8.《ネタバレ》 有名人でもなんでもない、一般のサラリーマンのおじさんの闘病記=エンディングノート。映画というよりドキュメントのような作りで、なので盛り上がらせようとか逆に静かにさせようとかいう演出のようなものはほとんどありません。がんになったお父さんのエンディングノートをその娘である次女が読み上げ、映像は次女が撮影したものを流して…という内容。仕事を定年退職した男が、その直後にがんを発症し、それにどう向き合っていくかを描いています。 自分は死に向き合ったことはまだありません。ので、この方の心情は測りかねますが、淡々と自分の死後のことを整理していくその様は、すでに覚悟を決めた人間の強さなのかと思いました。自分があと何をすべきか、残された人たちのために何を整理すべきか、何を残すか。とても落ち着いた向き合い方でした。演出のない映画だと書きましたが、この方の立ち居振る舞いは映画に出てくる俳優のように凛としたものでした。それまでの自分の人生を振り返り、反省すべきことを反省し、良かったことを良かったと認め、自らを整理する。すごいことだと思いましてが、でも逆に、死に直面した人間とは皆こういうふうになるのかと興味を持った面もあります。自分も何かのきっかけで自分の死を見た時、このようになれるのだろうか。 エンディングノートの内容を聞かれてひとこと、 「死ぬ前に教えるバカがあるか」 これは笑えました。 私もエンディングノートを作るかは分かりませんが、家族のための整理、さらに自分の人生の整理のため、似たようなことをしようか、そう思った作品でした。 【TANTO】さん [インターネット(邦画)] 6点(2022-11-06 23:50:18) |
7.《ネタバレ》 上手に死ぬ。これが出来たら何て幸せだろう。何てかっこいいんだろう。人は一人で生きてるんじゃないと良く言うが、生きる事の延長に死がある以上、死も含めての人生である。一人では上手にその瞬間を迎え、その先の段取りまでは出来ないのである。伴侶、子供、そこから広がる家族、孫。近親者は多い方が良い。皆に支えられ上手に死ぬ。砂田さんは自らの段取りでかっこ良く逝った。遺書には残して逝った家族たちのマネープランまで心配し、記されていた。かっこいい。ただそのプランは、ノープランで誕生した末っ子のカメラによって大幅に修正された事は間違いない。天国の砂田さんはその事をどう思っているのだろう。人生計画通りにはなかなかいかないものだと首を傾げているいるだろうか。「カメラ止めて」と言って話した教会コストの話や、夫婦二人だけの最後の会話まで全国に公表してしまう末娘に、頭を抱えているだろうか。天国へ旅立ったその後まで想像してしまうような、そんな砂田さんの素敵なキャラがあってこその温かい作品です。 【ちゃか】さん [映画館(邦画)] 8点(2014-07-04 16:39:30) |
6.ふつうやらないことをすれば、ふつうじゃない絵が撮れる。父親が死ぬときでさえカメラを回し続ける監督のすばらしい習慣と、それを受け入れる家族がすばらしい。なまなましくならず、あくまでさらっとしあげているのがよかった。 【コダマ】さん [DVD(邦画)] 6点(2014-05-17 22:46:22) |
5.最早、監督が完全に自分のため、また父親のために作ったと思える作品。しかしそれでも一人の人間がどうやって死に至り、それまで何を為したのか、観終わった後で色々と考えることが多かった。 【民朗】さん [映画館(邦画)] 7点(2014-04-18 20:24:32) |
★4.黄金色に輝く銀杏並木の光が、街路を歩く主人公:砂田智昭さんの横顔を包む。 砂田さんが登る階段の背後で教会のステンドグラスが輝いている。 臨終を確認する音声が流れる中、街のシルエットとその背後に広がる マジックアワーの淡い陽光が悲しいまでに美しい。
家族の交流を映し出す合間に点描される、光を伴った街・空の情景ショットが、 単に映像がキレイだとかいう事ではなく、映画の場面として印象深い。
8mm映像の中で笑う、ありし日の父の姿は誰が撮ったものか。 その粗い画調ならではのノスタルジックな美しさ。
病床で妻への愛情を伝えるシーンは恐らく、撮影者=監督不在のまま 録画されているのだろう。光量不足でザラついた画面だからこそ 夫婦二人だけの時間・空間を切り取ったこの場面はひときわ美しい。
日頃からカメラを向けてきたからこそ、自然体のままカメラを受け入れ、 何の衒いもなく被写体を生きる父。 そして砂田麻美監督を含めた家族それぞれが、被写体として素晴らしい。
【ユーカラ】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-10-14 22:57:14) |
3.《ネタバレ》 明るく、段取り好きな砂田さんのキャラクターが素敵で、とても微笑ましく見られた。それを受け継いで、父親が死ぬ寸前まで段取りの確認をする長男も、なんだかとても良い感じ。周りの家族も皆、暖かく、孫も純粋で、この映画には悪意の欠片も見当たらない。まるで、正しい死に方講座を見せられてるかのように、キッチリと亡くなります。 衰弱していく姿は、流石に辛かったけど、最後の最後までユーモアを忘れない砂田さんは、本当にカッコ良かったっす! 残された遺族が困らないようにしっかり自分の死の段取りをするのも素晴らしいけど、それを通じて死ぬ間際まで自分の家族 とコミュニケーションをしっかりと、とり続けたっていう所が、何より良い死に方だな、と思った。 良い死に方は、本人だけじゃ成立しないね。 【すべから】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-07-03 00:21:16) |
2.自分の父親がガンを患って亡くなるまでを追って監督が撮ったドキュメンタリー。これが砂田監督のデビュー作だが、よく出来ていたと思う。徒に観客を泣かせようとする演出ではないが、やはり人が亡くなる瞬間というのは哀しいものでぼろぼろ泣いてしまった。小さい頃から、監督は家族を相手にカメラを回すことが多かったらしく、家族皆が非常に自然に振舞っているのは良かったと思う。中でも、死を控えたお父さんの態度はなかなか立派で、簡単に真似できるものではないが、自分もその時には淡々とその事実を受け入れたいものだと感じた。生き方だけではなく、自分で死に方も決められる大人でありたいものだ。 また、本人は死を受け入れるものの、家族の受け止めは様々であった。特にこれから二人の老後を楽しもうと考えていた奥さんの悲嘆はさもありなんと観ていて本当に気の毒だった。遠隔地に住む長男も仕事が忙しい時期なのに、よく時間を作って帰ってきてえらいと思った。自分も、その時にはなるべく親のそばに付き添ってやるようにしたい。特に捻りがあるわけではないストレートなドキュメンタリーであるため、監督の力量は測りにくいが、色々と考えさせられた。 それにしても監督がまだ中高生の頃の両親の夫婦喧嘩の映像なんかもちらっと出てきたりして、三つ子の魂百までとはよく言ったものだと感心した。 【枕流】さん [映画館(邦画)] 6点(2011-12-05 20:39:29) |
1.私小説に近い口当たり。劇場内がすごくすすり泣きの声で充満してたのが印象的でした。 【reitengo】さん [映画館(邦画)] 6点(2011-11-05 03:12:15) |