83.《ネタバレ》 前作では、巨大軍事企業の社長かつ天才科学技術者トニー・スタークが、テロ組織に拉致され間一髪のところで生還した経験から、自分の進むべき道を問い直し、会社の軍事部門を廃止し、戦闘スーツを身に着け世界を守るヒーローとしての活躍を始めると意思表示をするところで終る。
本編では、アイアンマンのおかげで各地の紛争は鎮静化され、平和が維持されているという場面から始まる。
ヒーローの活躍場面が省略されているわけで、物足りない。
代わりに、その余りの威力を危惧した国から、軍事兵器として接収されそうになるという、ヒーローの活躍に水を差すような展開になっている。
このヒーロー、飄々としているのは良いが、おちゃらけが過ぎるのが難点だ。
前回では拉致された際に受傷し、生命の危機に瀕するという真摯な場面があった。
だから、他の場面で見せるおちゃらけとバランスが取れていた。
今回は徹頭徹尾、おちゃらけ路線。これでは、危機が危機におもえなくなってくる。よって感情移入もない。
酔って踊りながら、群集の面前で火器を使用しての西瓜割りなどの危険行為も目に余る。
第二のアイアンマンも、トニー監視役の友人が、暴れるアイアンマンを止めようとして着用するというさえない登場の仕方をする。いわば仲間割れで、集中心が削がれる。
恋愛パートだが、毎度痴話喧嘩レベルの言い争いの繰り返しで新鮮味がない。秘書を社長にしたのはよいが、軍事会社が軍事をやめてなにをしているのか?
父親が遺したフィルムをヒントに新動力源を発見する挿話はよかった。冷めがちだった父親との絆を深め、人間らしい感情を取り戻した瞬間だ。
さて、ライバルだが、トニーの父親の元同僚の息子イワンが、父の研究を奪ったトニー父子に恨みを抱いているという設定。
独自開発した戦闘スーツでトニーを急襲するものの撃退される。しかしトニーのライバル企業のハマーに救出され、新兵器の開発に協力する。最終的にイワンはハマーを裏切り、新兵器軍団を伴ってアイアンマンを襲うという、どうにも複雑な展開。善対悪の戦いになっていない。この外にシールドやブラック・ウィドウなどが登場し、流れが途切れがち。これでは、いくら戦闘場面が魅力的であっても爽快感は得られない。スーツケースからの流麗な変身場面のみ印象に残っている。