104.《ネタバレ》 新聞記者から大富豪となったケーンという人物の生涯を、
最初ドーンと映画の中で映画を見せてくれます。記事にするために。
ところが決め手がない。これではただ生涯を追うだけだ。
最後に残した言葉、「薔薇のつぼみ」これが気にかかる。
で、その言葉の謎をケーンと生前にかかわった人に聞くことで、
本当の映画が動き出すのです。
ホラーが始まるような冒頭から映画の中の映画の紹介。
さかのぼりながら現在までをうまくリンクさせていく、
「羅生門」のようでもあるしサスペンス仕立てで飽きません。
最初の方の雪の中で遊ぶケーン少年が窓の向こうで見える。
それを奥に映し手前で養子(といえば聞こえはいいが)の話をする。
最初の記事にするための映画をうまく使い過去の映画の中に戻るんです。
大きな富を得たケーンが死ぬ間際に握っていたスノードーム。
でもなぜそれが「薔薇のつぼみ??」スノードームは幼いころの雪。
この人は愛情に飢えていることのトラウマで思い出している。
言おうとしてることはスノードームもパズルも同じ、でも違うんですよ。
わかったつもりで見ていたのに急に出てきたのであわてて巻き戻す。
昔の映画はエンディングとオープニングがつながっている。
咲くことのないつぼみ。
けど「薔薇のつぼみ」は女性と思うよね・・
謎解きの映画のようで真実はそこに転がってるもの。
邦題!市民ケーン・・
市民、スノードームの中のおうち、市民、咲かないつぼみ・・
本当は大富豪になって名声を得たかったんじゃなくて、
ただイチ市民の雪の中に舞うおうちの家族のひとりとして、
この人は暮らしたかったんじゃないか・・
洋画の邦題はセンスが悪いのですが、この映画はそのまま見事な答えです。
それを思うと謎解きに一生懸命になってたのを忘れ感動します。
あと別なところで感動したのが、旧友の送ってきた手紙。
これを見てさらにケーンは意地を張るのです。
これも両方の気持ちがよくわかります。
そしてケーンの最後の妻は、実はケーンにそっくりだということ。
夢が叶わないなら叶わせよう、大衆が認めなくても認めだすかもしれない。
旧友の手紙は自分を見透かされるから、
妻を本物の歌手と世間に認めさせるまで続くのです。
それでも薔薇は開かない。お金や夢や言葉でも開かなかったのです。
それが雪の舞う中に埋もれていたのだから・・