47.《ネタバレ》 先ほど観終わりました。
この作品の新しい点は
・主人公が自分に適合する死人の脳内の記憶(或いはデーター化された記憶???)
の最後の8分間にハッキング(或いは脳潜入)を掛けれる。(これはドラマ・フリンジでもちょっと使われてましたが)
・その8分間は実際に起きた出来事、つまり現実の過去と全く同じである。
・そしてハッキングを掛けた主人公は基本設定(列車、乗客、犯人、車掌、爆弾、乗降駅)に関与出来
新しく得た記憶を蓄積する事が出来る。
(これが斬新で新しい)
ただちょっと引っ掛かったのが
悪徳所長は「パラレルワールドへの入り口」
と、言っていましたが、これは矛盾がある気がします。
高校教諭の脳の8分間の記憶、或いは脳その物にしても
それは現実にいま存在していて
「現実に違う過去へアクセスしている訳ではない」
あくまで、死ぬ前の最後の8分間の記憶(それも主観的な記憶)が
残っているだけです。
「なのに、何故、他の乗客と関われるのか?」これも矛盾です。
フリンジでは死人の主観的記憶の外側には関与出来ないとされていて
この点が合理的に説明されています。
それとも死んだ全ての乗客の脳から最後8分間の抜き出して
既に全部データー化しているのか???(でも、犯人は途中下車して逃げ延びている。これも矛盾)
この辺りの合理的設定と説明がちょっと曖昧なのが残念です。
或いは人の時間の認識や空間の認識は
脳感覚(味覚、視覚、嗅覚、触覚、痛覚、聴覚、そして無意識)の産物であると仮定すれば
自意識の外側にもアクセスが可能(ユング的な集合的無意識領域??シュレーディンガーの猫?)なのか???
またこういう設定には
「我々が居る現実なるのものが果たして本当の現実であると誰が定義証明できるのか?」
という、疑問にブチ当たります。(押井守監督は一貫してこのテーマ(荘子的な現実と虚構)を描き続けている)
要するまだ人知の及んでいない超現実の事ですが
もし、この作品がその領域まで踏み込んで(まあ、最後の展開は踏み込んでいるとも言えなくはないですが)
合理的に仮説を立てて、作品を描いていたとすれば、私は文句なしに10点付けました。
今回はちょっと曖昧で余りに即物的(人命救助、事件解決、出世欲)で有り過ぎたので
残念ですが8点にさせて頂きます。