らずに…。グルジア紛争という実際にあった戦争を基に、決死の覚悟で愛する息子を追い求める母親のドラマを、憧れのヒーローである巨大ロボットを夢見る少年の虚実入り混じる視線を絡めて描き出す軍事アクション。予告編のそのごりごりのロボットものっぽい内容を見て、きっとこれは「ロシア版トランスフォーマー」なんだろうなーと、昔からそんなロボット系が苦手な僕はずっと敬遠してきた本作なのですが、実際のグルジア紛争を背景にしているということに興味を惹かれて今回鑑賞してみました。冒頭から、そんな巨大ロボットは主人公である少年の空想の中だけにしか出てこず、あとはずっとリアルな戦場描写が延々と続き、「あれ?これってもしかして僕のこよなく愛する『パンズ・ラビリンス』のロシア・少年・ロボットバージョンなの?!」と否が応にもテンション上がっちゃいました。でもね~、そんな何の力もない少年が目の前の理不尽で残酷な現実にただ想像力のみで立ち向かうという設定が活きてくるのは後半15分だけってバランス悪すぎじゃないっすか、これ。これでは、この魅力的な設定がなんだか蛇足となってしまった感じがして僕はいまいち乗り切れませんでした。それに、ロシア軍全面協力だから仕方ないかも知れませんが後半の臆面もないロシア軍礼賛描写にも辟易です(激しい銃撃戦の後に、クセーニアが発する「これで給料幾ら貰ってるの?」という問いに、ロシア兵が「大した額は貰っちゃいねえ」と答えるというクサい演出にはちょっぴり失笑)。でもまあ、ハリウッドも似たようなことしてるからおあいこかな(笑)。結論。あくまでリアルな戦争アクションにしたかったのか、想像力豊かな子供の目で描くファンタジーにしたかったのか、僕にとってはなんとも中途半端な印象の強い作品でありました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 4点(2014-11-11 19:13:14) |
★4.《ネタバレ》 的確なレビューが並んでいて吃驚。皆さん基本的には評価が割れてないって作品は珍しいですね。 私も概ね皆さんに賛同です。ただ、少しばかりダラダラし過ぎたかな?正直、欲張りすぎ感は否めません。少年のファンタジー(家庭崩壊によるトラウマに起因する現実逃避)を中心に据えるのか、はたまたあくまでも母の愛を中心に据えるのか、それとも戦争の現実こそがテーマなのか…そのあたりの中途半端感が無駄に尺が長いかの如き印象に繋がります。羽毛が舞うシーンとか、少年のファンタジー以外の部分にも、いくつかカットした方が?というような表現が目につきました。母親に手を差し伸べる軍人や非戦闘員についても、たとえ戦時であっても人には優しさや愛があるのだという表現を挟みたい気持ちは解るのですが、無理矢理感が否めない。特に軍人は冷静に考えれば軍法会議モノの行為を平然とやってのけてる。ご都合主義にもほどがあるって場面が無きにしも非ず…。あと、これは仕方ないのですけれど、ロシア人にしか通用しないようなギャグが入ってたりもします。 国内だけではなくて、もっと海外での公開を意識した編集をしていれば、相当に高評価が得られる迫真の戦争映画(もしかして実弾射撃?みたいなシーンも多々ありますね。)だけに、ちょっと残念。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [DVD(字幕)] 6点(2014-10-12 02:56:49) |
3.《ネタバレ》 ウソすぎる予告編にまんまと騙される(笑) ロボットプロレス物だと思って見たらガッカリするだろう しかし戦争映画としてはそのガッカリを上回る出来の良さ かなり前に見た「5デイズ」と対になっている映画だと思った 南オセチア紛争をロシア側から見た話になっている なので「5デイズ」がグルジア側からみた南オセチア紛争なので悪役が逆になっているのが興味深い よって「5デイズ」がグルジアのプロパガンダ映画であるがごとく、この映画はロシアのプロパガンダ映画と言われてもしかたがないかな 「5デイズ」に対抗して政治家達が会議室で色々偉そうな事を言うのも同じ この辺はそっくりで作り手が「5デイズ」を意識して作ったとしか思えなかった しかし戦争映画としてはどちらも傑作である 冒頭、平和なモスクワでの彼氏とぐたぐたなパートと一転して、南オセチアに入ったとたんにいきなりバスにRPGが飛んで来るのは衝撃的 平和な都会と危険な田舎の対比が凄まじい 「オーガストウォーズ 」の方は実際の危機がパシフィックリムもどきのロボット戦争に置き換えられるのはなかなか秀逸なプロットだと思った 少年の現実逃避がロボットバトルの幻想となって要所で交錯する 根性ミニスカ母さんも強い描写はまったく無くて、いろんな人が差し出してくれた手を握って前進するのみなのがこの映画のキモだ 軍人は誰でもかっこ良く優しい 少年の父親が戦車に吹き飛ばされるシーンは衝撃的だ 「ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火」でも思ったが、ロシア映画はとにかく戦車を使うのが巧い 銃撃戦も手抜き無く、バンで空爆を逃げ回るとかハリウッド的な描写も結構良くて、ロボットは出るは、凄まじい銃撃戦は出るはの、アクションてんこもりの大サービス しかし美人のミニスカ母さんは大活躍するが、少年の見せ場はまったくなくロボットの幻想が少年の現実逃避でしかないところは結構不満だ 最後にちょっとだけ成長したところをみせるのが救いか 母親は常に軍人に助けられて最後はグルジア側の軍人にも助けられる 完全に軍隊賛美だが、母は強しというか、美人って得だなって思った しかし危機が次々に訪れるが全体に演出が間延びしてしていてちょっとダラダラした感じに思えた もうすこし畳込む様な演出だと息を飲む感じになったのに しかしミニスカのおっかさんが途中でズボンになってしまうのが一番の痛手だった(笑) 【にょろぞう】さん [ブルーレイ(字幕)] 8点(2014-08-30 12:30:48) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 戦闘シーンに臨場感があり、とても良かったです。主演のクセーニア(スヴェトラーナ・イワノーワ)も可愛くて観てて楽しめました。CGのロボットは無理やり入れた感があります。「ワシントンが敵を支援しています!」(うろ覚え)という台詞が出てくるロシア映画はとても新鮮でした。 【DAIMETAL】さん [DVD(吹替)] 5点(2014-08-13 04:20:11) |
1.《ネタバレ》 親子愛を描いた映画は数多くありますが、ギャルママを主人公とした本作はかなりの変わり種でした。映画の出来は、このキャラクターの完成度に掛かっていたと言っても過言ではないのですが(一般に、ギャルママは批判の対象とされることはあっても同情されることは少ない)、本作はこれを見事にやりきっています。「ママだって恋がしたいし~」というこの人の浮ついた行動がすべての発端となるのですが、たまに子供の方を向いていないことはあっても、決して悪い母親ではないという点をきちんと描けているので、作品の視点が非常に安定したものとなっているのです。これを演じる女優さんについても、登場時点では「若くて綺麗すぎて、人の親には見えない」という印象だったのですが、そんな彼女がどんどん母の顔になっていくので驚かされました。ロボットが出てくるファンタジーと見せかけておいて、直球勝負の親子愛を見せてくる。この落差の付け方、良い意味での裏切られ方は非常に気持ちがよかったです。。。 南オセチア紛争については、グルジア側から描かれたレニー・ハーリン監督の『5デイズ』が先行していましたが(そちらでは、ロシア軍が暴虐の限りを尽くしている)、それに負けじと、こちらもロシア軍全面協力で凄まじい戦闘シーンを作り上げています。グルジア軍が虐殺行為を行っているというセリフには「やれやれ」という感じでしたが、そうした政治的偏りを度外視すれば、これがなかなかイケる戦争映画に仕上がっています。戦争の恐ろしさだけではなく破壊の美しさも描けているという引き出しの多さで、その完成度は『5デイズ』を圧倒しています。また、最後の最後に主人公を助けた人物の存在によって、ある程度の中立性を保とうとしている姿勢にも納得できました。。。 唯一残念だったのは、リアリティとファンタジーの絡ませ方が不十分だったという点です。ようやく出会えた息子は気絶寸前で完全な傍観者と化しており、ファンタジーらしい場面と言えば、たまにロボットが追いかけてくる程度。これでは、ファンタジーという設定を切り捨てて、普通の戦争映画にしても作品が成立してしまいます。『ビッグ・フィッシュ』や『ライフ・オブ・パイ』のように、ファンタジーが現実を追い越し、虚構にこそ真理があるという瞬間を垣間見せてくれれば、ファンタジーの体裁をとった意義も感じられたのですが。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-02-15 15:45:31) (良:1票) |