7.《ネタバレ》 引退を決意するローマ教皇と、それを継ぐ新たなローマ教皇が交流する物語。考え方のまったく異なる2人が、次第に理解し合えるようになる過程が丁寧に描かれる。テーマはとても地味で、会話劇が中心の物語なのに、全く飽きることなく楽しめた。主人公を演じる2人の名演はもちろんのこと、教会や園庭の色彩を捉えた画作りに、実映像を交えた場面展開の鋭さなど、フェルナンド・メイレレスの巧さが光る。良作。 【カワウソの聞耳】さん [インターネット(字幕)] 8点(2022-02-23 20:50:23) |
★6.バチカンも権力と対立の世界の縮図に過ぎないというテーマで、同じようにバチカンのタブーに触れたゴッドファーザーパート3の時は波紋しか生まなかったが、今回の許容は時代が変わったんだなと思わされる。ローマ教皇の「人間宣言」的な意味で金字塔になるだろう。正反対のキャラクターを持った2人の教皇を実話を基にタブーなく描き、コメディ要素を含む軽快なノリで全く予備知識がなくてもバチカンのシステムや雰囲気や歴史をつかめる。予備知識を得るには下手なドキュメンタリーより良質な作品 【Arufu】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-06-13 13:57:30) |
5.《ネタバレ》 2012年、全世界に10億人以上の信徒を有するカトリック教会は揺れていた。資金洗浄や聖職者による信者への性的虐待などスキャンダルが相次いで発覚したのだ。教会の頂点に位置するローマ教皇ベネディクト16世は、事態を打開するため異例ともいえる決断をする。それは、生前退位――。数百年に及ぶカトリックの歴史の中でも前代未聞の異例の事態だった。密かに呼び寄せられたアルゼンチンのベルゴリオ枢機卿は、ローマ教皇のその決断に断固として反対の立場を表明する。誰も居ないバチカンの密室で今後のことについて話し合う二人。すると、いつしかベルゴリオ枢機卿の心に過去の思い出が交錯しはじめる。神父になると決意した若かりし日々、当時付き合っていた恋人との哀しい別れ、常に神の存在を身近に感じていた聖職者としての人生、そして軍事独裁政権下の過去に犯した自らの過ち……。お互いの思いを述べあううちに、枢機卿はローマ教皇の本当の真意を知ることに。実話を基に、生前退位と言う前代未聞の決断を下したベネディクト16世と彼の跡を引き継ぐことになる後のフランシスコ教皇を描いた対話劇。監督は『シティ・オブ・ゴッド』や『ナイロビの蜂』などで貧困に喘ぐ第三世界の真実を見つめ続けるフェルナンド・メイレレス。実在した二人のローマ教皇を貫禄たっぷりに演じるのは名優、アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライス。正直、この二人の爺さんの宗教的な話し合いが延々と続くという、おおよそ面白くならなさそうな題材なのに、最後までちゃんと興味深く観られたのは、この二人の演技力による部分が大きい。健康に気を遣って万歩計を手放せなかったり、過去の確執から最初は一緒に食事をしなかったり、お互いの趣味を薦め合ったり、最後はピザ片手に一緒にサッカーを観て盛り上がる…。おおよそ宗教家らしくないそんな二人の人間的な部分に思わずほっこりしちゃいました。いくらローマ教皇でも、プライベートはそこらの定年退職した親父と大して変わらないんですね(笑)。二人揃ってアカデミー賞ノミネートも納得です。また、二人の対話劇の背景となる、バチカンの壮大な建物や美麗な装飾品の数々も歴史と伝統を感じさせて見ていて飽きさせません。そして後半、この枢機卿が過去に犯した過ち――軍部に目をつけられた信徒を救えなかったという事実に目を向ける視点はいかにもメイレレス監督らしい。歴史の巨大なうねりの陰には、常に名もなき人々の犠牲がある――。そんな普遍的な事実を改めて考えさせられる、ヒューマン・ドラマの秀作でありました。 【かたゆき】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-04-27 18:36:37) |
4.《ネタバレ》 アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスの2人のベテラン俳優のやりとりを見ているだけで楽しい。2人ともイギリス生まれの英語母語者なのに、ホプキンスのドイツ訛り英語(ときどきラテン語混じり)の独特の間とか、かつて『エビータ』ではフアン・ペロンを演じたプライスのスペイン語訛り英語のユーモラスな感じとか、役者ってすごいと素直に感心してしまう。そして、2人が母語ではない英語で会話することで生まれる不思議な距離感。意見は正反対でわかりあってるわけではないのに、それでも人間と人間が対話することで生まれる、心のどこかとどこかが「つながった」その瞬間を見事に描いていると思います。そして、物語は、ユーモラスな二人のやりとりの先に、それぞれが過去に犯した罪へとクローズアップしていく。罪ゆえに指導者の座を降りようとするベネディクト16世と、過去の罪に向かい合うがゆえに指導者の立場を躊躇するベルゴリオ枢機卿。リーダーシップとは何か。罪や過ちの「責任を取る」とはどういうことなのか。このあたりの道徳観がすっぽりと抜け落ちた自称指導者ばかりの世の中で、世界で最も古い、権威主義の象徴のようなローマ教会で起きた変化にまだまだ世の中捨てたものではない、という前向きな気持ちにさせてくれるのも素晴らしい。 【ころりさん】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-01-19 00:00:15) |
3.《ネタバレ》 雲ひとつない晴天なのにローマ教皇が ベルゴリオ大司教と散歩する時に白い雨傘をステッキ代わりにしていたり、新旧の教皇がシークレットサービスが買ってきたピザにパクついていたり…くらいしか笑えるところはなかったですが周囲のアメリカ人は結構笑っていました。これはわたしの英語力の無さよりは仏教徒であるわたしのキリスト教の信仰心の無さに起因するもの…と言いたいですが実は本作品では英語、イタリア語、スペイン語が同じ程度使われていて最後に出てくるドイツ語の横断幕「DANKE!(ありがとう!)」を入れると4ヶ国語が使用されていて、字幕のない英語は英語圏に○十年住んだので問題ないけれど、他の3カ国語は旅行前の付け焼き刃から長くて数年かじったことのある言語ばかりなのでなまじチンプンカンプンの人より字幕に対する反応が遅い上に字幕の色が白だったので教皇の白い法衣と重なると読みにくいことこの上ありませんでした。この点を声を大にして糾弾したいです。日本語では黄色の字幕だといいですね。 全般的に「聖職者はどこまで人々の不幸に対して責任があるか…」みたいな重いテーマが描かれているのですが、ベルゴリオ大司教の「Entiendo? (わかったか?)」の掛け声とともにサッカーが始まったり、「僕たちは聖職者である前に人間なんだよね。」と新旧2人の教皇が一緒にピザを頬ばって許し合い、自分たちの弱さを認め合ったりとか、ほのぼの系の友情物語と言った方が適切です。2人とも深い心の傷を抱えていて、だからこそ人々の痛みがわかるローマ教皇たることができるのです。さて、フランシスコ教皇の次はルワンダの大量殺戮を目撃した黒人の大司教がローマ教皇かな? 不幸が起きることは望みませんが少しでも人々と痛みを共有したことのあるカトリック司祭によってこの地位は引き継がれていくことでしょう。 【かわまり】さん [映画館(字幕)] 9点(2020-01-08 11:32:28) (良:1票) |
2.2019年11月に正式に法王から教皇の呼称に変更なりました、敬称は台下。ちなみに枢機卿は猊下だということをこの映画で覚えました。つい先日、腕を引っ張られ、勢いで女性信者をぶちました現教皇、人間らしさをお持ちで、80歳過ぎても広島に来られるほど精力的。いかにして「偶然」ではなく「神の思し召し」で教皇になられたか、大変興味深く、そしておもしろく描かれていますのであっという間に2時間が過ぎました。 【HRM36】さん [インターネット(字幕)] 8点(2020-01-06 11:17:10) |
1.《ネタバレ》 バチカンを舞台にした、新旧ローマ教皇の小品な会話劇。これだけ見ると堅苦しい題材であるが、ジョナサン・プライスとアンソニー・ホプキンスのベテラン二人による自然体あふれる好演と、ユーモラスな台詞の応酬が心地良い。保守派と改革派の対立する二人に及ぼした背景と、犯した重い罪による苦悩、そして再生までを丁寧に描く。お互いに影響を受けながらも氷解した関係になり、ファンタ片手にピザを食べたり、W杯中継に興じるシーンが微笑ましく、彼らもまた完璧ではないどこにでもいる人間なのだと親近感が湧く。軍事政権下のアルゼンチンの混沌とスラムの貧困描写は監督らしい。来日した現教皇のスピーチに違和感を持った人は少なくないと思うが、会社もトップも変化の意思がなければ社会も人も変えられないし、誰もが自分の世界に引き籠っている"無関心のグローバル化"への警鐘は、本作を見て説得力はあったと言える。 【Cinecdocke】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-01-05 10:09:28) |