2.《ネタバレ》 海を目指す二人(一人は骨壺の中だけれど)のロードムービー。
幼い頃から一緒で、その痛みや苦しみに寄り添っていたトモヨだからマリコの死はそのままトモヨ自身の一部が死んだも同然で。突如自分の一部に勝手に死なれたトモヨの、これはそこから前向きに、ではなくて生と死のハザマ、境界線でパワフルに彷徨い足掻きまくる姿を描いた映画。
それでも人生は素晴らしいとか、生きることに価値があるとか、そういうのとりあえず無し。地獄のようなマリコの生に対してそんな言葉は無意味だし。理不尽な運命に抗えずに流れ流されて終わってしまったマリコの人生に対する悲しみとか怒りとかやるせなさとか無念さとか後悔とか、そういうのがバーン!って弾けて散らばって、生きるにしろ死ぬにしろとりあえず突き動かされて突き進んでゆくトモヨを永野芽郁さんが好演してるわ。不機嫌がデフォみたいな表情が魅力的ね。
途中で出会い、何かとトモヨを助けてくれるマキオ、でもちょっとだけ語られる過去から彼はあちら側の世界の存在としてトモヨをフォローしているような感じがするの。幽霊というワケではないけれど、まるで生と死のハザマの住人みたいな。
マリコにあてつけるように後追いまでしようとするトモヨだけどその姿はあくまでアクティブに生きてるって感じでよく食べて大泣きして鼻水たらしてよく寝て走って酔っ払ってクダ巻いて、本人の意識とは別に生を体現しちゃってるのね。寄り添いながら決して動くことのない死んじゃったマリコとは違って。
マリコの父親はどうしようもないクズなのでマリコの死を悲しんだり再婚相手からマリコへの仕打ちを責められる描写は要らないんじゃない?って思ったわ。彼もまた弱い人間なのです、みたい言い訳がましさが何かの救いになるワケでもないし。
見ていて思ったのはこれって黒沢清監督作品みたい、ってこと。こちら側とあちら側、その境界線を彷徨う物語。これはもちろんホラーじゃないけど。っていうかでも『岸辺の旅』っぽいわ。
日常に戻ったトモヨに何か変化が訪れた、明るい未来が見えた、そんなカンタンな優しいオチは無いけれど、それでもトモヨの生はとりあえずもう少し続いてゆく、まあそれでいいのよね。