62.《ネタバレ》 人間にとってネズミは害獣だけど、ネズミにとっては人間が害獣という、そんな当たり前の事に気付かせてくれる映画ですね。
圧巻なのは「釘打ち機」の場面であり、人間による何気無い大工仕事が、ネズミにとってはトンデモない災害となる事を描いていて、これには感心しちゃいました。
日常生活で見慣れたはずの「釘」が、ネズミ目線だと凄まじい殺傷兵器になっちゃうんだから、もう吃驚です。
こういう「視点や発想の切り替えによる面白さ」って、観ていて嬉しくなっちゃいますね。
ベッドや時計もあったりして、居心地が良さそうな「ネズミの寝床」の描写も好きだし、カップの取っ手を潜ったり、ピアノの鍵盤を走ったりと、家を駆け回るネズミの描写が、きちんと面白かった点も評価したいです。
ただ、ネズミの糞を食べたりとか、観ていてエグい場面もある事。
そして、終盤の展開が唐突過ぎて、流石に白けちゃった事が残念ですね。
特に後者は致命的であり
(えっ……なんで主人公兄弟とネズミが仲良くなってるの?)
って、全く納得出来ないまま映画が終わっちゃう訳で、置いてけぼり感が凄かったです。
弟のラーズは「糸」に拘りがあったはずなのに、最後は製糸工場からチーズ工場に変わってるのも、何かスッキリしないし……
気になって計ってみたら、主人公兄弟が家を失い疲れ果てて眠るシーンから、僅か三分で無理矢理ハッピーエンドにしてるんですよね。
これは流石に急展開過ぎるし、説明不足でもあったと思います。
ネズミがシェフになるオチとか「レミーのおいしいレストラン」(2007年)を先取りした感じでもありますし、一見の価値はあると思いますが……
最後の最後で、絡まった糸のようにモヤモヤが残ってしまう。
そんな一品でした。