1.姉のサミラが監督しようとしている映画、「午後の五時」のキャスティングが決まるまでの顛末を、妹のハナが手持ちカメラでそれぞれの表情を追い続けるというドキュメンタリー。髭が立派だという理由でスカウトされ一度はカメラの前に立つが、職業上の理由から突如出演を辞退してしまう老人。あるいはヒロインに抜擢されて出演に色気を示しながらも、長期に渡る撮影期間に難色を隠せない乙女たち・・・といったふうに、話は二転三転。製作者側の思惑は外れっぱなしで、勝気なサミラは撮影時期が迫っている事もありイライラが募るばかり。今更一歩も引けず、スタッフともども候補者たちに懸命な説得にあたるが、なにかと自己チュー的な候補者との溝はなかなか埋まらない。このあたりの藁をもすがる思いの必死さが良く表れていて、彼女らの情熱が十分に伝わってくるのと同時に、この国での映画製作に対する理解の困難さをも感じずにはいられない。ハナの廻すカメラ映像が素朴ゆえ、余計実感として観る者を惹きつける作品となっている。